人気ブログランキング | 話題のタグを見る

大学院民訴レジュメ

第25講 第26講 13日め


13日目
第25講 上訴制度と不服申立手続
講義の主題・ポイント:①控訴や抗告など、上訴制度と不服申立手続の意義や全体構造について理解する。②上告制度:上告理由及び上告受理制度の意義など、上告に関する基本原則の検討を行う。③抗告制度
キーワード:控訴、上告、抗告
判例百選 110、118

25-1-1 上訴
  定義:下級審判決が確定する前に、当事者がする、その取消、変更を求める不服申立方法。上級審での審理・裁判を求めるものである。
  制度趣旨:裁判の適正の確保と法令解釈の統一。
25-1-2上訴の種類
  控訴:覆審制、続審制、事後審制などがあるが日本の民訴は続審制
  上告:最高裁への上告については、上告受理制度により判例違反その他法令の解釈に重要な事項が含まれる場合に限られる。
抗告:決定・命令に対する不服申立。これに不服のときは再抗告。最高裁への再抗告は許されていない。もっとも判例違反その他法令の解釈に重要な事項が含まれる場合に限って許可をもらって最高裁へ再抗告することができる。

25-2-1 控訴
  定義:第一審の終局判決に対してなされる上訴である。
  高等裁判所が第一審としてなした終局判決に対しては上告のみが可能である(311条1項)たとえば特許申請に係わるもの。
  続審主義の恐れられる欠点として第一審の攻撃防御がおろそかになるのでは、といわれている。そこで第一審で提出しなかった新しい資料の提出を無制限にすべきでない、ということになる。争点整理手続の終結にともなう説明義務の存続(298条2項)、攻撃防御方法の提出などの期間の設定(301条)(2項:提出が遅れた理由を弁明しなければならない)時機に遅れた攻撃防御方法の却下(157条1項、297条)がそれである。
25-2-2 控訴の利益(控訴権)
 定義:第一審よりも有利な判決を受ける可能性。
  全面勝訴しても控訴することができるという説(実体的不服説)と第一審の判決主文と控訴の趣旨を比較して、決定するという説(形式的不服説)が対立している。既判力が判決主文に包含するものに生ずる(114条)のだから、形式的不服説がよい。
 ただし、別訴禁止規定(人訴25条)などが存在する場合、その訴訟内でしか関連請求の機会がないので、全部勝訴者にも、関連請求(たとえば離婚請求棄却判決を得た被告の離婚の反訴)を持ち出すために控訴の利益を認めるべきであると言われている。予備的相殺の抗弁勝訴した被告は、自己の反対債権の不存在が既判力で確定されてしまうので(114条2項)別の理由での勝訴を求めて控訴する利益を認める必要がある。
 附帯控訴:相手方の控訴による控訴審手続において、被控訴人が原判決に対する自己の不服を主張して控訴審の審判請求を自己に有利に拡張する申立てをいう(293条)。

25-2-3 終局判決
  控訴却下
  控訴棄却
  控訴認容
     原判決取消し 自判
            差戻し
            移送
     原判決の変更の限度
            利益変更禁止:原判決の敗訴部分のうち、控訴人が不服を申立てた範囲を超えて、この者に有利に変更することはできない。
            不利益変更禁止
25-3-1 上告
  定義:原則として、控訴審の終局判決に対する第三審(法律審)への上訴をいう。ただし、高等裁判所が例外的に第一審になる事例(独禁85条、86条、公選203,204条など)や、飛翔上告の合意(281条但書)がある場合には、第一審の終局判決に対して上告が認められる(311条1項2項)。
  法律審なので、原審が確定した事実に拘束される(321条)法令違背の有無の側面に限って原審判断の当否を吟味する、事後審である。
  上告制度は、法令解釈の統一が重視される。
25-3-2 上告理由
  憲法解釈の誤りその他憲法違反(312条1項)
  絶対的上告理由(312条2項)
1号から5号まであるが、問題は5号(理由不備または理由の食い違い(齟齬))であったが、最高裁への上告は上告受理申立理由制度でフィルターがかけられるようになった。
  判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反(312条3項):高等裁判所が上告審のときのみ。経験則違反はこれにあたる。
  附帯上告
25-3-2 上告の提起および上告受理申立
 上告状を原裁判所に提出し(314条)、不備がなければ原裁判所の裁判長は双方に上告提起通知書を送達する。そこに上告理由を記載していないときは、上告提起通知書の送達を受けた日から50日以内に上告理由書を提出しなければならない(315条)
 上告受理申立:最高裁への上告のときは、判例違背その他法令の解釈に関する重要な事項を含むことを理由として、上告受理の申立をすることができる(318条1項)。原裁判所にする。これは上告とは別個の訴訟行為。上告と双方を提起することができる。原裁判所は上告受理申立書が不適法でなければ最高裁に送付し、最高裁が受理または不受理の決定をする。最高裁は不適法な理由が一部にあればこれを排除することができる。

25-3-3 上告の審理 
 口頭弁論の要否:事実審でないので、書面審理だが、書面だけでは上告の適否・当否が明らかでないとき、口頭弁論を開く。上告を認容するときは必ず口頭弁論を開く(219条の反対解釈)。

25-3-4 終局判決
 上告却下:不適法な上告のとき
 上告棄却:上告理由とされたものが、憲法違反でも絶対的上告理由にも該当しないとき、上告に理由がないと認めるとき。上告理由が正しくとも、他の理由で原審の結論を正当とみとめるときは、棄却判決(ただし憲法違反、絶対的上告理由があるときは別)
 上告認容:破棄差戻し、破棄移送または破棄自判

25-4-1 抗告
  決定・命令に対する独立の上訴
  終局判決がなされるまでには、様々な判断を裁判所はするが、原則としては、これらの判断は終局判決をまって、終局判決に対する控訴・上告とともに上級審の判断を受ける。
  しかし、終局判決との関連が希薄な派生的・手続的な事項については、終局判決とは別個に、迅速に決着をつけるのが合理的である。すべての決定・命令に抗告が許されるわけではない。


百選判例 110 独立当事者参加における敗訴者の一人による上訴
Issue(事件の概要):訴外AはYに対して有する工事請負代金債権のうち150万円をXに譲渡したとして、XがYに対してその支払いを求める訴えを提起した。ところがZ(参加人・被控訴人・被上告人)もまた同一債権をAから譲受け、その通知はYになされているため、Yは請負代金82万4600円を供託した。ZがX・Y間の訴訟に独立当事者参加の申立をした。Xに対しては、XのYに対する150万円の債権の不存在確認と、ZがYのした供託金還付請求権を有することの確認を請求し、Yに対しては、Zの供託金還付請求権の確認とともに、譲受債権額150万円から供託額を差し引いた金額の支払いを請求した。
 第一審判決は、Aの請負代金債権の現存額は82万9800円であること、それがXとYに二重に譲渡され、対抗関係ではZがXに優先することを認定して、XのYに対する請求を棄却し、ZのXおよびYに対する供託金還付請求権のへ確認請求を認容、ZのYに対する金員の支払請求につき供託額を超える5200円の限度で認容する判決をした(ちなみに、ZのXに対する請求のうち、XのYに対する債権不存在確認は、ZのYに対する債権者であることの積極的確認を求めるべきであるとして棄却している)
 XがY およびZに対して控訴。Yに対しては150万円の支払いを求め、Zに対してはその請求の棄却を求めた。
 控訴審判決:AのYに対する債権は、XとZの間では、Zに優先して譲渡されていることを認定、またYの供託は債務の本旨に従った供託ではない(わずか2分の1を過ぎたものにすぎない)として、第一審判決中、XおよびY敗訴部分を取り消し、XのYに対する150万円の支払い請求を認容、ZのXおよびYに対する請求を棄却した。また控訴審は、第一審判決中のZのYに対する金銭請求を一部認容し、Yに対し5200円の支払を命じた部分も控訴審の審判対象となっている点については、本件のように「当事者の1が他の2者を相手に控訴した時も、他の2者は常に被控訴人に止まるのではなく、ある時点においては控訴人と利害を同じくして他の1に対して対立する関係にあるものは、これに対しては控訴人の地位に立つ。そして、実際に控訴した者、利害を同じくすることによって控訴人の地位に立った者の不服の範囲が控訴審における審判の対象となる」としている。
 Z上告。第一審でZに敗訴したYは控訴していないから、ZとYとの間の参加訴訟は、第一審判決のとおりに確定しており、Xの控訴に基づく控訴審における審判の対象にはならない等と主張した。
 上告棄却。3者において合一にのみ確定すべき場合に当たる・・・(ZのYに対する請求を認容した第一審判決部分は)Xの控訴のみによって遮断され、Yの控訴または附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のために必要な限度で・・Zに不利益に変更することができる」
Rule(法):独立当事者参加とは、当事者の一方に参加する共同訴訟参加と異なり、原告・被告の双方を相手方として、の間の請求と関連する自己の請求を、同時に、かつ矛盾のない審判を求めて参加することをいう(47条)。
Analysis(分析):そうすると、本件のように当事者の一人が控訴することで、控訴ないし附帯控訴していない当事者間の関係にまで、その判断(審判)が及ぶことになるとき、控訴審裁判所は、かかる2者の間の第一審裁判所の判決まで取り消したり、(第一審裁判当事のこられの者の請求を)認容したりすることができるのか、という問題である。
 判例は合一確定のために必要な限度でこれを認められるとしているが、この判断には次のような考慮が働いているものと考えられる。かかる判決をしたところで、独立当事者参加訴訟において、三者は、控訴審において争っており、そのため形式的には争いが存在しない2者関係に影響を及ぼす判断をしたところで、それによって不利益を被る者の手続保障がないがしろにされたことにはならず、むしろ合一確定の目的という独立当事者参加訴訟の本来の目的にそったものとなるので肯認すべきである。
Conclusion(結論):以上の理由を踏まえて判決に賛成

百選判例 118 破棄判決の拘束力
Issue(事件の概要):Xによれば、XはAを代理人として本件土地を買い受けたが、Aは自己名義で契約を結び、登記名義を取得した。Xは、本件土地の所有権確認、Y1からXへの登記移転、Y1Y2Y3移転登記抹消を求めて訴えを提起した。
 Y1らはAが自己のために本件土地を買いうけ、AY1->Y2 ->Y3 と移転したと主張した。
  第二次控訴審。X勝訴。(AはXの代理人。)
  第二次上告審。破棄差戻し。Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者にあたるか否かを審理しなかったのは、審理不尽、理由不備。
  第三次控訴審においてX敗訴。所有権を取得したのはAであり(民法100条)Xに移転する義務を果たさずY1(Aから相続)がY2に移転登記したのは二重譲渡と同じであり、Xは登記なくしてY2,Y3に対抗しえない(177条)。
  X上告。差戻し後の原審は第二次上告審で破棄の理由となった「Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者か否か」を審理すべきところ、まったく別の民法100条を持ち出し、177条の対抗要件の問題として審理判決したのは、破棄判決の拘束力に違反する、と主張した。
 最高裁は上告棄却。上告審判決の判断が差戻しを受けた原裁判所を拘束するのは、破棄の理由となった範囲でのみである。すなわち、同一の確定事実を前提とするかぎり、Y2およびY3が善意であることが認められれば、民法94条2項の類推適用を否定することは許されない、という限度でのみである。
Rule(法):差戻し(移送)を受けた裁判所は、新たな口頭弁論にもとづいて裁判しなければならない。上告審が破棄の理由とした事実上および法律上の判断は、差戻しまたは移送を受けた裁判所を拘束する(325条3項)。判決理由中の判断について生ずる特殊な拘束力である。
 ところで同一の確定事実を前提としながらも、別個の法律的見解が成り立ちうる場合、この新たな法律上の見解に立脚してXの請求を棄却することは許されるかという問題である。
Analysis(分析):破棄判決の拘束力の範囲をどのように考えるかであるが、上告審を判決の統一をその主眼とするものと考えれば、最高裁の判決のような見解も成り立ちうるであろう(上告制度は、法令解釈の統一が重視される)。しかし、三審制の意義をより当事者のためのものとして(当事者は、誤判を防ぎ、より深化した判断の機会を担保されるべきである)と捉えるなら、いったん争点として事実審で確定したものを、破棄差戻し判決によっていたずらに変更すべきではないのではないだろうか。三審制は裁判所のためだけにあるのではあるまい。
Conclusion(結論):最高裁の判決に異議あり。


第26講 再審制度
講義の主題・ポイント:上訴制度との相違との関係で再審事の意義と再審事由を整理する。
キーワード:再審事由
百選119 配布資料
26-1-1 再審
  定義:手続の重大な瑕疵など限られた一定の事由に基づき、確定判決の取消しおよび事件の再審判を求める特別な不服申立方法。
26-1-2 再審事由
  338条1項各号に規定されている。
26-1-3 再審の審判
  訴訟要件:不服の利益を有するのは当事者、その承継人、補助参加の利益を有する者(43条2項45条)。
  同一事件につき、下級審の終局判決と、それに対する上訴を却下または棄却した上級審の終局判決とがともに確定しているときは、個別に再審の対象となるのが原則。ただし、控訴審において控訴棄却の本案判決がなされたときは、事実・法律の両面にわたって控訴審で再審判しているので第一審判決に対して再審の訴えを許す必要はない(338条3項、ちなみに控訴認容のときは、第一審判決は消滅している)
  再審事由を知った日から30日以内に提起。
  不服申立の裁判所の専属管轄。
  却下:不適法な再審の訴え
  適法なとき、再審事由を調査(職権探知主義)、再審請求を棄却しないときは、開始決定--審判のやり直しーーー>原判決を正当と認めるときは、棄却判決、。
  再審請求の終局判決にもその審級に応じた上訴がある。
26-2-1 準再審
  即時抗告できる決定・命令が確定していると、準再審の対象となる。
判例百選119 

判例百選 119 再審の原告適格 
Issue(事件の概要):Yを原告とし訴外Aらを被告とする土地所有権確認等請求訴訟は、最高裁で判決をもって、Aらの敗訴が確定している。同訴訟の上告審係属中に売買契約により、Aから係争地の所有権を取得し移転登記を経たX(原告)が、Yを被告として前記判決につき、判断遺脱を理由に再審を求める本件訴えを提起した。
 最高裁は、Xの原告適格を認めながら、再審事由を欠くとして再審の訴えを却下した:再審の訴えは、判決が確定したのちにその判決の効力を是認するとができない欠缼がある場合に、具体的正義のため法的安定を犠牲にしても、これが取消しを許容しようとする非常手段であるから、右判決の既判力を受ける者に対し、その不利益を免れしめるために、その訴の提起を許すものと解するを相当であり、したがって、民訴法201(新法115条)に規定する承継人は一般承継人たると特定承継人たるとを問わず、再審原告たり得るものといわなければならない。
Rule(法): 訴訟要件:不服の利益を有するのは確定判決の効力が及ぶ者であるから(115条)当事者、その承継人、(補助参加の利益を有する者(43条2項45条))とされているが、承継人の中に特定承継人も含まれるか、という点に関する判断である。
 最高裁は、既判力のを受ける者に対して、その不利益を免れしめるために、その訴の提起を許すものと解している。
Analysis(分析):口頭弁論終結後の一般承継人については、問題がない。特定承継人にも適格があると解するのは、既判力が及ぶからであるが、一般的に口頭弁論終結前に係争物を特定承継すると、不動産であれば、登記によって、優劣が決まる場合が多く、登記まで得ていながら既判力によって不利益が生ずることはまれであろう(おそらくYA間では売買等が無効あるいは、そもそもAには所有権の取得がなかったと解される特殊な事情があったものと推測される)。
Conclusion(結論):判例に賛成

配布資料
支払命令申立書

住所
債権者
住所
債務者

貸金請求事件
請求の金額
ちょう用印紙額

請求の趣旨
債務者は債権者に対し、左記金額を支払えとの支払命令を求める。
1.金OOOO万円
1.金   円 督促手続費用
   内訳
   金   円  本申立て印紙代 
   金   円  送達料
   
請求の原因
  別紙請求の趣旨及び原因記載のとおり


右債権者  申立人(債権者)                    印

○○簡易裁判所御中
by civillawschool | 2006-01-27 12:21
<< 第27講 第28講 14日め 質問などに対する答え その4 >>



解答例

by civillawschool