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大学院民訴レジュメ

レジュメ 残り その1

残りのレジュメ
口頭弁論の準備 unit.10

 準備的口頭弁論および弁論準備手続
準備的口頭弁論:口頭弁論を二つの段階にわけて、争点および証拠の整理を行う方式をいう。口頭弁論であるので訴訟行為は制限されない。
弁論準備手続:弁論準備手続は争点および証拠の整理を行うために当事者の意見を聞いて付す(168)。弁論準備手続にも傍聴を許すことができる(169Ⅰ)。当事者が申し出た場合には、手続に支障をきたさない限りにおいて、傍聴を許さなければならない(169Ⅱ)。口頭弁論ではないので、法廷外で実施されるのが通常。文書の証拠調べはできる。電話会議システムを利用することもできる。
 争点整理と集中証拠調べ 弁論準備手続を経た場合には、その結果を当事者が口頭弁論で陳述し(173)、弁論準備手続で提出された訴訟資料はすべて口頭弁論でなされたとの擬制がなされる。証明すべき事実が明らかにされる(規則89)。これにより証拠調べに集中できることになる。
適宜提出主義と口頭弁論
   法定序列主義、随時提出主義、適宜提出主義
    攻撃防御方法の提出が遅れると訴訟遅延を生じさせるし、そもそも相手方の期待権を侵害することにもなりかねない。しかし、極端な法定序列主義では、最初の準備が大変なばかりか、予想外の進展に柔軟に対処できない。適宜提出主義が現在の考え方。
予告通知者等照会制度:提起しようとする者は、132条の2第1項本文により、訴えに係る請求の要旨および紛争の要点などを記載した書面を被告となるべき者に送付することによってはじまる。これにより訴訟継続に準ずる状態が発生し、訴え提起に必要な事実資料を収集する権能が認められる。予告を受けた被予告者も答弁の要旨を記載した書面を送付することで同様の権能が認められる。
権能:(ⅰ)訴え提起前の照会=予告通知者は通知をした日から4ヶ月以内に限り、訴えを提起した場合の主張または立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、相当な期間を定めて、書面で回答するように、相手方に対して書面で照会する権能で、訴え提起後の当事者照会(163)に対応するものである。ただし、以下の場合はできない。
当事者照会が許されない場合(163、132の2但し書き①)に該当するとき、ただし相手方、または第三者の同意があるときは別。
(ⅱ)裁判所に対する証拠収集処分の申し立て=立証に必要なことが明らかな証
拠となるべきもので当事者自身では収集が困難なもの(132の4Ⅰ本文)裁判所は相手方の意見を聞いて決定する。具体的には文書の送付嘱託(132の4Ⅰ①)、調査の嘱託(同②)専門的知見にもとづく意見陳述の嘱託(③)執行官による現況調査(④)である。

新民訴法において、当事者照会制度が創設された。
 当事者照会とは、訴訟の当事者は、(訴訟の提起後)訴訟の係属中はいつでも、相手方に対し、主張または立証を準備するために必要な事項について、裁判所を介さずに直接に書面で質問を発し、これに対し相当の期間を定めて、書面で回答するように照会をすることができるという制度である。
 この制度は、アメリカ法のディスカヴァリ(discovery)の中のインターロガトリーズ(Interrogatories:質問書)の制度等を参考にしたものである。
(1)当事者照会制度の概要
 163条の条文(1号~6号)のとおり、回答拒絶理由が列挙されているが、文書照会を受けた当事者には、回答拒絶理由に該当しない限り回答義務がある。
 回答を拒絶しても制裁はないが、むやみに当事者照会の回答を拒絶すると、裁判官の自由心証の形成に悪影響を与え、ひいては訴訟進行や判決が不利となるおそれがある。
(2)製造物責任制度に与える影響(予測) 省略
 
 この直接照会に対して、回答するか否か、また、回答内容をどうするかについて慎重な検討が必要となり、製造者側の負担が増えることが予想される。
改正民事訴訟法163条(新設)

 当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張又は立証を準備するために必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会することができる。
 ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一具体的又は個別的でない照会
二相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
三既にした照会と重複する照会
四意見を求める照会
五相手方が回答するために不相当な費用又は時間を要する照会
六第196条又は第197条の規定により証言を拒絶することができる事項と同様の事項についての照会


(3)アメリカの質問書制度
 この当事者照会の制度は、アメリカの民事訴訟手続における「質問書」(interrogatories)の制度に由来している。
 そこで、アメリカの「質問書」の制度について簡単に触れることにする。

 「質問書」は、訴訟の当事者が他方の当事者に対して行う一連の書面による質問で、訴訟追行に必要な情報の入手を目的とする、英米法系の制度である。
 アメリカの民事訴訟手続においては、「開示手続」の一環として、非常によく利用されている。

 アメリカの民事訴訟における「開示手続」(discovery)とは、「正式審理」(trial)の準備のために、法廷外で当事者が、お互いに、当該事件に関する情報を開示・収集する手続のことである。

 具体的には「証言録取書」(deposition)、「質問書」(interrogatories)、「文書等の提出」(production of documents or things)、「土地等への立ち入り許可」(permission to enter upon land or other property)、「身体または精神検査」(physical and mental examination)、「自白の要求」(request for admission)の6つの方法がある。
 このうち、「身体または精神検査」以外の方法については、裁判所の許可を得ることなく、開始することができる(以上、(3)の部分は田中英夫編『英米法辞典』による)。

Q1
1)戦後わが国でも採用された交互尋問制は周到な事前準備を必要とし、この準備のために証拠開示(ディスカバリーやディスクロージャー)と証拠保全の制度の充実が求められることとなった(LS民訴508-9頁)。特に証拠開示制度は、これにより、訴訟を提起しようとしている者や、訴訟を提起した当事者が、自己の請求が認容されるか否かについて予見しやすくなることによって無駄な訴え提起を予防できるし、また証拠収集活動・立証に関する計画がたてやすくなり、無用な争点が除かれ効率的な訴訟活動が期待でき、またその結果、不意打ちが減り、偽証を防止し、合理的な和解の可能性が増加する。
 しかし、証拠開示に裁判所が過度に介入すれば、当事者一方の肩をもっているように誤解されるので、わが国の予告通知に基づく当事者照会制度の運用において、裁判所は介入すべきでないという傾向が強いといわれている。
2)①の主要事実そのものに関する照会は許されるか、という点について:まさに証明主題に関する照会は許されるか、という問題であり、これを認めると証明責任の分配の意味そのものの存在意味が失われるから、認めることには抵抗がある。しかし、証明責任の分配は、法規(命令規範)ではなく、また証明のための照会であっても、証明責任そのものを反故にするものでもないから、消極的に解する根拠はない。むしろ照会の制度は、証明責任の分配などによって生まれた不条理を是正するものと解すべきである。
②訴訟において主張されていない請求に関連する照会をすることはできるか、という点について:一定の要件の下、積極的に解すべきである。たしかに主張されていない請求に関連する事項を照会することは、当事者照会が、「主張または立証を準備するために必要な事項について、・・・書面で回答するように照会をすることができるという制度である」ことに鑑みれば、請求も(よって主張も)していない事項について、照会できる根拠は存在しないことになる。
しかし、主張・立証するために必要な事項を、厳密に解すれば消極的な解釈となるが、争点の整理が必要なような複雑な事案では、そもそも主張・立証に必要な事項も争点を整理しないままでは、明確になっていない場合もあり、そういった場合には主張・立証するために必要な事項の幅を広げ、争点整理の充実に資する限りでこれを認めるべきことになる。
③訴えの追加的変更を準備するための照会は163条の「主張または立証を準備するために必要な事項について」に当たるか、という点について:②で議論したところを敷衍すれば、訴えの追加的変更もまた、積極的に解すべきものとなる。
3)@当事者照会に対しては、回答書は書面によってなされなければならない(民訴規84Ⅲ)が、回答書の不提出のとき、これを制裁する規定は予定されていない。そこで不提出のときは裁判所の釈明権の行使などに期待するしかない(伊藤243頁)。それゆえ準備書面に回答の内容が記載されてきたとき、回答の不提出を理由に何らかの制裁を課すことはできないと考えるべきであろう。
@当事者照会は、裁判所の関与を前提としていないから、これをめぐる当事者間のトラブルについて裁判所の介入もまた予定されていない。しかし、当事者照会に回答義務があることは規定がある以上間違いないから、不誠実な回答(照会が不適当かどうかについては規定がある(163))などに対しては信義誠実訴訟追行義務(2条)違反を構成する。当事者照会をめぐるトラブルに、裁判所は容易に介入すべきではないが、それが信義誠実訴訟追行義務違反を構成する場合には、積極的な介入を認容すべきであろう。当事者照会に関わる事項について、すべて求問権を通じた釈明権の行使にこれを変えるべきであるという主張は、当事者照会の制度を反故にするものであって、受け入れられないと考えるべきである。
@求問権を行使して釈明権を裁判所に行使してもらうのと、当事者照会を実施する場合の大きな違いは、その制度趣旨の違いから帰結される違いにある。前者は、訴訟の進行に伴って、その必要性が裁判所によって認知されなければならないのに対して、当事者照会はそもそも模索的側面がある。すなわち、当事者照会は相手方が有している資料を入手することで、自己の請求を基礎付けようと当事者の行為であるのに対して、釈明権の行使は、中立な立場にある裁判所が、訴訟の過程においてその必要が、すでにある当事者の主張・立証から正義・真実の探求のためにするものである。それゆえ、顛末説明義務のあるような者に対してしか、行使できない。
4)@当事者照会に回答義務があることは規定がある以上間違いないから、不誠実な回答(照会が不適当かどうかについては規定がある(163))などに対しては信義誠実訴訟追行義務(2条)違反を構成する。問題は回答義務の有無につき、どういう基準で判断すべきか、という点である。主張・立証を準備するためであるなら、163条の除外規定に該当しなければ、どんなことでも照会してよいか、という点である。基本的には肯定的に考えるべきであると考える。それは、当事者照会が模索的証明を禁ずるものではなく、むしろ争訟の解決のためには、証拠や情報の偏在を是正し、真実発見に資する制度と捉えてこそ、当事者照会の制度は生きてくるものと考えるからである。
@不当に回答を拒否したときは、相手方にとって不利な証拠が存在するとの推認をすべきか、という問題と、求問権を行使して釈明処分を裁判所に発動してもらうという二つの効果ないし制裁が考えられる。しかし、単に証拠の推認を回答拒否のみから演繹するのは、時期相承であろうし、釈明処分の発動も先にみたように必然的なものではない。結局のところ、不当な回答の拒否から、その拒絶について不利益な心証形成が可能となるということ、場合によって釈明処分の発動もありうる、としかいいようがない。
5)釈明処分をしたが、これに答えなかった場合と類似の影響が起こるものと考えられる。
具体的には、最初の当事者照会における①、②,③過去の取引経過については、200万円の過払いが推認されるであろうし、第二の当事者照会に関しては、強引な取立てが推認され、任意整理が妨げられたことの一因になったと推認されよう。結論として、判決においてXに有利な心証形成がなされるものと思われる。

Q2
 争点整理(以下民事訴訟法講義 争点整理手続 栗田 隆)手続[2]には、準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続がある。いずれの手続がとられた場合でも、その効果として、当事者は新たな攻撃防御方法を提出することを直ちに禁止されるわけではない。そのような強力な失権効は、訴訟の実情に合致しないので、採用されなかった。証拠調べの結果に基づいて、新たな事実の主張が必要となることが多いからである。また、強力な失権効を認めると、その失権効のゆえにこの手続の利用が敬遠されるからである。効果は、次述の説明義務に留まる。各整理手続について次のことが共通する。
•要証事実の確認  手続の終了・終結の際又はその後の口頭弁論期日に、その後の証拠調べにより証明すべき事実が何であるかを裁判所が当事者との間で確認する(165条・170条5項・177条)[7]。この確認は、争点整理手続とその後の手続との区切りとなる。
•説明義務  争点整理手続終了後に攻撃防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めのあるときは、各整理手続終了前に提出することができなかった理由を説明しなければならない(説明要求権と説明義務。167条・174条・178条。書面による準備手続にあっては、178条列挙の行為(要約書面の陳述または争点の確認)がなされた時に生ずる)。例えば、交通事故の損害賠償請求訴訟において、事故の見舞金として渡した5万円を主張することを忘れていた場合に、金額が小さくて失念していたが、家の整理をしていたときにたまたま領収書が出てきて思い出したと説明する([最高裁*1997b]213頁以下の例)。説明義務を果たすことができない場合には、その攻撃防御方法は時機に後れて提出されたものとして却下されることがある(157条)[4]。説明は、期日において口頭でする場合を除き、書面でしなければならず、口頭弁論期日において口頭で説明した場合でも、相手方は説明内容を記載した書面の交付を要求できる(規87条・90条・94条2項)。相手方が却下申立をなすことを容易にするためである。説明義務は、当事者の不出頭等により整理手続が終了または終結した場合(166条・170条5項)でも生ずる。整理手続が取り消された場合(172条)には生じない。
争点整理のためには、裁判所が訴訟関係を明瞭にすることが必要である。そのために、151条1項の釈明処分を効果的に行うことが重要である。例えば、裁判所は、当事者のために事務を処理・補助する者(会社の社員等)に事実関係を期日に説明させることができる([最高裁*1997b]76頁以下参照)。
争点整理手続の実施により、審理手続は争点整理(当事者の主張)の段階と人証を中心とした証拠調べの段階とに大きく2分されることになる。もっとも、この2分は、緩やかなものである。時機に後れた攻撃防御方法に該当せず、また説明義務を果たせば、争点整理後に新たな事実主張をすることも許される。また、争点整理後に集中的になされるべき証拠調べとして182条が挙げているのは、証人尋問・当事者尋問である。文書の取調べや検証あるいは鑑定は、事実関係を把握し、争点を発見・整理するために、争点整理の段階で随時なされる。証人尋問等は、新鮮な印象を判決の基礎資料にするために、判決に接近してなすことが望ましいのに対し、文書はいつでも何回でも閲読できるからである。検証や鑑定は両者の中間に位置するが、実施時期を争点整理後に限定する必要性は少ない。

2 各整理手続の概要

2.1 準備的口頭弁論(164条以下)
口頭弁論を(α)争点と証拠の整理を行う準備段階と(β)人証調べを中心とした段階とに分けて行う場合に、前者を準備的口頭弁論と言い(164条)、後者を本質的口頭弁論と言う(あまり適切な名称とは思われないが、このように呼ぶのが慣例である)。準備的口頭弁論を行う場合には、口頭弁論手続の全体は、通常次のようになる。
1.訴状及び答弁書に基づき本案の申立てと事実の主張がなされる。
2.調査の嘱託・鑑定の嘱託、文書・準文書の取調べ、検証および鑑定(特に書面で意見陳述する鑑定)を行いつつ、事実主張を整理(追加あるいは撤回)し、その他の証拠調べ(特に証人尋問・当事者尋問)の範囲を決めていく。
3.準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認する。
4.続いて、証拠調べ(特に当事者尋問・証人尋問)がなされる。証人および当事者の尋問は、できる限り、争点整理後に集中して行うべきである(182条)。
準備的口頭弁論を実施するか否かは、裁判所の裁量に委ねられている。他の争点整理手続と異なり、公開法廷における口頭弁論の一部として実施されるので、実施に当たって当事者の意見を聞くことは必要ない。社会に与える影響の大きい事件など公開の必要性の高い事件の争点整理は、この手続によりなされる必要性が高い([中野*1997a]37頁)。社会に与える影響が大きいとは言えない事件(日常的な事件)について準備的口頭弁論を行う場合には、意思疎通のしやすいラウンドテーブル法廷を使用することもある(法廷であるから公開されるが、事件の性格上傍聴人がいないのが通常である)。
2.2 弁論準備手続(168条以下)
これは、当事者が事実と証拠を提出して、争点と証拠の整理を行う対席・限定公開の手続である(168条・169条)。この手続は、口頭弁論そのものではないが、口頭弁論に関する規定の多くが準用されており、口頭弁論に準ずる手続である。弁論準備手続は、裁判所が行うほか、受命裁判官に行わせることもできる(171条)。この手続では、争点と証拠の整理以外に、次のこともなしうる。
裁判所が実施する場合にできる訴訟行為(170条)
受命裁判官が実施する場合にできる訴訟行為(171条)

口頭弁論の期日外においてすることができる裁判(証拠の申出に関する裁判、訴え変更許否の裁判、補助参加の許否の裁判など)(2項)。

文書・準文書の証拠調べ170条2項に掲げる裁判は不可(2項カッコ書き)。

但し次の事項についての裁判はすることはできる(3項)
•調査の嘱託(186条)
•鑑定の嘱託(218条)
•文書・準文書を提出してする書証の申出[6]  文書提出命令の申立てについては、受命裁判官のみでは裁判できない。必要であれば、争点整理の実施主体を臨時に合議体に切り替える。
•文書・準文書・筆跡対照用文書の送付嘱託(226条・229条2項・231条)
文書・準文書の証拠調べ[3][9]

5項掲記の各種の処分・裁判(釈明処分など多数)次の裁判は受訴裁判所がするが、その他は受命裁判官がする(2項ただし書き)。
•150条の規定による異議についての裁判
•157条の2の規定による却下についての裁判
当事者の訴訟を終了させる行為(訴えの取下げ、和解、請求の放棄・認諾)。同左(2項)
口頭弁論の期日外ですることができる裁判を弁論準備手続でなすことが認められた理由は、それを制限公開の手続で行うことを禁止する理由はなく、また、それをなす必要性の高い裁判(弁論の準備と密接に関連する裁判など)が多いからである([法務省*1998a]195頁)。これらは、裁判所がなすものであるから、受命裁判官が主宰する手続でなすことは適当ではなく許されない。しかし、171条3項所定の各種の嘱託は、争点整理との関係で特に必要性があるので、受命裁判官もなしうるとされた。これらは、本格的な証拠調べのための準備的行為である([法務省*1998a]205頁)。平成15年の改正により、文書を提出してする書証の申出についても、同様な理由により、受命裁判官が裁判できることとなった(証拠として採用し、閲読して争点整理に用いることがを明示的に認められるようになった)。
争点整理に用いる資料
裁判所が事案を把握して、争点と証拠を整理するためには、当事者の主張を聴き、どのような証拠があるかを知るだけでは不十分な場合がある。証拠の内容を知った上で整理をする方が、よりよい整理ができる。制限公開の手続である弁論準備手続の中で、それがどこまで許されるかが問題となる。裁判所が弁論準備手続を主宰する場合について述べよう。
•契約書や領収書などの文書および準文書の取調べも許される(170条2項)。事件に関係した者(証人となる可能性のある者)が事実関係を陳述した報告書の取り調べることについては、証人として取り調べるべきものを文書として取り調べる点で批判はあるが、これも争点と証拠の整理のために取り調べることができる[5]。
•裁判所は、170条1項の証拠の申出に関する裁判の一つとして書面審尋(205条)を行う旨を決定して、その回答書を得て、それを争点整理の資料にすることも許されよう([条解*1997a]190頁以下)。但し、証拠資料とするためには、弁論準備手続終了後に口頭弁論に顕出することが必要である。
•証人尋問・当事者尋問は、口頭弁論でなされるべきであり、弁論準備手続では許されない。
限定公開
手続は、限定公開である。この手続の重要性に鑑みれば、この手続が口頭弁論ではないという形式的理由で裁判の公開の原則(憲82条)から逃れることができるかについて疑問がないとはいえない。しかし、弁論準備手続の結果が口頭弁論において陳述されることを考慮すれば、制限公開とされていることは憲法上許されてよい(当事者双方からの申立があれば弁論準備手続が取り消されること(172条但書き)によっても補強される)[8]。
手続の実施
裁判所が必要あると認めるときに当事者の意見を聴いて開始され(168条)、裁判所が相当と認めるときに取り消される(172条)。また、当事者双方の申立があるときには、取り消さなければならない(172条但書き)。当事者の意思の尊重は、限定公開であるとの特質に基づく。
通信出頭
当事者の一方が裁判所に出頭する場合には、裁判所が当事者の意見を聴いて相当と認めれば、他方は裁判所に出頭せずに3者通話の方法により手続に参加することができる(通信出頭)。通信出頭者は出頭したものとみなされる(170条4項)。通信出頭の場合には、意思疎通が完全になされるとは限らないという懸念があり、かつてはこの者の保護のために、訴えの取下げ、和解あるいは請求の放棄及び認諾といった重要事項をなしえないとされていた(170条旧5項)。しかし、平成15年の改正により、通信出頭者もこれらの行為をすることができるとされた。もちろん、これらの重要行為については、通信出頭者の意思確認を慎重に行う必要があり、和解条項が複雑になるような場合には、裁判所はファックス等を利用して確認することになろう。
# by civillawschool | 2006-07-06 12:09

お休み

 授業は休講にはなりませんが、山口は業務の都合で次回(6月23日)の講義お休みします。
# by civillawschool | 2006-06-22 10:29

感想雑感

 第一回めの授業を終えての感想から。
 多くの学生諸君が予習不足ではないか。質問は読んできていたが、添付されている資料を読んできていないという印象を受けた。これでは、なんのための資料か分からない。しかし、おそらく、解答を書くために資料を読むようになるので、心配はいらないのかもしれない。
 次に驚いたのは、大賀先生と私との間での意見の相違を二人の間での準備不足ないし、打ち合わせ不足と考えている見解であった。
 数学のように正解があるわけではない学問では、見解の相違をそのまま学生諸君にぶつけることは私はいいことだと思っている。そうすることで、学生諸君に欠けている考える力を滋養することができると思っているからである。大いに迷って欲しいのに、迷うことに戸惑いを感じているようだった。
 他に、資料集などをよく読んでいないのか、解答例がすべての質問に答えていない、というものがあった。学生諸君に提出してもらう部分については、もちろn答えは書いていないし、多くの設問の答えも、前後の設問の解答とのからみで、要旨のみが書かれているためであろうか。
 通常の答え(解答例)では、C評価しか与えないと伝えたら、それは修正して欲しいとの意見があったが、これは大学院のFD会議で決めたことであり、評価方法として妥当ではないかと思っている。簡単に説明すれば、普通に解答すれば、普通の点、すなわちC評価をしようという申し合わせである(と私は理解している)。
 最後に、ゆっくりやって欲しいとの要望があったが、これは多くの場合、予習不足から話しについていけないために、ペースが速いと感じたのではないかと思う。
# by civillawschool | 2006-06-22 09:04

民亊総合4 民訴部分

山陰法科大学院3年の授業レジュメです。
6月16日から始まる民亊総合Ⅳの配布資料です。
民訴LS課題集の宿題部分を除く解答例です。教室で配布するものと同じものです。
宿題部分の解答例は、6月23日に宿題回収後に教室で配布し、かつここでも掲載します。

民訴LS課題集 解答例

重複起訴の禁止と相殺の抗弁 unit2
レポート課題としてはQ2の5ないし6が適当か?
重複起訴禁止
二重起訴の禁止
    定義:同一当事者間で訴訟が係属しているとき、同一訴訟物または、この訴訟物と密接に関連する訴訟物について当事者が重ねて本案の審理を求めることを禁じる原則のこと。
    制度趣旨:裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避ける
 二重起訴の要件①「重ねて」の意味は、裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避けるためであるから、係属中の訴訟手続において反訴を提起したり、訴えを追加的に変更することは二重起訴の禁止の原則に触れない。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおけるこの債権の履行を求める給付の訴えを反訴することは認められる。
   ②訴訟物が同じ、または密接に関連していることの意味
         訴訟物が同一であることに問題はないであろう。訴訟物は請求の趣旨と請求の原因によって特定される。審判の対象は請求の趣旨が同じでなくとも、近似する場合がある。たとえば所有権の確認と所有権にもとづく引渡し請求や、登記請求である。

③当事者が同一であることとは。
被告・原告が入れ替わっても当事者は同一といわれる。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおける被告が、この債権の履行を求める給付の訴えを、別訴で提起することは認められない。

手形小切手訴訟
 証拠方法の制限(352条):書面(手形の券面)に限る
 反訴の禁止(351条)
 1期日審理の原則(規則214条)
 控訴の制限(356条)控訴の禁止ただし、却下判決に対しては例外
14-1-2 手続
 請求適格 ①手形による金額支払請求と②これに附帯する法定利率による損害賠償に限られる
 手形訴訟を選択すると、そのことを訴状に記載(350条2項)訴状に手形の写しを添付(規則55条1項3号)
 管轄:普通裁判籍、特別裁判籍もある(支払地)事物管轄は地裁・簡裁
14-1-3 弁論・証拠調べ
 弁論:原則一回で終了、やむをえないとき15日以内
 証拠調べ:書証に限る(352条1項)手形、契約書の写し、自己が所持する文書に限られる、ただし文書の成立の真否と手形の呈示に関する事実については、当事者尋問ができる。職権調査事項に関してはこの限りでない(352条5項)
14-1-4 手形判決
  手形訴訟の要件を欠くとき、却下。
  請求認容または棄却の判決には控訴はできない。
  原則仮執行宣言
14-1-5 原告は訴え提起後、口頭弁論の終結前なら被告の同意なしに通常訴訟に移行を申立てることができる(353条)。
14-1-6 手形本案判決に対しては異議による移行がある。判決送達後2週間、書面で。
 異議によって口頭弁論終結前の状態に戻り、通常訴訟に移行。

Q1
1)まず、第二訴訟が手形訴訟でないとすると、判例は、肯定的である(ちなみに第二訴訟が先行している場合について、判例はないものの否定的であろうと推測される)。しかし、兼子教授の主張では、確認の訴えが先行している場合でも第二訴訟は重複訴訟となる。第二訴訟における請求は、第一訴訟において訴えを変更したり反訴を提起すれば十分であると考えている。訴訟物に関して、判例は給付の訴えが棄却されても必ずしも請求権の不存在は確認されないということを理由にしているが、兼子教授は実質的な救済方法の有無(反訴や訴えの変更)と、重複審理による不利益を衡量している。
しかし、東京地判(資料4)にあるように、第二訴訟が手形訴訟であるなら、かような訴えは認められる。それは手形訴訟の特質(迅速な裁判)からくるものである。
2)手形訴訟では反訴が禁じられている。そこで別訴で争うことも(二重起訴の禁止から)禁ぜられることはない(資料3)。
3)まず、第二訴訟が手形訴訟でない場合から考えてみよう。
債務不存在確認の訴えに対して給付の訴えを起こせるかという問題であるが、消極的確認訴訟に被告が勝訴しても給付判決が得られるわけではないので、訴えの利益はある。これを両訴が審級を異にしている場合も考えると否定的に考えるべきではないこともちろんである。資料6の判決もこのことを確認している。
そうして、第二訴訟が手形訴訟であっても、このことを変更する理由はないから、第二訴訟が手形訴訟でも、重複起訴には当たらない。
 4)反訴の申立てによって、本訴は実は反訴請求の棄却の申立てに転化する(資料7)と考えられるから、実際の審理は一本化すると考えてよい。

Q2
相殺と重複起訴
二重起訴の禁止と相殺の抗弁
   訴訟物たる債権を自動債権として予備的に抗弁する場合、自動債権の一部は一部請求としてすでに訴訟における審判の対象となっているが、それがもうひとつの訴訟において被告としてその債権の主張しなかった残額について予備的抗弁として提出した場合は、訴訟物は同一ではない(却下すべきでない)。しかしそれ以外の場合は二重起訴禁止として扱う。

1)手形訴訟においても券面上に現れない人的抗弁などの提出も許されるが、証拠制限が適用される関係上その立証が困難である(兼子502頁)。悪意の抗弁の成否を判断する材料がなければ、そのことについて証明責任の分配法則にしたがって、悪意はなかったものと裁判所は判断するのが正しいやりかたである。もっとも原告は口頭弁論終結前ならいつでも通常訴訟へ移行させることができるから(被告はできず、手形本案判決に異議申立てする)、通常訴訟に移行していれば、被告の証明活動はより自由になる。
相殺の抗弁については、文書による提出が可能なので、この点では、Yの抗弁が容れられる可能性が高い。
2)相殺の抗弁が却下され、あるいは無意義に帰した場合の相殺の効力はどのように解消されるのか、という問題である。民法上の意思表示として相殺の意思表示がなされた場合は、相手方に到達すれば直ちに対等額において自動債権と受動債権は対等額の範囲で消滅するが、訴訟において相殺の抗弁を提出した場合には、それを訴訟行為と捉え、その訴訟手続の行方によっては、不都合が生じないように取効的訴訟行為の特色である、判決で取り上げられないときは効力を失うとの立場をとるべきか(訴訟行為説)という問題である。しかし、わが国の手続法には相殺に関する特別な規定はない。
 そこで、裁判で取り上げられなかったときは、相殺の意思表示は撤回されるとの意思表示を付随的(条件として)に含んだ私法行為(新私法行為説)などの解釈をとる必要がある。
3)訴訟物たる債権を自動債権として抗弁する場合、自動債権はすでに訴訟における審判の対象となっているので、それがもうひとつの訴訟において相殺の抗弁として提出することは、基本的には、重複起訴の禁止に抵触する。審理の重複をさけ、矛盾する判決が生ずることによる法的安定性の侵害を防ぐためであると説明される。
4)相殺の抗弁として提出していた債権の給付を、後から請求する訴訟は重複起訴の禁止に触れるか、という問題である。
場合を分けて考える必要がある。第一は、相殺の抗弁についてすでに撤回したことが認められる場合であり、第二は、撤回の事実が確認されない場合である。第二の場合には、重複起訴の禁止に触れる。しかし、すでに撤回が代理人の陳述や弁論の全趣旨から認められる場合には、相殺の抗弁はもはや存在しないのだから、重複起訴の禁止に抵触すべきではない、と考えるべきであろう。
       
処分権主義 unit7
処分権主義による訴訟の終了など
講義の主題・ポイント:処分権主義に基づく具体的な制度の運営について理解する。
キーワード:訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解

17-1-1 私的自治原則の訴訟手続における表現として訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解などの処分権主義による訴訟の終了があげられる。処分権主義は、訴訟物に関して現れる(246条:判決事項)に限られない。当事者の処分行為によって当事者の対立そのものが解消してしまう(実質的に紛争がなくなる)ので、訴訟は終了するし、裁判所はこれに対抗することができない。

百選判例 46 一部請求における残部債権による相殺   
Issue(事件の概要):YはXに対してXの違法な仮処分申請によって、本件建物の持分を通常の価格より低い価格で売却することを余儀なくされたとの理由で、通常価格との差額2億5000万円余が損害であると主張し、その一部である4000万円を請求した。他方XはYに対してYが支払うべき相続税などを立て替えて支払ったとして、Yに対して不当利得を理由として、1296万円の返還を求める訴え(以下本件訴訟という)を提起した。本件訴訟において、不当利得返還義務の存否を争うとともに、予備的に別件でYがXに対して起こしている訴訟における損害額(2億5600万円)のうち4000万円の請求を越えた部分(2億2000万余)および上記違法仮処分に対する異議申立手続の弁護士費用、遅延損害金の合計を自動債権とする相殺を主張した。
 第一審は相殺の抗弁を認めて請求棄却、原審は相殺の抗弁を認めなかったためXが上告した。
Rule(法):すでに係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自動債権として他の訴訟において相殺の抗弁をすることは許されない(最判判例:重複起訴の禁止:民訴142条)。その理由として①争点が同じでるから重複審理を余儀なくされ、②異なる判断が下される恐れがあるからである。逆に係属中の訴訟において相殺の抗弁をしている自動債権を別訴において訴求することができるかについては争いがある。
 次に一部請求が許されるか、という問題であるが、債権の一部であることを明示して請求することは、処分権主義の立場からは認められてよさそうである。しかし、訴訟物をこの一部として扱うと、残部請求については別訴で争いうるから、事実上の矛盾判決が生ずるおそれがあり、また訴訟経済上も重複審理という点で好ましくないとの批判がある。そこで債権全体を訴訟物とみるという見解も主張されている。判例は明示的に分断されていれば、それぞれが訴訟物であるとの立場をとっている。
Analysis(分析):本件ではすでに係属している訴訟では、債権の一部請求をしており、その残部を自動債権として相殺の抗弁をなした、というものであるから、従来の判例理論からは矛盾しないこととなる。しかし、実質上、重複審理をすることを認めることになるので、裁判所は、この問題を相殺の抗弁を主張する当事者に負担をかけるべきでない、との視点から救済している。いわく、「相殺の抗弁に関しては、訴えの提起とは異なり、相手方の提起を契機として防御の手段として提出されるものであり、・・・一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなどの特段の事情の存在する場合を除いて、正当な防衛権の行使として許容されるものと解すべきである。」としている。
 相殺の抗弁を「防衛権の行使」として捉えるのは、相殺に担保的機能を認めているからであり、かかる機能を剥奪すべきでないとの配慮を、一部請求外の部分での債権について認めた判断は妥当なものといえよう。

Conclusion(結論):判決に賛成


Q1 
1)訴訟物は50万円を越ええる債務の不存在であるから、50万を越え無限大までの債務の部分ということになる。それゆえ、50万1円の債務を裁判所が認めてときも、5000万の債務を認めたときも請求の一部認容一部棄却(棄却部分は50万1円なら50万2円から先の部分が不存在であることが認容され、5000万のときは、5000万1円から先の債務の不存在が認容されたことになる。)である。
2)審判の対象は債務の不存在確認といっても問題となっている債務が発生していないことが、審判の対象であり、債務が発生しなかった、ないし消滅したということが審判の対象である。確認の訴えにおいては、紛争がすでに存在し、その権利・法律関係(およびその範囲)が審判の対象である(大学双書p42:1998)。相手方の主張する権利・法律関係が存在しないことを主張・立証するためには、相手方の主張に根拠のないことを示す必要があるが、相手方がそれを明確にしていない場合でも、かかる主張・立証は不可能ではないであろう。まったく、知らない、あったこともない、などの主張は不可能ではない。
 本件に即して考えてみると、ZはYに対して事故を起こしており、何らかの債務が発生していることは明らかなので、その債務の範囲を明確にすることが訴訟活動の主要な部分となろう。Yがこの訴えに対してこれを認容するつもりがないのであれば(抗弁を提出するということは争うつもりのようであるが)、問題はない。しかし、争うなら、Yもまた自己の被った損害(Zに責任があるとの部分も含めて)の立証(結局それゆえ50万円を越えて債務が存在するとの抗弁)をすることになる。
3)50万円以下の債権については審判の対象となっていない、と解される。けだし、判決で確定したのは50万円を超えて債務は存在しない、ということであって、50万円以下の部分については、債務があるともないとも確定されたわけではないからである。
Q2
1)引換給付判決は、当事者(被告の同時履行の抗弁など)の処分行為なくしてはなしえないか、という問題である。引換給付判決は、同時履行の抗弁権が提出されたときには、これをなさなければならないし(資料2)原告がこれを求めていなくとも、抗弁権が提出されていれば、引換給付ということになる(資料3他に最判昭和33.3.13他双書1998年版355頁)。しかし、被告が同時履行の抗弁権を主張・立証していないときは、かかる給付判決は処分権主義に反する。もっとも引換給付判決はいわば申立事項に対し一部認容判決ではないか、との主張も考えられるが(資料6において立退料についてはそれが正当事由の補完的なものであるならば、このように解している)、引換給付においてはその対象が当事者の主張をまってみないと確定しないものであることにかんがみると、また同時履行が権利抗弁であることから、かような主張は受け入れがたい。
2)既判力とは確定判決に対して与えられる通有性ないし拘束力をいう(高橋宏志『重点講義 民事訴訟法』2002有斐閣499頁)から、判決の主文において引換給付が命ぜられているのであれば、商品引換訴訟について既判力が及ぶと解してよいであろう。
3)立退料については、まず①正当事由の補完的意味合いを持つものと、他に正当事由がなく、立退料のみが正当事由に該当する場合が考えられる。前者であれば、それは立ち退きの請求に対する一部認容判決の意味をなすから、問題はない。立退料の支払がはじめて借家法1条の2の正当事由を充足する場合、それは主要事実を構成するから口頭弁論で主張されるころを要する。次に②予備的に、立退料と立退きを引換給付することを求めたとき(こういった場合が多いようである)、これは一部請求の一種と捉えることができる。この金額を減額することは原告の求めた以上のものを原告に与えることになるので、186条(現行246条)違反となる。逆に立退料を増額することは、請求の一部認容になるので差し支えないが(これを裁判所の当事者の意思解釈という形で補完するという論法もある:資料6の136頁)、しかし、その増額の度合いが極端であれば、もはや当事者が求めた裁判ということはできず、処分権主義に反することになる。原告が立退料の支払の意思は示しながらその金額を明示しないときは、立退料との引換給付判決は一部認容判決として解釈すれば足りる。
5)引換給付判決の執行に関して、民事執行法はその31条1項で「債務者の給付が反対給付と引換にすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付またはその提供のあったことを証明したときに限り、開始することができる。」と規定している。しかし、執行文の付与そのものは27条1項の「債権者が証明すべき事実の到来に係る場合」にはあたらないと解される。執行文の付与を受けて、次に反対給付の提供を執行開始の段階で証明すればたりるからである。引換給付判決は条件付判決とは違う、と解される。条件付判決であるなら、その条件の成就を債権者が証明しなければ、執行文の付与は受けられないこととなる。このためには、その金額を供託し、これをもって27条1項の執行文付与のための証明とすることが必要となる。
Q3
 控訴の利益(控訴権)
 定義:第一審よりも有利な判決を受ける可能性。
  全面勝訴しても控訴することができるという説(実体的不服説)と第一審の判決主文と控訴の趣旨を比較して、決定するという説(形式的不服説)が対立している。既判力が判決主文に包含するものに生ずる(114条)のだから、形式的不服説がよい。
 ただし、別訴禁止規定(人訴25条)などが存在する場合、その訴訟内でしか関連請求の機会がないので、全部勝訴者にも、関連請求(たとえば離婚請求棄却判決を得た被告の離婚の反訴)を持ち出すために控訴の利益を認めるべきであると言われている。予備的相殺の抗弁勝訴した被告は、自己の反対債権の不存在が既判力で確定されてしまうので(114条2項)別の理由での勝訴を求めて控訴する利益を認める必要がある。
 附帯控訴:相手方の控訴による控訴審手続において、被控訴人が原判決に対する自己の不服を主張して控訴審の審判請求を自己に有利に拡張する申立てをいう(293条)。

1)控訴がXによってなされたのであれば、控訴審においては、不利益変更禁止の要請が働くから、控訴審裁判所が債権額は140万であるとの心証を得たとしても、当事者の申立てていない判決の変更は許されない。かような事態に対してYは附帯控訴をしておけばよい。
# by civillawschool | 2006-06-14 15:36

司法試験

  試験問題予測、大当たりでしたね。共同訴訟が出ましたね。
# by civillawschool | 2006-05-24 18:21

履修免除試験・到達度試験について

 民亊訴訟法の試験は、ひとつの事例をとりあげて二問中一問解答していただく形式をとります。他の科目については、昨年と同じだそうです。
# by civillawschool | 2006-03-30 11:30

お知らせ

先日の最終テスト、択一第二問は正解なしです。ⅳを正解にするつもりで書き換える予定でしたが、失念しておりました。お詫びして訂正いたします。
# by civillawschool | 2006-02-10 15:27

第27講 第28講 14日め

14日目
第27講 手形・小切手訴訟および簡易裁判所における訴訟手続
講義の主題・ポイント: ①手形・小切手訴訟の意義及び手続を理解する。② 簡裁における特別手続(督促手続、少額訴訟)や通常訴訟手続の特則を整理する。
配布資料および演習:自己破産の申立

14-1-1 手形小切手訴訟
 証拠方法の制限(352条):書面(手形の券面)に限る
 反訴の禁止(351条)
 1期日審理の原則(規則214条)
 控訴の制限(356条)控訴の禁止ただし、却下判決に対しては例外
14-1-2 手続
 請求適格 ①手形による金額支払請求と②これに附帯する法定利率による損害賠償に限られる
 手形訴訟を選択すると、そのことを訴状に記載(350条2項)訴状に手形の写しを添付(規則55条1項3号)
 管轄:普通裁判籍、特別裁判籍もある(支払地)事物管轄は地裁・簡裁
14-1-3 弁論・証拠調べ
 弁論:原則一回で終了、やむをえないとき15日以内
 証拠調べ:書証に限る(352条1項)手形、契約書の写し、自己が所持する文書に限られる、ただし文書の成立の真否と手形の呈示に関する事実については、当事者尋問ができる。職権調査事項に関してはこの限りでない(352条5項)
14-1-4 手形判決
  手形訴訟の要件を欠くとき、却下。
  請求認容または棄却の判決には控訴はできない。
  原則仮執行宣言
14-1-5 原告は訴え提起後、口頭弁論の終結前なら被告の同意なしに通常訴訟に移行を申立てることができる(353条)。
14-1-6 手形本案判決に対しては異議による移行がある。判決送達後2週間、書面で。
 異議によって口頭弁論終結前の状態に戻り、通常訴訟に移行。

14-2-1 少額訴訟
  60万円以下の金銭の支払請求(368条)、同一簡裁での利用は年10回まで
14-2-2 原告が少額訴訟選択、被告は希望すれば通常訴訟に移行(最初の口頭弁論で被告が弁論をすると移行の権利の放棄。裁判所も職権で移行を決定できる。(被告を公示送達しなければならない、その他少額訴訟の利用回数や、要件(目的、価格など)を満たさない、あるいは少額訴訟ですることが相当でないとき)
14-2-3 手続の教示(当事者のために)、1期日審理の原則、反訴の禁止、当事者本人の出頭義務(訴訟代理人がいても本人または法定代理人)、証拠は即時に取り調べができるものに限られる、証人の宣誓は不要、電話会議システムによる証人尋問も可、証人調書の省略。
14-2-4 判決の言渡しは、弁論終結後、直後が原則。判決文は調書でよい、支払の猶予(3年以内)も可、職権で仮執行宣言、控訴は許されない。異議の申立てはできる(2週間以内にその裁判所に)異議が適法なら通常訴訟手続に移行。
14-3-1 督促手続
 訴額に関わらず、簡裁
 金銭またはその他の代替物または有価証券の一定の数量、給付を目的とするもに限る。公示送達はだめ。
 申立却下(要件を充足しない)は裁判所書記官がする
 それ以外は請求の理由の有無について債務者を審尋しないでする
 仮執行宣言がつく(異議申立がないと有効に)
 督促異議には理由を付す必要はない

第28講 補講 証明に関する諸原則
講義の主題・ポイント:証明に関する集積された判例法理を学習する
キーワード:集団訴訟における証明、価格協定による損害の立証、概括的認定、損害賠償額の算定、証明責任の分配、文書提出命令
判例百選 66、67、68、69、72、79

IRAC方式による判例学習を自習してみてください。当日、山口作成の記入例を配布しますが、まず、自身で学習してみてください。
# by civillawschool | 2006-02-04 00:11

第25講 第26講 13日め


13日目
第25講 上訴制度と不服申立手続
講義の主題・ポイント:①控訴や抗告など、上訴制度と不服申立手続の意義や全体構造について理解する。②上告制度:上告理由及び上告受理制度の意義など、上告に関する基本原則の検討を行う。③抗告制度
キーワード:控訴、上告、抗告
判例百選 110、118

25-1-1 上訴
  定義:下級審判決が確定する前に、当事者がする、その取消、変更を求める不服申立方法。上級審での審理・裁判を求めるものである。
  制度趣旨:裁判の適正の確保と法令解釈の統一。
25-1-2上訴の種類
  控訴:覆審制、続審制、事後審制などがあるが日本の民訴は続審制
  上告:最高裁への上告については、上告受理制度により判例違反その他法令の解釈に重要な事項が含まれる場合に限られる。
抗告:決定・命令に対する不服申立。これに不服のときは再抗告。最高裁への再抗告は許されていない。もっとも判例違反その他法令の解釈に重要な事項が含まれる場合に限って許可をもらって最高裁へ再抗告することができる。

25-2-1 控訴
  定義:第一審の終局判決に対してなされる上訴である。
  高等裁判所が第一審としてなした終局判決に対しては上告のみが可能である(311条1項)たとえば特許申請に係わるもの。
  続審主義の恐れられる欠点として第一審の攻撃防御がおろそかになるのでは、といわれている。そこで第一審で提出しなかった新しい資料の提出を無制限にすべきでない、ということになる。争点整理手続の終結にともなう説明義務の存続(298条2項)、攻撃防御方法の提出などの期間の設定(301条)(2項:提出が遅れた理由を弁明しなければならない)時機に遅れた攻撃防御方法の却下(157条1項、297条)がそれである。
25-2-2 控訴の利益(控訴権)
 定義:第一審よりも有利な判決を受ける可能性。
  全面勝訴しても控訴することができるという説(実体的不服説)と第一審の判決主文と控訴の趣旨を比較して、決定するという説(形式的不服説)が対立している。既判力が判決主文に包含するものに生ずる(114条)のだから、形式的不服説がよい。
 ただし、別訴禁止規定(人訴25条)などが存在する場合、その訴訟内でしか関連請求の機会がないので、全部勝訴者にも、関連請求(たとえば離婚請求棄却判決を得た被告の離婚の反訴)を持ち出すために控訴の利益を認めるべきであると言われている。予備的相殺の抗弁勝訴した被告は、自己の反対債権の不存在が既判力で確定されてしまうので(114条2項)別の理由での勝訴を求めて控訴する利益を認める必要がある。
 附帯控訴:相手方の控訴による控訴審手続において、被控訴人が原判決に対する自己の不服を主張して控訴審の審判請求を自己に有利に拡張する申立てをいう(293条)。

25-2-3 終局判決
  控訴却下
  控訴棄却
  控訴認容
     原判決取消し 自判
            差戻し
            移送
     原判決の変更の限度
            利益変更禁止:原判決の敗訴部分のうち、控訴人が不服を申立てた範囲を超えて、この者に有利に変更することはできない。
            不利益変更禁止
25-3-1 上告
  定義:原則として、控訴審の終局判決に対する第三審(法律審)への上訴をいう。ただし、高等裁判所が例外的に第一審になる事例(独禁85条、86条、公選203,204条など)や、飛翔上告の合意(281条但書)がある場合には、第一審の終局判決に対して上告が認められる(311条1項2項)。
  法律審なので、原審が確定した事実に拘束される(321条)法令違背の有無の側面に限って原審判断の当否を吟味する、事後審である。
  上告制度は、法令解釈の統一が重視される。
25-3-2 上告理由
  憲法解釈の誤りその他憲法違反(312条1項)
  絶対的上告理由(312条2項)
1号から5号まであるが、問題は5号(理由不備または理由の食い違い(齟齬))であったが、最高裁への上告は上告受理申立理由制度でフィルターがかけられるようになった。
  判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反(312条3項):高等裁判所が上告審のときのみ。経験則違反はこれにあたる。
  附帯上告
25-3-2 上告の提起および上告受理申立
 上告状を原裁判所に提出し(314条)、不備がなければ原裁判所の裁判長は双方に上告提起通知書を送達する。そこに上告理由を記載していないときは、上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に上告理由書を提出しなければならない(315条)
 上告受理申立:最高裁への上告のときは、判例違背その他法令の解釈に関する重要な事項を含むことを理由として、上告受理の申立をすることができる(318条1項)。原裁判所にする。これは上告とは別個の訴訟行為。上告と双方を提起することができる。原裁判所は上告受理申立書が不適法でなければ最高裁に送付し、最高裁が受理または不受理の決定をする。最高裁は不適法な理由が一部にあればこれを排除することができる。

25-3-3 上告の審理 
 口頭弁論の要否:事実審でないので、書面審理だが、書面だけでは上告の適否・当否が明らかでないとき、口頭弁論を開く。上告を認容するときは必ず口頭弁論を開く(219条の反対解釈)。

25-3-4 終局判決
 上告却下:不適法な上告のとき
 上告棄却:上告理由とされたものが、憲法違反でも絶対的上告理由にも該当しないとき、上告に理由がないと認めるとき。上告理由が正しくとも、他の理由で原審の結論を正当とみとめるときは、棄却判決(ただし憲法違反、絶対的上告理由があるときは別)
 上告認容:破棄差戻し、破棄移送または破棄自判

25-4-1 抗告
  決定・命令に対する独立の上訴
  終局判決がなされるまでには、様々な判断を裁判所はするが、原則としては、これらの判断は終局判決をまって、終局判決に対する控訴・上告とともに上級審の判断を受ける。
  しかし、終局判決との関連が希薄な派生的・手続的な事項については、終局判決とは別個に、迅速に決着をつけるのが合理的である。すべての決定・命令に抗告が許されるわけではない。


百選判例 110 独立当事者参加における敗訴者の一人による上訴
Issue(事件の概要):訴外AはYに対して有する工事請負代金債権のうち150万円をXに譲渡したとして、XがYに対してその支払いを求める訴えを提起した。ところがZ(参加人・被控訴人・被上告人)もまた同一債権をAから譲受け、その通知はYになされているため、Yは請負代金82万4600円を供託した。ZがX・Y間の訴訟に独立当事者参加の申立をした。Xに対しては、XのYに対する150万円の債権の不存在確認と、ZがYのした供託金還付請求権を有することの確認を請求し、Yに対しては、Zの供託金還付請求権の確認とともに、譲受債権額150万円から供託額を差し引いた金額の支払いを請求した。
 第一審判決は、Aの請負代金債権の現存額は82万9800円であること、それがXとYに二重に譲渡され、対抗関係ではZがXに優先することを認定して、XのYに対する請求を棄却し、ZのXおよびYに対する供託金還付請求権のへ確認請求を認容、ZのYに対する金員の支払請求につき供託額を超える5200円の限度で認容する判決をした(ちなみに、ZのXに対する請求のうち、XのYに対する債権不存在確認は、ZのYに対する債権者であることの積極的確認を求めるべきであるとして棄却している)
 XがY およびZに対して控訴。Yに対しては150万円の支払いを求め、Zに対してはその請求の棄却を求めた。
 控訴審判決:AのYに対する債権は、XとZの間では、Zに優先して譲渡されていることを認定、またYの供託は債務の本旨に従った供託ではない(わずか2分の1を過ぎたものにすぎない)として、第一審判決中、XおよびY敗訴部分を取り消し、XのYに対する150万円の支払い請求を認容、ZのXおよびYに対する請求を棄却した。また控訴審は、第一審判決中のZのYに対する金銭請求を一部認容し、Yに対し5200円の支払を命じた部分も控訴審の審判対象となっている点については、本件のように「当事者の1が他の2者を相手に控訴した時も、他の2者は常に被控訴人に止まるのではなく、ある時点においては控訴人と利害を同じくして他の1に対して対立する関係にあるものは、これに対しては控訴人の地位に立つ。そして、実際に控訴した者、利害を同じくすることによって控訴人の地位に立った者の不服の範囲が控訴審における審判の対象となる」としている。
 Z上告。第一審でZに敗訴したYは控訴していないから、ZとYとの間の参加訴訟は、第一審判決のとおりに確定しており、Xの控訴に基づく控訴審における審判の対象にはならない等と主張した。
 上告棄却。3者において合一にのみ確定すべき場合に当たる・・・(ZのYに対する請求を認容した第一審判決部分は)Xの控訴のみによって遮断され、Yの控訴または附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のために必要な限度で・・Zに不利益に変更することができる」
Rule(法):独立当事者参加とは、当事者の一方に参加する共同訴訟参加と異なり、原告・被告の双方を相手方として、の間の請求と関連する自己の請求を、同時に、かつ矛盾のない審判を求めて参加することをいう(47条)。
Analysis(分析):そうすると、本件のように当事者の一人が控訴することで、控訴ないし附帯控訴していない当事者間の関係にまで、その判断(審判)が及ぶことになるとき、控訴審裁判所は、かかる2者の間の第一審裁判所の判決まで取り消したり、(第一審裁判当事のこられの者の請求を)認容したりすることができるのか、という問題である。
 判例は合一確定のために必要な限度でこれを認められるとしているが、この判断には次のような考慮が働いているものと考えられる。かかる判決をしたところで、独立当事者参加訴訟において、三者は、控訴審において争っており、そのため形式的には争いが存在しない2者関係に影響を及ぼす判断をしたところで、それによって不利益を被る者の手続保障がないがしろにされたことにはならず、むしろ合一確定の目的という独立当事者参加訴訟の本来の目的にそったものとなるので肯認すべきである。
Conclusion(結論):以上の理由を踏まえて判決に賛成

百選判例 118 破棄判決の拘束力
Issue(事件の概要):Xによれば、XはAを代理人として本件土地を買い受けたが、Aは自己名義で契約を結び、登記名義を取得した。Xは、本件土地の所有権確認、Y1からXへの登記移転、Y1Y2Y3移転登記抹消を求めて訴えを提起した。
 Y1らはAが自己のために本件土地を買いうけ、AY1->Y2 ->Y3 と移転したと主張した。
  第二次控訴審。X勝訴。(AはXの代理人。)
  第二次上告審。破棄差戻し。Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者にあたるか否かを審理しなかったのは、審理不尽、理由不備。
  第三次控訴審においてX敗訴。所有権を取得したのはAであり(民法100条)Xに移転する義務を果たさずY1(Aから相続)がY2に移転登記したのは二重譲渡と同じであり、Xは登記なくしてY2,Y3に対抗しえない(177条)。
  X上告。差戻し後の原審は第二次上告審で破棄の理由となった「Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者か否か」を審理すべきところ、まったく別の民法100条を持ち出し、177条の対抗要件の問題として審理判決したのは、破棄判決の拘束力に違反する、と主張した。
 最高裁は上告棄却。上告審判決の判断が差戻しを受けた原裁判所を拘束するのは、破棄の理由となった範囲でのみである。すなわち、同一の確定事実を前提とするかぎり、Y2およびY3が善意であることが認められれば、民法94条2項の類推適用を否定することは許されない、という限度でのみである。
Rule(法):差戻し(移送)を受けた裁判所は、新たな口頭弁論にもとづいて裁判しなければならない。上告審が破棄の理由とした事実上および法律上の判断は、差戻しまたは移送を受けた裁判所を拘束する(325条3項)。判決理由中の判断について生ずる特殊な拘束力である。
 ところで同一の確定事実を前提としながらも、別個の法律的見解が成り立ちうる場合、この新たな法律上の見解に立脚してXの請求を棄却することは許されるかという問題である。
Analysis(分析):破棄判決の拘束力の範囲をどのように考えるかであるが、上告審を判決の統一をその主眼とするものと考えれば、最高裁の判決のような見解も成り立ちうるであろう(上告制度は、法令解釈の統一が重視される)。しかし、三審制の意義をより当事者のためのものとして(当事者は、誤判を防ぎ、より深化した判断の機会を担保されるべきである)と捉えるなら、いったん争点として事実審で確定したものを、破棄差戻し判決によっていたずらに変更すべきではないのではないだろうか。三審制は裁判所のためだけにあるのではあるまい。
Conclusion(結論):最高裁の判決に異議あり。


第26講 再審制度
講義の主題・ポイント:上訴制度との相違との関係で再審事の意義と再審事由を整理する。
キーワード:再審事由
百選119 配布資料
26-1-1 再審
  定義:手続の重大な瑕疵など限られた一定の事由に基づき、確定判決の取消しおよび事件の再審判を求める特別な不服申立方法。
26-1-2 再審事由
  338条1項各号に規定されている。
26-1-3 再審の審判
  訴訟要件:不服の利益を有するのは当事者、その承継人、補助参加の利益を有する者(43条2項45条)。
  同一事件につき、下級審の終局判決と、それに対する上訴を却下または棄却した上級審の終局判決とがともに確定しているときは、個別に再審の対象となるのが原則。ただし、控訴審において控訴棄却の本案判決がなされたときは、事実・法律の両面にわたって控訴審で再審判しているので第一審判決に対して再審の訴えを許す必要はない(338条3項、ちなみに控訴認容のときは、第一審判決は消滅している)
  再審事由を知った日から30日以内に提起。
  不服申立の裁判所の専属管轄。
  却下:不適法な再審の訴え
  適法なとき、再審事由を調査(職権探知主義)、再審請求を棄却しないときは、開始決定--審判のやり直しーーー>原判決を正当と認めるときは、棄却判決、。
  再審請求の終局判決にもその審級に応じた上訴がある。
26-2-1 準再審
  即時抗告できる決定・命令が確定していると、準再審の対象となる。
判例百選119 

判例百選 119 再審の原告適格 
Issue(事件の概要):Yを原告とし訴外Aらを被告とする土地所有権確認等請求訴訟は、最高裁で判決をもって、Aらの敗訴が確定している。同訴訟の上告審係属中に売買契約により、Aから係争地の所有権を取得し移転登記を経たX(原告)が、Yを被告として前記判決につき、判断遺脱を理由に再審を求める本件訴えを提起した。
 最高裁は、Xの原告適格を認めながら、再審事由を欠くとして再審の訴えを却下した:再審の訴えは、判決が確定したのちにその判決の効力を是認するとができない欠缼がある場合に、具体的正義のため法的安定を犠牲にしても、これが取消しを許容しようとする非常手段であるから、右判決の既判力を受ける者に対し、その不利益を免れしめるために、その訴の提起を許すものと解するを相当であり、したがって、民訴法201(新法115条)に規定する承継人は一般承継人たると特定承継人たるとを問わず、再審原告たり得るものといわなければならない。
Rule(法): 訴訟要件:不服の利益を有するのは確定判決の効力が及ぶ者であるから(115条)当事者、その承継人、(補助参加の利益を有する者(43条2項45条))とされているが、承継人の中に特定承継人も含まれるか、という点に関する判断である。
 最高裁は、既判力のを受ける者に対して、その不利益を免れしめるために、その訴の提起を許すものと解している。
Analysis(分析):口頭弁論終結後の一般承継人については、問題がない。特定承継人にも適格があると解するのは、既判力が及ぶからであるが、一般的に口頭弁論終結前に係争物を特定承継すると、不動産であれば、登記によって、優劣が決まる場合が多く、登記まで得ていながら既判力によって不利益が生ずることはまれであろう(おそらくYA間では売買等が無効あるいは、そもそもAには所有権の取得がなかったと解される特殊な事情があったものと推測される)。
Conclusion(結論):判例に賛成

配布資料
支払命令申立書

住所
債権者
住所
債務者

貸金請求事件
請求の金額
ちょう用印紙額

請求の趣旨
債務者は債権者に対し、左記金額を支払えとの支払命令を求める。
1.金OOOO万円
1.金   円 督促手続費用
   内訳
   金   円  本申立て印紙代 
   金   円  送達料
   
請求の原因
  別紙請求の趣旨及び原因記載のとおり


右債権者  申立人(債権者)                    印

○○簡易裁判所御中
# by civillawschool | 2006-01-27 12:21

質問などに対する答え その4

お知らせから。
  民訴の最終試験問題の解説は、他の試験などが集中しているため試験期間中に実施できそうにありません。まだ、確定ではありませんが、調整中です。

①定義、制度趣旨などは、全部覚えなければなりませんか、という質問ですが。
 はい。全部覚えてください。補助参加やその他のところで、あいまいな「その訴訟の結果に利害関係を有する」であるとか、「(法律上保護すべき)利益」など、その中身のあいまいさが問題となるところであっても、覚えておいてください。その「あいまいさ」を後で議論するためにも後で必要になります。
②レジュメでまだ、係属が継続になっているところが、あるとか。失礼しました。「係属」に訂正しておいてください。
③独立当事者参加のところで、三面訴訟が原型といいましたが、原型であって、法改正もあって片面的参加(当事者のいずれかに訴えを提起)という形もあります。ご注意を。
④期末試験で民法とのリンクは、今回の担保権からみはありませんので、ご心配なく。しかし、担保についてはしっかり勉強しておくべきだと思います。(今回の試験には出ませんが)
⑤独立当事者参加における詐害防止的参加は詐害行為取消し訴訟とは、別物です。詐害行為取消し訴訟では、訴訟係属は要件どころか、そもそも取消権者が訴えをはじめて提起するものです。ただ、馴れ合い的訴訟をしているとき、詐害行為を防止するという意味で独立当事者参加のひとつがあるということです。

@昨日から出している配布資料は、ロースクール民亊訴訟法(有斐閣)です。大学院生用の資料としてゼミ室(?)に購入したものがあると思います。
 そこにある全部の質問に授業で丁寧に答えていく時間はないと思いますが、問題提起として、つまり問題意識をもって授業を聞いてもらえるようにと、配布しました。できれば各自で答えを探してみてください。
 民亊訴訟法の講義も残りあとわずかとなりました。ここまで、やってきたのですから、残りも気をぬかずにがんばってください。
# by civillawschool | 2006-01-26 14:40