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大学院民訴レジュメ

10日目 19講20講

10日目
第19講 判決効と手続き保障
講義の主題・ポイント:判決効について主要な判例を学習する
キーワード:遮断効、時的限界、建物買取請求権、取消権
判例百選 86、87、88,96

百選判例 86 既判力の時的限界(1) 取消権
Issue(事件の概要):前訴では、X・Y間の土地売買契約に基づく買主Yによる売主Xに対する所有権確認と所有権登記移転手続請求訴訟が行われ、Yの勝訴が確定している。所有権移転登記も完了した。ところがXはこの売買契約がYの詐欺によるものであると主張し、訴状において取消しの意思表示をし、Yに対して所有権の基づく移転登記の抹消を求める訴えを提起した(本訴)。
 第一審、控訴審ともに既判力に抵触するとして請求棄却、X上告。(取消しの意思表示は遮断効が働かないという趣旨)。
Rule(法):既判力の時的限界は最終の口頭弁論(基準時)までであるから、その後の法律状況の変化にまで裁判所の判断は及ばない。しかし、取消権のように形成権を基準時前においても行使可能であったものを基準時後に行使できるとすることは既判力の遮断効に抵触するようにも考えられる。学説および判例は形成権一般について遮断効が働く、あるいは働かないという判断をせず、それぞれの形成権の実体法的性格や手続の経緯を勘案して形成権行使が期待できたか否かで判断している。
Analysis(分析):基準時以前から取消原因が存在しており、その行使が基準時以前から可能であったなら、それは既判力の遮断効によって遮断されると解すべきである。なお、取消原因が基準時以前から存在していたなら、それは基準時以前の判断に属するから遮断すると説明する学説(伊藤説)@もあるが技巧的すぎるように思われる。むしろ、その行使の期待可能性を勘案しないと、相殺、建物買取請求権などの説明がつかなくなる。
Conclusion(結論):形成権行使が既判力によって遮断されるか否かは基準時以前に行使することが期待できたか否かで決すべし!

@伊藤481頁は「矛盾・抵触する法律効果を基礎づける要件事実の少なくとも一部、すなわち取消原因の存在は基準時以前の事実であるから、その事実の主張は既判力によって遮断される」との記述は、読み方によっては新訴訟物理論を採用しているようにも読めるので注意すること。


百選判例 87 既判力の自的限界(2)----建物買取請求権
Issue(事件の概要):X1は本件土地の賃借人で、X2は転借人でと地上に建物を所有し、Aらに賃貸していた。Yは本件土地の所有者でX1 に対しては賃貸借契約の期間満了を原因として明渡しを、X2に対しては所有権に基づいて建物収去、土地明渡しと地代相当額の損害金の支払を求めて訴えを提起し、勝訴判決が確定した。X1X2は、X2が口頭弁論終結後終結前に借地法4条2項(現行13条1項、3項)による建物買取請求権を行使し、かつ土地はすでにYに明渡したので強制執行は許されないと請求異議の訴えを提起した。
Rule(法):建物買取請求権の行使は既判力によって遮断されないか、という問題である。より敷衍していえば既判力によって形成権の行使は遮断されるか、という問題である。形成権の発生原因が基準時前に存在しているとき、基準事後にその権利を行使することで事実上判決の効力を反故にすることが許される場合はあるであろうか。行使が基準時以降の事実であるなら、許されると解することもできるが、しかし、基準時以前に行使できたにも関わらず、基準時後にこれを行使することは法的安定を著しく害するようにも解される。
 形成権行使が基準時以前に期待できたか、という基準を提唱する説が有力だが、それ以外にも形成権行使の可否を決定する要素を提唱する説がある。たとえば相殺はその担保的機能に着目したとき、遮断を認めることは、この機能(相殺への期待)を理由なく奪うことになって適当でない。取消しについては未成年者による取消しのように、その行使が期待できたか否かによって決すれば足りる。解除権についても、その行使が基準時以前には行使できなかった理由は見当たらない。これに対して建物買取請求権の場合は、相殺と同様、その行使を制限することは本来請求者側が持っている権利を不当に奪うことになるから適当でない。
Analysis(分析):遮断を認めることで不当に形成権を奪うことになるかどうかは、それぞれの形成権の性質によって決せられるべきである。建物買取請求権の行使を基準時以降に認めなければ、かかる権利行使を訴訟継続中にしなければならないことになる。しかし、本来の主張が賃借権の存続であるなら、それに反する主張を予備的ではあるにせよ、期待することは適当でないばかりか、法が建物所有者に与えた権利を理由なく奪うことになるので適当でない。
Conclusion(結論):判例に賛成

百選判例 88 信義則による後訴の遮断  
Issue(事件の概要):X1らはAの相続人であり、Y1らはBの相続人である。AB間で自作農創設特別措置法による買収・売渡処分がなされたころについてX1は、この買収売渡処分は本来無効であるとして、Bより買戻す契約が成立したとして、Bの相続人Y1~Y3へ主位的に所有権移転登記手続きと農地法による許可申請手続きを求め、予備的に買戻し契約無効を理由に不当利得として買戻代金返還の訴えを起こし、主位請求棄却、予備請求認容の判決がおり、Y 1らは買戻代金を返還した。
 その後、今度はX1~X4全員がY1らを相手に買収処分の無効を理由に所有権登記抹消にかかわる移転登記手続きを求めて訴え、第一審はBの取得時効を理由にこれを認めず、Xらは控訴審では、土地返還約束による返還、土地工作物収去,明渡しを求めたが、控訴審は前訴と本訴はほとんど同一の紛争であるとして、1審判決を取り消して訴えを棄却した。Xらが上告。
Rule(法):訴訟上の信義則のひとつとして訴訟上の権能の失効がある。ある法律上の地位を基礎付ける事実について一方当事者がすでに主張・立証を尽くしたか、またはそれを尽くしたと同士されるべき事情があるとき、もはやその地位を主張しないという相手方の信頼が形成され、結果として、かかる信頼を裏切るような行為は信義則違反となるとするものである。
Analysis(分析):本件では、前訴では売渡処分の無効を原因としているので、所有権に基づく登記移転が求められたのに比し、後訴における控訴審では、これに加えて土地返還約束を加えている。また当事者も後訴ではX1以外にX2~X4も加わっている。それゆえ、正確には訴訟物は同一ではない。しかし、①後訴が実質的には前訴の蒸し返しであること、②後訴請求は前訴で容易に主張できたこと、③買収処分後20年という長い年月が経過しているとき、後訴を前訴判決の効力によって遮断することはできないか、という点につき訴訟上の信義則の適用の可否が問題となる。
 相手方の信頼が形成されていると考えてよい事例である。
Conclusion(結論):判決に賛成

百選判例 96 判決の反射的効力
Issue(事件の概要):前訴においてYは亡Aに対して有していた債権150万円(貸与)の返還をAの相続人Bら求めるとともに、Aの連帯保証人X他1名にも支払いを求める訴えを提起した。BらはYの請求原因事実を争ったが、Xはこれを認めたため弁論が分離されXに対しては請求を認容する判決が下され確定した。その後、Bらに対してYの請求を棄却する判決がなされ、控訴審を経て確定した。
 YはXに対する判決にもとづきXの山林の強制競売の申し立てがなされた。これに対してXは請求異議の訴えを提起したのが本件(後訴)である。YB間の確定判決によって主債務の不存在が確定したのだから、連帯保証債務の附従性にもとづいて自己の確定判決の執行力の排除を求めうる、との理由である。第一審X勝訴、原審Xの請求棄却、X上告。上告棄却
Rule(法):反射効とは、当事者間の判決の効力を第三者が援用することを認めたり、当事者が第三者に対して判決の効力を主張できる効力のことをいう。第三者が当事者の一方の勝訴または敗訴を条件として法律行為をなし、債務を負担した場合には、当事者間の判決の結果は、債務の不存在に影響を与えるが、保証債務の附従性のように、主債務の存在を条件として保証人が債務を負担したとき、条件付法律行為がなされていなくても、これと同視して、保証人は主債務についての請求棄却判決を自己に有利に援用できることを認めるべきである、というのが反射効の出発点である。保証債務のほか、民法436条の相殺の絶対効、民訴114条2項による相殺の抗弁について既判力を根拠に連帯債務履行請求判決と他の連帯債務者との間に、反射効を認めるべきであると主張され、賃貸人と賃借人の賃借権確認判決を転貸借の転借人の地位に認めるなど、その領域を拡張してきているが、最高裁は反射効を否定している。
Analysis(分析):反射効を認めることは、判決が第三者にも及ぶことを意味するが、①それが、その判決によって不利益を被る第三者の手続保障と、②判決の効果が拡張することに関する法的明確性(安定性)の要求の観点から考察すべきである。①の点については、本件では、債権者は主たる債務についてすでに敗訴しているのだから、格別不利益はないようにも写る。しかし、債務不存在の判断は保証債務の附従性からその存否に関わる以上、容易に当事者の関与なくしてその債務の不存在を確認すべきではないであろう。また、このような視点に立つとき、反射効を法律上の根拠なくして認めるべきではない。
Conclusion(結論):



第20講 共同訴訟の諸形態
講義の主題・ポイント: 通常共同訴訟、必要的共同訴訟など、共同訴訟の諸形態について理解する
キーワード:固有必要的、類似必要的共同訴訟、合一確定
判例百選 101 

20-1-1共同訴訟とは
 請求の併合(請求の併合については後述)では、同一当事者間で数個の請求が一個の訴訟手続で審判されるが、共同訴訟では、当事者が複数おり、請求も原告被告の当事者間で複数存在する。
 通常共同訴訟は、共同訴訟を要求されている(合一確定の要請がない)わけではなく、それゆえ共同となっても、共同訴訟人独立の原則(各自に管理処分権がある)が働く。
 必要的共同訴訟では、「合一確定の要請」が働くので管理処分権が共同訴訟人間で制限される。しかし、この合一確定の要請は論理上のものではない、と言われている。たとえば連帯保証人と主たる債務者に対する債務の履行請求は別個になされてもよく、別個の判決が出ても矛盾しない(論理上はともかくも)と説明される。
 類似必要的共同訴訟では、固有必要的共同訴訟とは異なり、共同訴訟人の一人の受けた判決の既判力が他の共同訴訟人に及ぶため、判決の効力の衝突を避ける法律的要請のために存在する。それゆえ訴訟の当事者となるか否かの選択権は共同訴訟人にある(当事者にならなければ判決の効力が及ぶことを甘受しなければならない)
 これに対して固有共同訴訟では当事者となることが要請されており、これを拒めば共同訴訟人はこの者も被告として訴えなければならなくなる。
20-1-2 通常共同訴訟の審判
 共同訴訟人独立の原則:共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人一人に対する相手方の訴訟行為、共同訴訟人一人に生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない」(39)
 共同訴訟人に一人の訴訟行為には、処分行為はもちろんのこと、事実の主張、自白、なども含まれる。ただし、共同訴訟にあっては証拠共通の原則があり、共同訴訟人の一人が提出した証拠、または一人に対して提出された証拠は他の共同訴訟人に関連する限りで援用なくして証拠として扱われる。
 共同訴訟人の一人について生じた事由(中断・中止など)は他の訴訟人に影響しない。
 弁論の分離、一部判決も可能である。

20-2-1 共同訴訟人独立と補助参加
 通常共同訴訟では、共同訴訟人独立の原則が働くから、補助参加の申出をしないかぎり、事実の主張などは他の共同訴訟人に援用されない。 
 補助参加とは、他人間に訴訟が係属中であるとき、その訴訟の結果に利害関係を有する第三者が当事者の一方(被参加人)を補助するために訴訟に参加する制度で、被参加人の行為に抵触(矛盾)する行為、不利益となる行為(たとえば自白)をすることはできないし、自己の固有の請求も存在しない。補助参加人のなす行為は被参加人の援用をまたずに被参加人の行為として扱われる。
 例:債権者から連帯保証人(保証人も可)に対する訴えに主債務者が(連帯)保証人に補助参加する。
 補助参加するためには訴訟の結果に対して利害関係が必要であるが、そのこにおける利害関係とは、訴訟の結果に論理先決関係がある場合である。 

20-3-1 訴えの主観的予備的併合と共同訴訟
  訴えの予備的併合とは主請求が認められないときのために予備的請求をなすことをいい、このとき予備的併合の相手が主請求の相手とことなるとき、これを主観的予備的併合とよぶ。たとえば、主請求で契約の相手方本人に契約の履行を求めながら、この契約が代理人を通じてなされていて、無権代理の疑いがあるとき、自称代理人に対して請求(契約の履行ないし損害賠償)をする場合である。また工作物責任(民法717)では、第一次的に占有者、予備的に所有者が訴えの相手方となる。しかし、主観的予備的併合は最高裁の判例によって否定されている。  
 その根拠は予備的な被告の地位の不安定と共同訴訟としてしまうと、予備的当事者の審級の利益が奪われる可能性にあった。
 そこで41条で同時審判申出共同訴訟が立法されたが、ここでは予備的請求が予備的(条件的)地位を持つのでないため、両請求が同時に審判されるのにとどまることになった(当事者はそれぞれにえ対して矛盾する主張を訴訟で展開することになる)。
20-4-1 必要的共同訴訟における共同訴訟人のうちの1人の上訴
  共同訴訟人のうちの1人が上訴すると、合一確定の要請から全員に上訴の効力が及ぶ。上訴が基本的には有利な判決の可能性を含んでいるからである。(ちなみに相手方が上訴するときは当然全員を相手にしなければならない)もっとも類似共同訴訟にあっては、上訴からの離脱を認める最高裁の判例がある。

百選判例 101 通常共同訴訟人独立の原則
Issue(事件の概要):Xは本件土地を訴外2名と共有しており、これをY1に賃貸していた。Y1はこの土地上に建物を建築、所有していたが、競売によりY3が所有するに至った。Y3名義で登記もされている。Y1の子Y2はY2よりこの建物を買戻した(この間、
Y1Y2らはこの建物に居住していた)。XY2間では、Y2が建物を買戻すか建物を収去するまでの間の土地賃料相当分についてはY2が支払うことが約束されていた。
 XはY1Y2Y3を共同被告として、Y1Y2ほか3名に対しては本件建物退去・土地明渡を請求、Y3に対しては賃料相当分の損害賠償支払請求をなした。
 第一審はすべての請求を棄却。X控訴。控訴審はY1Y2に対する控訴を棄却、Y3に対する請求についてはY3がY2に建物を売却するまでの間、本件土地を占有していたことについて争っていないから、(答弁書すら提出されていない)占有権限についてなんら主張立証がなされなかったのであるから、当該期間の占有は不法であり損害賠償義務があると認めながら、Y1およびY2がなした同期間中の賃料弁済の主張はY3にも効力を及ぼすものとして(いわゆる共同訴訟人間の補助参加的関係)、Xもまたこの事実を争わなかったことから自白が認められるとして損害は填補され消滅していると認定、控訴を棄却した。
 X上告。共同訴訟人間の補助参加的関係は代位弁済ないし代理弁済した事実はないから成り立ちようもないので、補助参加的効力を認めた原審の判断は誤っていると主張した。
 最高裁はこの上告を認め破棄差戻した。
Rule(法):通常共同訴訟では、共同訴訟人独立の原則が働くから、補助参加の申出をしないかぎり、事実の主張などは他の共同訴訟人に援用されない。補助参加が認められれば補助参加人のなす行為は被参加人の援用をまたずに被参加人の行為として扱われるが、共同訴訟人間で当然に補助参加の効力が認められるわけではない。
Analysis(分析):共同訴訟人間に共通の利害関係が存在するときには、補助参加的効力を認めるべきである、という主張がある。
 通常共同訴訟にあっては合一確定の要請も存在しないので、本件のような判決をすることになっても形式的には問題はない。しかし、そうなると実際のところ統一的な判決が得られず、一見不都合も発生しそうである。しかし、こうした不都合は事後に行われる不当利得返還請求によって解決されるべき事となる。
 一見すると、共同訴訟人間に補助参加的効力を認めてもよさそうであるが、補助参加するか否かは当事者の処分権の範囲内であるので、これをあえてみなすことは、参加人の行為をいたずらに狭める(参加人は被参加人の主張と矛盾する行為をすることができない)ことになり、参加をいわば強制される者の手続保障の点で問題が残る可能性があるからである。
Conclusion(結論):判例に賛成
by civillawschool | 2006-01-14 22:16
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