大学院民訴レジュメ

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質問などに対する答え その2

① 12月15日のミニテスト、その訂正版および解説は後日、掲載します。
② 係属は気をつけますm(--)m
③ 除斥事由があるのに除斥されないときは、抗告して争います(普通は裁判官が自ら回避します)。除斥は当事者から申立できますから、それが認められなければ抗告すればいいのです。
④ 上田先生の教科書の評価は分かれると思います。個性が強くて、教科書としては危険との判断もなりたちうるのではないでしょうか。ぼくは無難なものを選んだわけです。もちろんみなさんの判断で上田先生のものを使うことを禁じているわけではありません。ぼくは他に縦書きが他の教科書と併用したとき、読みにくいという理由もあり、教科書として薦めていないだけです。評価は本当に難しいですね。むしろ、上田説などについて積極的に発言されてかまいません。こちらも勉強になります。受験生に評判がいいのには、きっとそれなりの理由があると思います。
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by civillawschool | 2005-12-15 12:50

講義概要 (7日め)第13講 第14講 謹賀新年

(7日め)謹賀新年
第13講 口頭弁論とその準備手続
講義の主題・ポイント:①口頭弁論とはどのようなものか、②口頭弁論を活性化させるために法が用意した準備手続は何か。
キーワード:口頭弁論、口頭弁論の準備手続、準備的口頭弁論、弁論準備手続
判例百選 51

講義内容①口頭弁論、②争点整理 
13-1-1必要的口頭弁論
    判決するには必ず口頭弁論を開かなければならない(87Ⅰ)審理を傍聴する人が審理の内容を理解し、裁判官も当事者の主張を理解するには、口頭で述べさせることがよい。
    口頭弁論の原則はⅰ口頭弁論なければ判決なし、ⅱ口頭弁論に現れた主張、証拠のみが裁判の資料となる。
   例外:却下判決のとき、控訴、上告を却下するときなど訴訟要件、控訴要件、手形訴訟における手形訴訟の要件のときは口頭弁論不要、上告審が棄却判決をするときも口頭弁論不要(書面で充分ということ)、ちなみに上告審がそれ以外の判決(破棄自判ないし差戻)の判決をするには口頭弁論を開かなければならない(当事者の意見を聞くため)
    陳述犠牲があるときにも事実上、口頭弁論を開いたとは言いがたい場合もある 
13-1-2任意的口頭弁論
    決定手続の場合は、口頭弁論は必要的でない(迅速処理の要請から)
   審尋:決定手続において口頭弁論に替わるもの。口頭で行われるが公開を要しない。
    当事者や参考人を証拠方法として供述させる方法(証拠調べとしての審尋・187)。
13-1-3口頭弁論の基本構造
    日本は米国のようなadversary systemの伝統がない。対審といっても、反対尋問で、有能な弁護士が証人の証言の矛盾をついて、証人を追い詰めていき真実を白状させるといったことが予定されているわけではないのである。むしろ(そうして米国の多くの州の訴訟制度でもそうであるが)互いに証言台に立つ証人の証言の趣旨は予め知らされており、証言と言っても淡々とすすむ場合がほとんどである。それでも、もちろん反対尋問の権利は保障されなければならない(フランスなど一部の国では、反対尋問をそれほど重視しておらず、その機会の保障についてもあいまいである)。
    しかし、訴訟は相手方の出方でその審議の対象も方向性も変わる。たとえば金銭消費貸借における金銭の支払い(返還)請求のうったにおいて、被告は請求原因を否認することもあれば、これを認めながら弁済や時効の抗弁を申し立てることもあるからである。金銭消費貸借よりも複雑な訴訟になると、①争点を明確にし、②証拠調べはその後に集中することが効率的となる(182)。
    そこで争点整理と集中証拠調べが重要となる。
13-1-4 準備的口頭弁論および弁論準備手続
準備的口頭弁論:口頭弁論を二つの段階にわけて、争点および証拠の整理を行う方式をいう。口頭弁論であるので訴訟行為は制限されない。
弁論準備手続:弁論準備手続は争点および証拠の整理を行うために当事者の意見を聞いて付す(168)。弁論準備手続にも傍聴を許すことができる(169Ⅰ)。当事者が申し出た場合には、手続に支障をきたさない限りにおいて、傍聴を許さなければならない(169Ⅱ)。口頭弁論ではないので、法廷外で実施されるのが通常。文書の証拠調べはできる。電話会議システムを利用することもできる。
13-1-5 争点整理と集中証拠調べ 弁論準備手続を経た場合には、その結果を当事者が口頭弁論で陳述し(173)、弁論準備手続で提出された訴訟資料はすべて口頭弁論でなされたとの擬制がなされる。証明すべき事実が明らかにされる(規則89)。これにより証拠調べに集中できることになる。
13-2-1適宜提出主義と口頭弁論
   法定序列主義、随時提出主義、適宜提出主義
    攻撃防御方法の提出が遅れると訴訟遅延を生じさせるし、そもそも相手方の期待権を侵害することにもなりかねない。しかし、極端な法定序列主義では、最初の準備が大変なばかりか、予想外の進展に柔軟に対処できない。適宜提出主義が現在の考え方。

百選判例 51 弁論の再開   
Issue(事件の概要):AはYに対してなされた不動産の所有権移転登記、抵当権設定登記などが実体上の権利関係に合致していないとして抹消登記を求めて訴えを起こした。これに対してYは、①本件登記はAないしAの養子Xから代理権を受権されたBとの間で締結されたものであり、②仮に①が認められないとしても、AないしXがBにAの実印および権利証を渡していたなどの事実による表見代理を主張、③仮に①、②が認められないとしても、XはBに対して本件不動産の一部をCへ売却する契約の締結および登記手続を委任しており、Bの越権行為があったとしてもYにはBの権限を信ずる正当な事由があった。
 第1審はXの請求に認容。Y控訴
原告A(被控訴人)は口頭弁論終結前に死亡したが、訴訟代理人がいたために手続は中断されず、訴訟承継手続もとられないまま進められ、弁論が終結され、判決言渡し期日が指定された。口頭弁論終結後、被告は原告Aの死亡の事実を知ったことを理由に弁論の再開を求めたが、弁論は再開されなかった。被告上告。
Rule(法):弁論の再開とは、いったん終結した口頭弁論を再開することをいう。裁判所の専権事項とされる。その要件として本件最高裁判決は「弁論を再開して当事者にさらに攻撃防御の機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところであると認められるような特段の事情がある場合」であるとしている。
Analysis(分析):さらに攻撃防御の機会を与える必要が認められるようナ特段の事情とはどんなものであろうか?原告Aの死亡によりXがこれを相続すると、②の主張において、XがBにAの実印および権利証を渡していた事実があるとすれば、それはそのままAの行為と認められる、また③においても、Xの本件不動産の一部の売買契約の事実もまたあるとすれば、それはA自身の行為とみなされることになる。こうした事実が認定される可能性がある場合、いわば判決が覆る可能性があるのだから、弁論を再開することが手続的正義にかなうということである。
Conclusion(結論):判決に賛成


第14講 口頭弁論の実施と訴訟行為
講義の主題・ポイント:訴訟行為概念を私法行為との対比で理解する
キーワード:訴訟行為、信義則、禁反言、時期に遅れた攻撃防御方法
判例百選 52 57

講義内容 口頭弁論における諸概念を正確に理解する。
14-1-1 口頭弁論における当事者の訴訟行為
   申立て:本案の申立ては、判決を求める行為をいい、訴訟上の申立ては、管轄の指定、移送、忌避・除斥、期日指定、証拠の申出、時期に遅れた攻撃防御方法の却下などのように訴訟手続上の事項について裁判所に対してするもの。
裁判資料提出行為(主張・立証):法律上の主張とは、要件事実に対する法規の適用の効果、つまり法の効果(権利の発生・消滅・変更)を主張することを意味する。
 裁判所もまた法の解釈について独自の見解をもつことがあり、釈明権の行使などを通じて、法的観点は三者の間で形成されていくべきもの。
    事実上の主張とは、要件事実に該当する事実や関連する事実(主要事実ないし間接事実)を裁判所に報告する当事者の陳述のこと。本人陳述は証人の証言に類するもの(証人の証言よりは信憑性が低い扱い)で、事実上の主張ではないことに注意。相手方の対応は、否認、不知、沈黙、自白に区分される。すべて事実に関する主張である。他に、自白しておきながら抗弁することもある。仮定的主張もできる。所有権を争っているとき、所有権の譲渡による取得が認められないときは、時効取得を主張する場合がそれ(ただし、これは法律上の主張の場合が多い)。
    相殺の抗弁もほとんどは仮定的抗弁として提出される。
    立証は裁判所に証拠を提出する行為である。
14-1-2 訴訟行為については自白が撤回に対して制限されているが、その他に訴訟行為には条件をつけることには問題がある場合が多い(例外が仮定的抗弁など)。手続の不安定をもたらすからである。
 特殊な問題   
14-2-1 形成権の訴訟上の行使
     取消権、解除権、相殺権など実体法上の形成権が訴訟上行使されるとどうなるであろうか? 
     実体法上の権利行使を訴訟上行使するとき、これは実体法上の効果をそのまま認めてよいのか、それとも両者(実体法上の形成権行使と訴訟行為としての行為)
    は、併存しながら別個の扱いなのかという問題が生ずる。具体的には、①実体法上の形成権行使には条件をつけられないが、訴訟行為ではたとえば相殺の抗弁など、予備的に提出する場合がるが、かような仮定的主張をどのように扱うのか、②相手方不在廷のときに行使しても効果が発生するか、③訴訟代理には形成権行使の代理権も含まれるのか、④形成権行使の意思表示の瑕疵は訴訟行為に影響を与えるか、⑤訴えの取下げや、攻撃防御方法の却下などの原因によって訴訟行為としての効果が失われたとき、なお形成権行使の効果は残るのか。
     新併存説は、両者の併存を認めながら、訴訟行為が効力を失えば、私法上の行為は撤回されたものとみる。この説が多数説であり、優れている(私見)。
14-2-2 訴訟上の合意
     管轄の合意、不起訴の合意、訴え取下げの合意、訴訟上の和解、証拠契約などについては、私法契約説と訴訟契約説に見解が対立している。後者が多数説である。両者の性質が並存していると考えられるから、形成権のところでの新併存説の考え方でよい。
14-3-1 訴訟行為と信義則
 そもそも訴訟行為に民法などの実体法の規定の適用はかのうであろうか?
     意思表示としての性質をもつ訴訟行為について、意思表示の瑕疵に関する私法上の規定は適用可能であろうか?たとえば訴訟上の和解(267)に強迫、詐欺、錯誤などがあったとしてこの無効を争えるかという問題がまずある。通説はこれを否定的に考える。①手続の安定を害する、②意思の瑕疵については338条1項3号および5号の再審事由を類推適用して無効とすることができる、という。
     しかし、常に刑事上罰すべき他人の行為が介在するとは限らないので、私法規定の適用の可能性を残すべきだとの説もある。特に錯誤。
    訴訟行為に対する信義則は上記のものとは若干性格を異にする。民法1条2項の信義則、3項の権利の濫用とは異なり、当事者の訴訟行為は相手方とともに裁判所をも名宛人としている。それは、訴訟では互いに相手の攻撃防御方法の提出の機会を保障しながら、裁判所も適正かつ迅速な訴訟資料の形成を当事者の協力の基に形成していくものであるから、二当事者間での権利の行使や義務の履行における信義誠実義務とは局面を異にするといえなくもない。事実、民事訴訟法2条の信義誠実訴訟追行義務としてこのことを明確化している。
     具体的には申立権の濫用や、訴訟上の禁反言などがこれにあたる。

百選判例 52 攻撃防御方法の提出と信義則 
Issue(事件の概要):XはYに対して、売買契約の無効を主張するとともに、仮定的に訴訟上同売買契約を取り消すとの意思表示をし、交付した手付金、内金などの返還を求める訴えを提起した。さらにこの訴訟の口頭弁論期日に売買契約を解除する意思表示をした。Yは売買代金の残額等の支払いを請求する反訴を提起した。ところがXは審理が継続中に、Xが主張していた売買契約の無効、取消し、解除の主張を撤回し、反訴請求原因事実を認め、Yが請求する代金残額などを供託し、目的物の引渡しと所有権移転登記手続きを求める再反訴提起した。これに対してYは反訴請求を放棄し、Xの売買契約の取消し、解除を抗弁事実として主張した。
Rule(法):攻撃防御方法の提出時期については法定序列主義、随時提出主義から適時提出主義へとその根本思想が変遷している。現在は、訴訟の進行状況に応じて適宜提出しなければならない、とする考えが採用されるようになった(156条)。この適宜提出の担保のために、①争点整理手続、集中証拠調べなどの特別な制度を選択することができ、ここでは攻撃防御方法の提出期間が設定されうるとし、②控訴審でも攻撃防御方法の提出の期間を設定することができ、③時機に遅れた攻撃防御方法は、却下も可能とした(157条1項)。④釈明に応じない攻撃防御方法は却下されうるし(157条2項)、準備手続を経た場合は、準備手続に提出せずして口頭弁論に提出するときは、相手方の求めによりにその理由を書面で説明しなければならない、などの担保を設けている。
Analysis(分析):攻撃防御方法の提出時期の極端な序列づけは、当事者の攻撃防御の機会を奪うことになって手続的正義にも反するが、かといってまったく制限しなければいたずらに訴訟を遅延させる目的、駆け引き、不意打ちなどによって、攻撃防御の方法を濫用するなどの弊害が生じる。この濫用を差し止める法理として訴訟上の信義則の適用が認められるかである。攻撃防御方法の提出は本来当事者の権利であるが、それを、訴訟を遅延させる目的で提出したり、当初の訴訟(反訴)の目的と矛盾する行動をとることを禁ずるものである。
訴訟中に下落していた土地の価格が高騰し、土地の押し付け合いが取り合いに転じたケースなどで見られるこのような事態では、どちらに軍配をあげてもよさそうであるが、処分権主義の下、請求の放棄や認諾を禁ずることはできない。攻撃防御は自己の主張を正当化するためのものであり、その提出は任意であっても、これを自在に創造できるものではない。相手方が訴訟上のした解除や取消しを、相手方が請求を変えたにもかかわらず、抗弁事実として提出することは、時宜を逸すれば却下されるべきであろう。
Conclusion(結論):判決に賛成。

百選判例 57 当事者からの主張の要否(3)
Issue(事件の概要):XはY1の先代Aから当該不動産(山林)を購入したが、Xが代金を支払ったにもかかわらず、AもY1も登記移転に応じようとしない。Y2はXに以前より恨みをもち、Xを困らせる意思で上記事実をしりながらY1へその山林を売却するように懇請、Y1も結局この要請に応じた。Xは処分禁止の仮処分を申立て、Y2はY1より預かっていた委任状、印鑑などを悪用してY1の名でこの仮処分の取消しを申立て、認められる。さらにY2はY3のために抵当権を設定(Y2はY3に対して金銭消費貸借上の債務があった)。Xの申立てにより処分禁止の仮処分の取消しの取消しが判決される。Y2Y3は山林の横領容疑で刑事訴追を受けている。
 XはY1に対する請求に加えて、Y2に対しては所有権移転登記抹消、Y3に対しては抵当権設定登記の抹消を求めた。
 X勝訴。原審はY1Y2間の売買は公序良俗違反で無効と判示した。
 Y1Y2上告。原審は当事者の主張しない公序良俗を認定したのは弁論主義に反していると主張した。
Rule(法):弁論主義とは裁判の資料を当事者の提出した事実・証拠に限るとする建前のことをいい、ここでは公序良俗違反は事実に属するもので、それゆえ当事者の提出なくして訴訟上審理の対象とできないのか、というのが争点である。公序良俗違反も、無効をきたすものであり、それに該当する主要事実があるはずであり、その主張・提出は当事者の権能ではないのか、という問題である。
Analysis(分析):事実の提出は当事者の権能だが、その評価は裁判所によってなされるものであるから、公序良俗の要件に該当する事実が提出されているなら、裁判所は当事者の主張を待たずに公序良俗違反を認定することができると解すべきであろう。弁論主義は主張責任(裁判で採用されるのは当事者が主張している法的構成でなければならない、との思想)までも包摂するものではない。ただ、法的構成については当事者の主張なしに裁判所は認定なしうるとすると、当事者が予想もしない法的構成で不意打ちに近い訴訟審理がなされてしまう。攻撃防御方法にも弁論主義の制約に準じた扱いが必要であろう。
Conclusion(結論):原審は釈明権を行使して公序良俗違反の主張をまって判決すべきであったのであり、これをなさなかったことに法令違法があるから、破棄差戻しすべきであった。


冬休みレポート課題解説

(7日め終了)
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by civillawschool | 2005-12-14 11:51

質問などに対する答え

①授業時間については、ごめんなさい。11:45までですね。間違ってました。もう少しゆっくり話せますね。休憩時間については、それぞれの単元が長かったり、短かったりなので、必ず10:00からというわけにはいきませんが、でもそもそも10:00からというのを知りませんでしたので、これは言い訳でしたね。
②判例百選15はそもそも固有必要的共同訴訟ではないか、という指摘、おっしゃるとおりです。しかし、百選も当事者適格にはこれが適当と選んで載せているわけで、それでこの判例を紹介しているわけです。固有必要的共同訴訟については、後で取り上げますが、だいぶ後です。当事者適格で適当な判例がなく(百選もそれでこれを取り上げたという事情)をわかってください。ただ、その点に触れなかったのは、私のミスといえばミスですが、固有必要的共同的訴訟を紹介するとなるとシラバスからはづれると思い、触れませんでした。
③新訴訟物理論はわが国では採用されていませんが、請求原因の書き方は社会生活上の地位について書かれることになると思います。事実上あまり変わりません。ただ、これこれの権利があるといった表現がへるかもしれませんね。法律構成の判断は、裁判所と両当事者の協議の中で(協同作業)の中で生まれてくるのですから。
④ブログにある百選関連のIRAC方式が大体授業でのものに該当します。以前に作ったもので、この授業用ではないです。でも、ほとんど重複しています。
⑤訴訟無能力者の追認の問題ですが、おっしゃるとおり民法の追認とは若干ニュアンスが違います。無能力者と分かれば、裁判所は法定代理人や本人に追認のことを尋ねることになると思います。
⑥新訴訟物理論でも訴状などの記載は変わりません。先ほども申しましたように請求原因に記載されたことがらに限定されないということになるので、口頭弁論の中で明らかになっていくことが請求原因ということにもなります。日本ではこれを嫌ったのでしょうね。でも、釈明権の行使などで、請求原因が変わることはありますから(百選60)、日本でもそれほど不都合はないといえるのでhがないでしょうか。この百選60では、売買の保証人に対する保証債務の請求が、裁判所の釈明で請負の当事者に対する請求に代わっています(ちなみに原告・被告)に変わりはありませんよ!すごいですよね~  どういう事案かは、このブログにも出ていますが、ざっと説明すると、最初被告から頼まれて被告の名前で木箱を作ってAさんという人に納入していたんだけれど、このAさんが代金を払わないので、依頼主のYさんに保証人だろうということで訴えをおこしたんですけれど、裁判官が本当はXY間で木箱を作ってAさんのところへ納入するという約束なら、注文者はYで、それは木箱を作って納入するから請負でしょう、と言ったというものです。興味があったら読んでみてください。
 ブログがあけられないという人が感想でそう書いてました。誰か助けてあげてください。
⑥法律の勉強が、まったくの初めてで大変ということについて:おっしゃるとおり大変だと思います。でも、法科大学院は大変ということは聞いて入学したのだと思います。まったくはじめてだと、授業の準備に授業時間の3倍から4倍くらいの時間が必要です。9時間から12時間、月火水、または木金土勉強しないとね。私の計算だと、教科書ならメモをとりながらだと1頁5分から15分くらいかかります。1時間平均5頁、12時間あれば60頁のメモがとれます。もっとも判例があるので現実には50頁くらいですかね。これが全部で14回ですから700頁、だいたい教科書読み終わりますよ。成功すれば大きな満足と社会的な評価がついてくるのだから、逆に言えば簡単には、そういうものは与えてくれないということです。
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by civillawschool | 2005-12-12 16:28

講義概要 (6日め)第11講 第12講

(6日め)
第11講 口頭弁論における基本原則 
講義の主題・ポイント:手続進行における裁判所と当事者の関係について理解する
キーワード:職権進行主義、当事者権、当事者主義、弁論主義、期日、呼出

講義内容 訴訟手続の進行
11-1-1手続進行における立法の系譜
    職権進行主義と当事者主義(弁論主義)の対立
    ドイツでは職権進行主義が基本であったが、フランス法の影響を受けて当事者主義的訴訟運営が導入されるようになる。しかし、極端な当事者主義、特に訴訟の進行については、当事者主義を排除しないと、訴訟の遅延をもたらすという弊害が指摘され訴訟の運営について、攻撃防御方法の提出については、随時提出を制限し、時期に遅れた攻撃防御などについて制限することが認められるようになる。しかし、原則としての弁論主義は  堅持され、進行面においてのみ裁判所の権限を拡大する方向での解決が図られている。
   さらに近年の民事訴訟法の改正で口頭弁論の準備のための制度が立法・強化されている。
11-1-2 訴訟の進行
 職権進行主義:訴訟手続の進行の主導権を、裁判所に認める主義。  
     期日の指定および呼出しがその主たる内容
 期日の指定は裁判所が職権で、当事者もこれを促すことができる(93Ⅰ)。指定した期日に当事者や参加人に知らせて出頭を要求することを呼出しという。
裁判所が期間を指定することもある。たとえば答弁書の提出を期間を定めて求める。上告理由書提出期間。

11-2-1 訴訟における当事者権 
    職権進行主義を認める一方で、訴訟における当事者の権能にも注目しなければならない。そこには、当事者が裁判所に対して申立(これを申立権と表現することもあるが、あくまで裁判所の権能の発動を促すにすぎない)ものと、訴訟の相手方に対して要求しているものがある。前者には、期日の指定の申立県(93Ⅰ)、期日の呼出しを受ける権利(94)、求問権(149Ⅲ)、責問権(90)、訴訟記録閲覧権(91)などがある。後者には、当事者紹介件(163)、説明要求件(167、174、178)などがある。


11-2-2 責問権
相手方の法規に違反する行為ないし方式違背を裁判所も看過しているとき、                                     あるいは裁判所自身が法規・方式違背をしているとき、これを修正するように促す行為を責問権の行使という。訴訟手続における異議の申立てである。もっともこの責問権は行使しないと、放棄したものとみなされる。

11-2-3求問権 
相手方の陳述や証明活動の趣旨が不明なとき、当事者は裁判長を通じて一               種の釈明を行使してもらう権利のことをいう(149Ⅲ)。

11-2-4 釈明権の位置
真実発見のためか、当事者主義の修正か。
真実義務(法規なし)
自己の認識に反してまで虚偽の事実・証拠を提出してはならないとする倫理的義務?
11-2-5不意打ちの禁止
積極的釈明や職権探知のもとで、当事者が予測しない事態を防止するために認められる法理

第12講 審理手続と資料収集原則
講義の主題・ポイント:弁論主義と証拠収集手続の関係を理解する
キーワード:弁論主義、弁論主義の三つのテーゼ、主要事実、間接事実、補強事実
判例百選 60,64
講義内容 
12-1-1裁判資料の収集
 弁論主義があてはまる。
  弁論主義の3つのテーゼ ①裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の資料としてはならない。②裁判所は、当事者間で争いのない事実(自白)はそのまま裁判の資料としなければならない。③当事者間で争いのある事実を証拠によって認定するには、必ず当事者の申し出た証拠によらなければならない。これらの事実は主要事実にかぎる。
  弁論主義の根拠については、争いがある。
   本質説は、私的自治の訴訟における貫徹を軸にその論拠を主張する。
   手段説は、真実発見の手段として弁論主義が優れている、ないしは、優れていなくとも、真実発見の手段として弁論主義を採用することが経済的にも、当事者間の衡平の観点から通常はよいとし、それゆえ情報偏在型訴訟にあっては、その修正も許容する。

12-1-2訴訟における事実の分類
主要事実
 間接事実
 補助事実
12-1-3 抽象的要件事実と要証事実
不法行為における要件事実「過失」に該当する主要事実はなにか?
過失についての主観説なら『心のたるみ』:これをどう証明するのか
       客観説なら「通常人ならなさないような行為」:これをどう証明するのか
交通事故にあっては、スピード違反、酒酔い、などなどが主要事実という主張もある。
抽象的要件事実における主要事実は何か。

百選判例 60 裁判所の釈明権
Issue(事件の概要):第一審における請求原因は、Xは、木箱の納入についてY1から替わって欲しい旨の依頼を受けて訴外Aとの間で売買契約を締結し、Aに木箱を納入した。ただ、Y1より表面的にはXがY1名義で納入にしてほしいと頼まれ、またY1Y2(Y1の代表取締役)が連帯保証すると約束した。XはAに対して売買代金残金を請求。
 第一審は、XとAとの間の売買契約の存在を認めなかった(Aに対する請求棄却)が、Y1,Y2に対する請求は認容した。Y1Y2が控訴した。
 原審裁判所の釈明権行使によりXは請求原因を次のように変更した:XはY1の依頼によりY1が代金を払うからということで(Y2はその債務を保障した)、Aへ木箱を納入した。
 原審は新たな証拠調べをすることなく結審し、Y1Y2の控訴を棄却した。
 Y1Y2上告。控訴審において、裁判所が示唆、Xがそのとおりである、とのみ述べただけの釈明権の行使は著しく公平を欠き、釈明権の範囲を逸脱しているとして主張した。
Rule(法):裁判所は、訴訟関係を明瞭にするために事実上および法律上の事項に関して当事者に問を発し、または立証を促すことができる。この権能のことを釈明権という。裁判所は申立てに対する審判の義務を負っており、そのために訴訟関係が明瞭であることが必要であるから、そのために当事者の権能である処分行為や、証拠の提出についての弁論主義に配慮しつつ、正義の実現と真実の発見のために、当事者に事実や証拠の提出を促すことができると説明される。
Analysis(分析):請求原因の変更を促すような釈明権の行使は、それによって一方当事者の請求が認容されることになり、当事者の一方に肩入れするものとなるから、認められないのではないか、という疑問が呈されている。
 しかし、真実発見と正義の実現もまた訴訟の社会的機能であると解する近年の潮流(協同主義的訴訟観)からは、積極的釈明権行使もまた認められると解されている。そもそも釈明によって当事者もまた裁判所とともに可能な法律構成や事実について検討する機会を共有するのである。
Conclusion(結論):釈明権は当事者の一方に対して発せられるものではあるが、それは口頭弁論において、すなわち相手方当事者の参加の下になされるわけであるから、相手方に対する不意打ちにはならない。釈明権を行使しないことによって生ずる不正義、真実が発見されないということによる社会的影響を考えると、本件における釈明権の行使は認められるべきである。最高裁判決に賛成。





百選判例 64 自白の撤回の要件 
Issue(事件の概要):X はYに対して米穀取引所における仲介にかかる証拠金の返還および利益金の支払いを求める訴えを提起したが、YはYが売買の委託を受けたことをいったんは自白したが、後にこれはXと訴外Aとの間に結ばれたもので、YはAに仲介営業の権利を賃貸したにすぎないと主張するようになった。原審は、自白は錯誤によるものとして撤回を認め、Y勝訴。Xが上告。
Rule(法):自白された事実は証明する必要がないことについては、争いがない。弁論主義の3つのテーゼを構成し、また179条もそのように規定している。自白の撤回は原則として許されない。それは、相手方の期待権・利益保護および公的保護の点からは争点整理をいたずらに混乱させないためである。それゆえ、次の三つの場合には撤回が認められるのである。①相手方の同意、②自白が相手方または第三者による刑事上罰すべき行為によってなされた場合、③錯誤によってなされた場合。自白が当事者の自由意思による訴訟行為であるなら、錯誤があれば撤回を認めるべきである。
 問題は錯誤によることを如何に認定すべきかである。
Analysis(分析):訴訟上なされた自白が錯誤による場合があることは考えられるであろうか?反事実の証明があれば、錯誤があった推定してよいか、という問題である。いったん自白しても、それが事実に反するとの証拠が出てくれば、撤回を認めるのであれば、自白の撤回は当事者の意思表示の瑕疵ではなく、反事実の証明を要件とすべきではないだろうか?相手方の期待権、争点整理などを反故にしても与えられる強い保護の根拠として果たして錯誤を根拠としてよいものだろうか?
 判決が反事実の証明を錯誤による撤回の要件としたのは、①錯誤といっても訴訟上の好意の錯誤である以上、裁判官の在廷のもとでなされた行為の撤回は容易に認定すべきでない。②反事実の証明があれば、自白の撤回を認めないことによる混乱(裁判所および当事者に対する拘束)という消極的理由からである。
Conclusion(結論):判例に賛成
(6日目終了)
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by civillawschool | 2005-12-11 16:02

講義概要 (5日め)第9講 第10講

(5日め)
第9講 当事者論と訴訟形態
講義の主題・ポイント:法人の内部紛争の当事者をどのように決定するか等を問うことによって、当事者論の応用的展開を考える。
キーワード:原告適格、法人、内部紛争、共同訴訟参加、株主総会
判例百選111

講義内容
9-1-1共同訴訟参加とは、参加の一種であるが、判決の効力が参加人に直截に及びうるような場合をいう。その要件は、①合一確定の必要性があること、②当事者適格があること、の二つである。 
9-1-2当事者適格とは(おさらい):当事者適格とは、訴訟の主体となる資格(特定の請求について当事者として訴訟を追行し、本案判決をもとめる資格)をいう。
9-1-3株主総会決議取消と対世効:合一確定の必要のある事件は必要的共同訴訟による。必要的共同訴訟には固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟がある。
    固有必要的共同訴訟:共有関係
    類似必要的共同訴訟:株主総会決議取消 

百選判例 111 共同訴訟参加と当事者適格 
Issue(事件の概要):株主XらはY会社を相手に取締役および監査役選任に関する決議をした株主総会の招集手続に瑕疵があったとして、その取消しを求めて提訴した。Y会社は請求棄却の申立をしたが、しかし、Xらの主張事実をすべて認めて争わない。当該総会で取締役(の1人)に選任されたZはY会社側に参加する旨の申立をした。Zはすでに取締役を辞任している。Zははじめ株主の側に参加すると主張したが、撤回し、共同訴訟参加(現行52条)による参加を主張した。第一審裁判所は参加の申立を却下した。判決はXの請求認容であった。
 Zのみ控訴。控訴理由は決議取消判決には対世効があるから、決議の対象となった当時の取締役や監査役も被告にしなければ、会社が馴れ合い訴訟するとき、これらの者の権利が不当に害される。会社と当該役員らを共同被告とすべき必要的共同訴訟であり、Zのした共同訴訟参加は認められるべきである。控訴棄却。
Rule(法):訴訟の目的が当事者の一方と第三者について合一に確定すべき場合には、第三者は、共同訴訟人として訴訟に参加できるとするのが、52条の共同訴訟参加の趣旨である。訴訟追行権は、当事者と参加人それぞれに独立に行使しうることが前提である。類似必要的共同訴訟である。参加人たる第三者は、判決の拡張を受け、かつ独立の当事者適格を有する者である。補助参加ではあるが、請求の主体となる者であるので、当事者の地位を持っている。
Analysis(分析):第三者が共同訴訟参加できるための要件は①合一確定の必要性があること、②当事者適格があること、の二つであり、本件では当事者適格が問題となる。Zは独立に被告たりうる資格があるか、という問題である。
 株主総会の決議取消に訴えは、法人が被告となることについては、多くの支持がある。法人の意思の決定を争う以上、その主体たる法人が被告たるべきだからである。第三者を当事者としてしまうと、判決の効力が法人に及ばないので、結局、第三者は当事者にも参加もできないということになる。取締役に選任されたものが、その利益を争えないのは矛盾するようであるが、選任によって取締役がうる利益は、あくまで選任の結果である以上、選任の有効・無効の争いにまで当事者となることはできないと解すべきであろう。
Conclusion(結論):判例に賛成




(5日目後半)
第10講 訴訟要件と訴えの利益
講義の主題・ポイント:訴訟要件の内容とその欠如の効果について理解を深める。訴訟要件、訴えと請求、訴訟手続の進行
キーワード:訴訟要件、訴えの利益、
判例百選 訴えの利益27,36

講義内容
10-1-1訴訟要件とは
    定義:本案判決をするための必要な要件のことをいう。
この要件が充足していないと訴えは却下される。要件は大きく三つに分類される。①裁判所に関するもの、②当事者に関するもの、③訴訟物にかんするもの
①はⅰ管轄およびⅱ裁判権(請求および当事者がわが国の裁判権に属するか?)  
     ②ⅰ当事者が実在すること、ⅱ当事者が当事者能力を有すること、ⅲ訴訟能力があるか、代理人がいる場合には代理権があること、ⅳ訴えの提起、訴状送達が有効なこと、ⅴ原告が訴訟費用の担保を提供しているか(76)またはその必要のないこと
     ③ⅰ同一事件について他に訴訟継続がないこと(142重複起訴の禁止)、ⅱ再訴の禁止に抵触しないこと、ⅲ併合の訴えまたは訴訟中の訴えについては、必要な要件を具備していること(38,143など)、ⅳ訴えの利益があること
10-1-2訴えの利益とは
   定義:民事裁判を利用するのに必然的に備わっていなければならない「正当な利益ないし必要性」のことをいう*。
おさらい 第6講
 訴訟要件とは:裁判所が本案判決をするための要件、訴えの利益が訴訟要件に入る理由は、訴えが訴訟になじむかどうかの判断は当事者でなく裁判所にまかされる。例:原告と被告が出会ったのは0月0日である」ことを確認せよ、には訴えの利益がない。
訴えの利益とは:争訟性と権利保護の利益(当事者適格)からなる。
 争訟性とは、①訴訟物が当事者間の具体的権利義務、法律関係とみなされること(住職などの宗教上の地位の確認はだめ)
       ②訴訟物についての攻撃防御方法が法令の適用に適するもの(宗教上の教義の解釈に関する争いはだめ)

* 訴えの利益はかって訴権の要件として訴権論の中で論じられてきた。訴権論では訴権は訴訟要件の重要な部分を占め、訴えの利益は本案の審理・判決をするための要件で、この存在があることが確認されれば、本案判決の要件が具備するという構成のなかで解されてきた。それゆえ、訴えの利益がないときは、却下判決をするのか請求棄却判決をするのかで、学説・判例などにおいて見解が対立していた。訴権について権利保護請求権説では、訴えの利益がなければ請求棄却判決をとるべきとされ、判例の中にもこれに従うものがあった。

具体的事案で考えてみよう。

百選判例 27 給付の訴え      
Issue(事件の概要):本来Xが建築した本件建物の所有権登記がY1、Y2、Y3と移転している場合において、Xがこれらの者を共同被告として、これらの登記の抹消を求めて訴えを提起した場合において、裁判所がY3については善意であったとして、94条2項の類推適用により、請求を棄却した。そこでY1およびY2はXによるY1Y2への登記抹消請求は無意味になったのだから実施上、訴えの利益を欠くとして上告した。
Rule(法):訴えの利益については、まず主体に関する利益に関するものと客体についての利益に別れ、さらに後者は、客観的一般的要件と個別の類型における要件に議論が分かれている。まず、客観的一般要件から見ていこう。
 ①請求が具体的な権利関係その他の法律関係の存否の主張であること、たんなる事実の存否の確認は対象にならないし、住職である地位の確認は法律関係以外の社会関係ゆえ、対象とならない(もっとも、住職の地位が権利義務に密接に関わるときは別)などなど、②起訴が禁止されていないこと、③当事者間に訴訟を利用しないという特約がないこと、④その他、起訴の障害となる事由(訴えが権利の濫用となる場合など)。
 個別類型における要件:現在の給付の訴え:訴えの利益が現存しなければならない。
Analysis(分析):問題は、給付判決を得ても、その給付の実現が法律上または事実上不可能あるいは著しく困難なとき、これを訴えの利益なしとして扱うのかそれとも、訴えの利益を肯認するのか、である。現実の利益を直ちに得ることはできなくとも、かかる不履行の責を判決は確認する意味(確認判決的意味合い)からこれを肯定的に捉えることには、それ以上の意味があるであろうか。まず、これを否定すると理由はともあれ、原告の権利が確認されない。次に、訴提起当時には原告の請求はどこまで認められるか分からないから、Y1,Y2に対する請求を最初に認定することも訴訟上は起こりうるし、和解や請求の認諾も当事者の処分権であることに鑑みると、周囲の状況の変化によって訴えの利益を左右することは適当ではない(法的安定に資するものではない)という判断は正しい。
Conclusion(結論):判決に賛成





百選判例 36 株主総会決議取消しの訴え   
Issue(事件の概要):株主総会決議による取消しの訴えが、起こされたが、控訴審において控訴審裁判所は、当該株主総会の当時選任された役員がすでに全員任期満了退任しているので、訴えの利益を認めず、訴えを却下したため、原告によって上告がなされた。
Rule(法):まず株主総会決議取消しの訴えが形成の訴えであることを確認しておく。形成の訴えは、その主体や要件が法律で個別的に定められているのが原則である。その場合、訴えの要件を満たしていれば問題ないのだが、訴訟前、または訴訟継続中に事情が変化して形成の必要がなくなるとき、これを訴えの利益なしとして扱うか否かが問題となる。①原告の実現しようとしていた実質的目的が、形成判決によってはもはや実現しないとき、特段の事情がないかぎり、訴えの利益は失われたとする。たとえばメーデーのためのデモの不許可に対する取消訴訟はメーデー(5月1日)経過とともに失われる、②原告の実質的目的が事実関係の変動によって実現してしまっても、訴えの利益は失われる。たとえば重婚を原因とする後婚の取消訴訟中に、後婚が離婚によって解消されてしまえば訴えの利益は失われる。
瑕疵有る決議により選任された役員がその在任中の行為について責任を追及することは出来ないという場合には、訴えの利益を否定すべきものとなる、との考え方がある一方、個々の不正に対する追求は可能だから遡及効があるからといって訴えの利益を否定すべきではない、との見解もある。さらに決議取消しの訴えは、会社運営の適法性を確保するものであり、実質的利益を判断の基準とすべきではない、との見解もある。
Analysis(分析):決議取消の形成訴訟の存在意義をどこに見出すか、の問題である。私見では、対世効を持つこうした訴訟では、裁判所の判断の社会的意義を重視すべきである。すなわち、実質的利益ではなく、決議の取消を認めるか否かで、会社運営の適法性が確定することに意義があるのだから、退任によってこれを否定すべきではない。
Conclusion(結論):裁判所の判断に反対


(5日め終了)
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by civillawschool | 2005-12-10 10:00

講義概要 7,8講 四日目

(4日め)
第7講 訴訟提起の効果
講義の主題・ポイント:訴訟係属の意義と訴訟係属の効果を、実体法的並びに手続法的に整理する。 
キーワード:二重起訴の禁止、時効中断、
判例百選46

講義の内容
7-1-1 訴え提起の効果 
    原告が訴状を裁判所に提出:原告と裁判所間で訴訟法律関係が成立
    裁判所が訴状を審査し、副本を被告に送付(送達):原告、被告、裁判所の三者間で訴訟関係が成立
    三者の関係が成立すると訴訟継続という。
    訴訟継続によって、訴訟参加、訴訟の引受け、訴訟告知などにおいての条件(訴訟継続)が満たされ、関連裁判積や二重起訴の禁止、時効の中断などの効果が発生する。
7-1-2 二重起訴の禁止
    定義:同一当事者間で訴訟が継続しているとき、同一訴訟物または、この訴訟物と密接に関連する訴訟物について当事者が重ねて本案の審理を求めることを禁じる原則のこと。
    制度趣旨:裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避ける
 二重起訴の要件①「重ねて」の意味は、裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避けるためであるから、継続中の訴訟手続において反訴を提起したり、訴えを追加的に変更することは二重起訴の禁止の原則に触れない。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおけるこの債権の履行を求める給付の訴えを反訴することは認められる。
   ②訴訟物が同じ、または密接に関連していることの意味
         訴訟物が同一であることに問題はないであろう。訴訟物は請求の趣旨と請求の原因によって特定される。審判の対象は請求の趣旨が同じでなくとも、近似する場合がある。たとえば所有権の確認と所有権にもとづく引渡し請求や、登記請求である。

③当事者が同一であることとは。
被告・原告が入れ替わっても当事者は同一といわれる。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおける被告が、この債権の履行を求める給付の訴えを、別訴で提起することは認められない。


7-1-3 二重起訴の禁止と相殺の抗弁
   訴訟物たる債権を自動債権として予備的に抗弁する場合、自動債権はすでに訴訟における審判の対象となっているが、それがもうひとつの訴訟において被告として予備的抗弁として提出した場合は、訴訟物は同一とまでは言えないのではないか(却下すべきでない)。しかしそれ以外の場合は二重起訴禁止として扱う。

               
7-2-1時効の中断  訴えの提起は、権利行使の方法であるから、時効は中断する。   百選判例 46 一部請求における残部債権による相殺   
Issue(事件の概要):YはXに対してXの違法な仮処分申請によって、本件建物の持分を通常の価格より低い価格で売却することを余儀なくされたとの理由で、通常価格との差額2億5000万円余が損害であると主張し、その一部である4000万円を請求した。他方XはYに対してYが支払うべき相続税などを立て替えて支払ったとして、Yに対して不当利得を理由として、1296万円の返還を求める訴え(以下本件訴訟という)を提起した。本件訴訟において、不当利得返還義務の存否を争うとともに、予備的に別件でYがXに対して起こしている訴訟における損害額(2億5600万円)のうち4000万円の請求を越えた部分(2億2000万余)および上記違法仮処分に対する異議申立手続の弁護士費用、遅延損害金の合計を自動債権とする相殺を主張した。
 第一審は相殺の抗弁を認めて請求棄却、原審は相殺の抗弁を認めなかったためXが上告した。
Rule(法):すでに継続中の別訴において訴訟物となっている債権を自動債権として他の訴訟において相殺の抗弁をすることは許されない(最判判例:重複起訴の禁止:民訴142条)。その理由として①争点が同じでるから重複心理を余儀なくされ、②異なる判断が下される恐れがあるからである。逆に継続中の訴訟において相殺の抗弁をしている自動債権を別訴において訴求することができるかについては争いがある。
 次に一部請求が許されるか、という問題であるが、債権の一部であることを明示して請求することは、処分権主義の立場からは認められてよさそうである。しかし、訴訟物をこの一部として扱うと、残部請求については別訴で争いうるから、事実上の矛盾判決が生ずるおそれがあり、また訴訟経済上も重複審理という点で好ましくないとの批判がある。そこで債権全体を訴訟物とみるという見解も主張されている。判例は明示的に分断されていれば、それぞれが訴訟物であるとの立場をとっている。
Analysis(分析):本件ではすでに継続している訴訟では、債権の一部請求をしており、その残部を自動債権として相殺の抗弁をなした、というものであるから、従来の判例理論からは矛盾しないこととなる。しかし、実質上、重複審理をすることを認めることになるので、裁判所は、この問題を相殺の抗弁を主張する当事者に負担をかけるべきでない、との視点から救済している。いわく、「相殺の抗弁に関しては、訴えの提起とは異なり、相手方の提起を契機として防御の手段として提出されるものであり、・・・一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなどの特段の事情の存在する場合を除いて、正当な防衛権の行使として許容されるものと解すべきである。」としている。
 相殺の抗弁を「防衛権の行使」として捉えるのは、相殺に担保的機能を認めているからであり、かかる機能を剥奪すべきでないとの配慮を、一部請求外の部分での債権について認めた判断は妥当なものといえよう。

Conclusion(結論):判決に賛成




(4日目後半)   
第8講 訴訟費用 補講 裁判官の忌避・除斥
講義の主題・ポイント:訴訟費用について、その機能を理解する。補講として裁判官の忌避・除斥について学習する
キーワード:訴訟費用、忌避、除斥
配布資料(法と経済学)参照

講義内容
8-1-1 訴訟費用
      訴額と訴訟費用
      期待利益の理論
      期待利益と訴訟件数
8-2-1 忌避・除斥
      除斥:たとえば当事者が裁判官の配偶者、あるいは配偶者であった者であるとき、その裁判官はその職務から排除されるというように、23条の除斥事由に該当すると裁判官は職務の執行から排除される。公正さを担保するために定型的事由を集めて規定したもの。
       定義:特定の事由に該当する裁判官は職務の執行から排除される。
       制度趣旨:裁判の公正を担保
       排除の裁判は申立または職権でする。
       6号後段の「前審に関与」の意味:当該事件についての直接の下級審裁判のみならず、間接の下級審裁判も含まれると解されているが、その意味は、上告審からみて第一審裁判が間接であり、控訴審が直接という意味である。中間判決も含まれる。
        同一訴訟手続でないものは直接・間接のいずれにも含まれない。たとえば、再審申立手続における確定判決は同一手続ではないので除斥に当たらない し、請求異議訴訟における債務名義たる裁判、本案訴訟における仮差押さえ・仮処分命令・異議申し立て後の通常訴訟手続における手形・小切手判決など。いずれも予断のおそれがないわけではないが、手続的に同一でないから前審ではない、ということで当たらないとしている。再戻や移送判決の場合、原審の同じ裁判官、あるいは受移送裁判官が前と同じであるのは予断のおそれがあると考えたためであろう、排除を規定している(325条4項)。
         裁判官の移動なので判決文を読み上げるだけの裁判官はこの除斥に該当しない。準備手続、証拠調べ、訴訟指揮のみについての関与もこれに当たらないとするのが判例の態度(伊藤教科書75頁注109)であるが、疑問である(山口見解)
         除斥事由があると通常、裁判官は自ら監督裁判所の許可を得て回避する。
         除斥事由のある裁判官が裁判を行うと無効となり、絶対的上告理由である。
      忌避:
定義:当事者の申立によって、公正な裁判を担保するために一定の事由の存在する裁判官を職務執行から排除する制度
        制度趣旨:公正を担保するために当事者からの申立を認めたもの
         忌避事由については裁判の公正を妨げるべき事情としかなく、具体的規定がない(24条)。裁判官と当事者の友好的あるいは敵対的関係がこれにあたると説明されている。忌避に当たらないとされた事由を覚えておくしかない。ⅰ当事者の一方が裁判官と別訴において対立当事者である。ⅱ裁判官が一方当事者の訴訟代理人の女婿である。ⅲ国家賠償事件の裁判官が法務局訟務部付検事だったことがあり、国の代理人となったことがある。 
          裁判官の訴訟指揮は、忌避にあたらない(判例)。
        忌避申立権は、忌避原因を知らなかった場合を除いて、弁論または弁論の準備手続の中で申述を行うと失われる。決定の形式でその裁判所の合議体が行う。口頭弁論は開かないが、関係人を審尋することはできる。却下には即時抗告ができるが、忌避を認めた決定に対して不服申立てはできない。

ミニテスト 択一10問

(4日目終了)
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by civillawschool | 2005-12-07 20:30

IRAC方式による判例百選 その4

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 60 裁判所の釈明権
Issue(事件の概要):第一審における請求原因は、Xは、木箱の納入についてY1から替わって欲しい旨の依頼を受けて訴外Aとの間で売買契約を締結し、Aに木箱を納入した。ただ、Y1より表面的にはXがY1名義で納入にしてほしいと頼まれ、またY1Y2(Y1の代表取締役)が連帯保証すると約束した。XはAに対して売買代金残金を請求。
 第一審は、XとAとの間の売買契約の存在を認めなかった(Aに対する請求棄却)が、Y1,Y2に対する請求は認容した。Y1Y2が控訴した。
 原審裁判所の釈明権行使によりXは請求原因を次のように変更した:XはY1の依頼によりY1が代金を払うからということで(Y2はその債務を保障した)、Aへ木箱を納入した。
 原審は新たな証拠調べをすることなく結審し、Y1Y2の控訴を棄却した。
 Y1Y2上告。控訴審において、裁判所が示唆、Xがそのとおりである、とのみ述べただけの釈明権の行使は著しく公平を欠き、釈明権の範囲を逸脱しているとして主張した。
Rule(法):裁判所は、訴訟関係を明瞭にするために事実上および法律上の事項に関して当事者に問を発し、または立証を促すことができる。この権能のことを釈明権という。裁判所は申立てに対する審判の義務を負っており、そのために訴訟関係が明瞭であることが必要であるから、そのために当事者の権能である処分行為や、証拠の提出についての弁論主義に配慮しつつ、正義の実現と真実の発見のために、当事者に事実や証拠の提出を促すことができると説明される。
Analysis(分析):請求原因の変更を促すような釈明権の行使は、それによって一方当事者の請求が認容されることになり、当事者の一方に肩入れするものとなるから、認められないのではないか、という疑問が呈されている。
 しかし、真実発見と正義の実現もまた訴訟の社会的機能であると解する近年の潮流(協同主義的訴訟観)からは、積極的釈明権行使もまた認められると解されている。そもそも釈明によって当事者もまた裁判所とともに可能な法律構成や事実について検討する機会を共有するのである。
Conclusion(結論):釈明権は当事者の一方に対して発せられるものではあるが、それは口頭弁論において、すなわち相手方当事者の参加の下になされるわけであるから、相手方に対する不意打ちにはならない。釈明権を行使しないことによって生ずる不正義、真実が発見されないということによる社会的影響を考えると、本件における釈明権の行使は認められるべきである。最高裁判決に賛成。




民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               
百選判例 64 自白の撤回の要件 
Issue(事件の概要):X はYに対して米穀取引所における仲介にかかる証拠金の返還および利益金の支払いを求める訴えを提起したが、YはYが売買の委託を受けたことをいったんは自白したが、後にこれはXと訴外Aとの間に結ばれたもので、YはAに仲介営業の権利を賃貸したにすぎないと主張するようになった。原審は、自白は錯誤によるものとして撤回を認め、Y勝訴。Xが上告。
Rule(法):自白された事実は証明する必要がないことについては、争いがない。弁論主義の3つのテーゼを構成し、また179条もそのように規定している。自白の撤回は原則として許されない。それは、相手方の期待権・利益保護および公的保護の点からは争点整理をいたずらに混乱させないためである。それゆえ、次の三つの場合には撤回が認められるのである。①相手方の同意、②自白が相手方または第三者による刑事上罰すべき行為によってなされた場合、③錯誤によってなされた場合。自白が当事者の自由意思による訴訟行為であるなら、錯誤があれば撤回を認めるべきである。
 問題は錯誤によることを如何に認定すべきかである。
Analysis(分析):訴訟上なされた自白が錯誤による場合があることは考えられるであろうか?反事実の証明があれば、錯誤があった推定してよいか、という問題である。いったん自白しても、それが事実に反するとの証拠が出てくれば、撤回を認めるのであれば、自白の撤回は当事者の意思表示の瑕疵ではなく、反事実の証明を要件とすべきではないだろうか?相手方の期待権、争点整理などを反故にしても与えられる強い保護の根拠として果たして錯誤を根拠としてよいものだろうか?
 判決が反事実の証明を錯誤による撤回の要件としたのは、①錯誤といっても訴訟上の好意の錯誤である以上、裁判官の在廷のもとでなされた行為の撤回は容易に認定すべきでない。②反事実の証明があれば、自白の撤回を認めないことによる混乱(裁判所および当事者に対する拘束)という消極的理由からである。
Conclusion(結論):判例に賛成



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 65 訴訟上の証明――ルンバール事件――
Issue(事件の概要):原告はルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)の施術を受けたところ、15分ないし20分後突然嘔吐、けいれんの発作などを起こし、右半身けいれん性不全麻痺、性格障害、知能障害および運動障害を生じ、後遺症として知能障害、運動障害などを残した。
 問題はルンバールの施術と障害の因果関係であった。
Rule(法):証明における証明度(心証)をいかなるものとして捉えるかについては、少なくとも科学的因果関係の証明については、判例はこの事件を契機に確定したといってよい。事実に関する高度の蓋然性とは、結局のところ「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。」
Analysis(分析):証明度はその要求を高度にすればするほど証明が困難となり、被害者が救済されないばかりか、社会的正義が実現されないことになる。しかし、だからといって証明のハードルを低くすれば、裁判所の認定作業に対する社会の信頼は失墜するかもしれない。被告と原告の主張を比較して、その優劣で決する(証拠の優越のルール)という主張が近年有力に主張されてきている。これに対して従来の通説は厳密な証明(合理人が疑いを差し挟む余地のない証明)を要求しており、本判決はいわばその中間点をとったものと評価されている。少なくとも科学的因果関係の証明にあっては、100%の証明は現実的ではなく、その意味では妥当な解決であったと評価されよう。
Conclusion(結論):判例に賛成



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 74 証明責任の転換――証明妨害
Issue(事件の概要):Xが保険会社Yに対して訴外AがXの自動車を使用中に起こした事故の車両保険金の支払いを求めて本訴を提起した。これに対してYはXが分割保険料の不払いがあり、支払う義務はないと主張した。
 これに対してXは事故当日の夕刻(事故は深夜に起こっている)未払い保険料の支払いは済ませていると主張、ただ代理店が領収書に期日を入れなかったのであり、保険金支払いを拒絶することは信義則に反すると主張した。領収書に日付を入れないことは、証明妨害にあたるであろうか?証明妨害は証明責任を転換するかが争われた。
Rule(法): 証明責任の転換とは、分配された証明責任とは逆の(反対の)相手方に証明責任を負わせることをいい、法律の規定や特別の場合に認められる。証明妨害とは、相手方が証明責任を負っている場合に、その相手方に有利となる証拠を破棄・隠匿などすることで証明を困難にする行為をいう。証明妨害があったとき、証明責任を転換するかどうかには、見解が対立している。訴訟上の信義則から①事実があったと犠牲するか、②証明妨害の程度に応じて、事実があったと犠牲するか、③挙証義務者の証明度を軽減するか、④証明責任を転換する、などが主張されている。
Analysis(分析):証明責任の転換を含めたこれらの主張は、信義則違反に対するサンクションなのか、それとも、事実の推定なのかについても見解が分かれているが、故意、過失で証明を妨害したとき、経験則からして、かかる事実があったと推定でき、あるいは証明を軽減すると解すべきであろう。訴訟上のサンクションという考え方はわが国にはなく、また訴訟を真実の発見と正義の実現のためであると考えるとき、事実の犠牲と捉えることは適当でなく、証明妨害から推定される事実が何かを考えるべきであろう。
Conclusion(結論):判決に賛成(ちなみにこの事件については控訴され東京高裁がすでに判決を出している:東京高判平3.1.30判時1381.49)



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               
百選判例 76 証言拒絶事由(1)---技術または職業の秘密 
Issue(事件の概要):Xは電話機器類を購入し利用していたが、たびたび通話不能になるなどと主張してY(NTT)に対して不法行為に基づく損害賠償を請求した。
 この控訴審においてXは、Yとその取次店との取次店契約書(①)(これはYが売主であることを証明するため)、本件機器の瑕疵などを立証するためであるとして、本件機器の回路図および、信号流れ図(②)の文書提出命令の申立てをした。 
 原審は文書①は、証拠調べの必要を欠く、文書②は製造したメーカーのノウハウなどの技術上の情報が含まれているから民事訴訟法220条4号ロ(現行法はハ)に該当する、またもっぱら所持者の利用に供するための文書(現行法220条ニ)にも該当するとして申立てを却下した。X抗告
Rule(法):民事訴訟法197条1項3号は技術または職業の秘密に関する事項は、証言を拒むことができる旨が規定されている。公開によって当該技術を基礎とする利潤追求活動やその他の社会活動が不可能または困難になるものは、保護しようという趣旨である。民事訴訟法202条2号ハも197条1項3号などの文書については文書提出義務の対象からはずしている。問題は、こうした文書提出義務の除外に該当することをどの程度証明したら、こうした保護を受けることができるか、その要件事実をめぐる解釈である。
 技術上の情報(技術または職業上の秘密に関する事項をいかこのように省略する)が含まれている事実を詳細に要求すると、技術上の情報などを開示することになり、立法の趣旨にそぐわないのではないか、という主張も一方にはあり、他方、技術上の情報であることの立証なくして保護を求めることはできない、という主張がある。
Analysis(分析):情報の種類、性質、開示されることによる不利益を具体的に主張する必要はあるし、かかる主張を要求したところで秘密そのものの開示にはならないから、開示者の不利益にはならないであろう、という中間的立場があり、それが適当であると考える。 
Conclusion(結論):最高裁決定に賛成



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 82 診療録の証拠保全の要件
Issue(事件の概要):Xが精神不安定のためにY経営の精神病院に入院したところ、以前から痙攣発作を起こすことがあり、他の病院で治療を受けてはいたが、入院後2週間ほどで面会したところ、歩行ができず、言葉もほとんどわからない状態となっていた。副医院長にXの治療法や病状悪化の理由について再三問い合わせたが、詳しい状況を説明せず、逆に家族を叱りつけた。看護婦も「早く連れて帰ってよい病院へいれてあげてください」といった。しかし、退院も許可されなかったが、帰宅が許可されたときに、そのまま退院手続をした。退院後訴外病院でCT検査の結果、著名な小脳萎縮がみられ、精神安定剤、抗てんかん剤の多量使用の副作用が歩行困難、発語障害の原因と診断された。
 そこで、原告は損害賠償の準備にかかり、診療録などの証拠保全を申し立てたが認められず(「証拠の破棄、改竄、偽造などの恐れありと認めるにたる客観的事実の主張・疎明」がない)、疎明資料を追加した再度の申立ても却下されたため、X抗告。
Rule(法):証拠保全にはその事由の疎明が必要であるが、具体的にはどの程度の疎明が必要かについては見解が対立している。証拠保全は、本来は証拠調べまで待っていたのでは、証拠の利用が不可能または困難になるおそれがあるとき、当該訴訟手続の外で証拠調べを行い、その結果を確保しておくことをいう(234条以下)。しかし、現代型訴訟と呼ばれる、医療過誤、公害訴訟、薬害、製造物責任訴訟などにおいては、相手方に対する証拠開示の目的で相手方が保有する証拠を予め開示させる手段として使われている。そこで証拠保全を本来の証拠の改ざんの恐れなどに限定すべきかどうかで見解が分かれているわけである。証拠保全の制度を証拠開示として利用することを正面から認める見解は疎明の必要性を強調することに否定的である。
Analysis(分析):法規(234条)は疎明を要件としているので、問題はその解釈である。疎明は証明と比べ、厳密な証明を必要としない。そこで自己に不利益な証拠はすべて改ざんの恐れがあるとして、証拠保全における疎明理由となるであろうか?決定は、それでは不十分であるとしている。しかし、十分な説明をしない、矛盾した説明、責任回避的態度などで足りるとしているので、事実上証拠開示的機能は守られているといってよいであろう。
Conclusion(結論):最高裁の決定に賛成



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 83 損害賠償請求訴訟の訴訟物
Issue(事件の概要):交通事故の損害賠償において慰謝料(200万円)、療養費(29万円余)の全額と逸失利益の一部(150万円)を請求したところ、第一審は療養費、慰謝料については全額を認定、逸失利益については916万余の損害の発生を認め、この合計から3割の過失相殺をし、さらに支払済み保険金10万円を差し引いた791万円余を認定、Xの請求の範囲内であるとしてXの請求の全額を認容した。
 Yの控訴に伴い、X付帯控訴。逸失利益の総額を916万円余、療養費(29万円余)、慰謝料(200万円)の合計1145万円余損害額の合計であると主張を改め、この額から過失相殺3割を差し引いた801万円余がYの債務総額であると主張し、第一審判決との差額422万円余の支払いを請求した。
 控訴審はXの主張どおり療養費と逸失利益全額を認定し、過失割合を7割とし、慰謝料は70万円と認定して、支払い済み保険金10万円を差し引いた343万円余をYの債務総額と認定、第一審判決を変更した。付帯控訴における請求拡張部分は棄却した。
 Yは、慰謝料と逸失利益は訴訟物が異なるから、逸失利益の一部150万円を請求したXに対して、事実上この部分の請求額を超えて、慰謝料認定額の不足部分を補う形で請求金額を認定することはできないと主張して上告。
Rule(法):訴訟物とは、原告の訴え、具体的には訴状の請求の趣旨および原因によって特定され、裁判所の審判の対象となる権利関係を指す。訴訟物が特定されることで、二重起訴の禁止、訴えの変更、請求の併合、再訴の禁止、既判力の客観的範囲などが決定される。
Analysis(分析):損害賠償請求訴訟の訴訟物は、一個、すなわち損害賠償そのものが訴訟物であって、その内容を構成する療養費、慰謝料、逸失利益といったものは、訴訟物の構成要素ではあっても、訴訟物そのものではないと考えるのか、それとも療養費、慰謝料、逸失利益はそれぞれ訴訟物を構成するか、という問題である。訴訟物が特定されることで二重起訴の禁止、訴えの変更、請求の併合、再訴の禁止、既判力などが確定されることを考えると、ここでは、少なくとも交通事故にあっては、それを一個のものと考えるのが妥当である。
Conclusion(結論):判決に賛成

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               
百選判例 86 既判力の時的限界(1) 取消権
Issue(事件の概要):前訴では、X・Y間の土地売買契約に基づく買主Yによる売主Xに対する所有権確認と所有権登記移転手続請求訴訟が行われ、Yの勝訴が確定している。所有権移転登記も完了した。ところがXはこの売買契約がYの詐欺によるものであると主張し、訴状において取消しの意思表示をし、Yに対して所有権の基づく移転登記の抹消を求める訴えを提起した(本訴)。
 第一審、控訴審ともに既判力に抵触するとして請求棄却、X上告。(取消しの意思表示は遮断効が働かないという趣旨)。
Rule(法):既判力の時的限界は最終の口頭弁論(基準時)までであるから、その後の法律状況の変化にまで裁判所の判断は及ばない。しかし、取消権のように形成権を基準時前においても行使可能であったものを基準時後に行使できるとすることは既判力の遮断効に抵触するようにも考えられる。学説および判例は形成権一般について遮断効が働く、あるいは働かないという判断をせず、それぞれの形成権の実体法的性格や手続の経緯を勘案して形成権行使が期待できたか否かで判断している。
Analysis(分析):基準時以前から取消原因が存在しており、その行使が基準時以前から可能であったなら、それは既判力の遮断効によって遮断されると解すべきである。なお、取消原因が基準時以前から存在していたなら、それは基準時以前の判断に属するから遮断すると説明する学説(伊藤説)@もあるが技巧的すぎるように思われる。むしろ、その行使の期待可能性を勘案しないと、相殺、建物買取請求権などの説明がつかなくなる。
Conclusion(結論):形成権行使が既判力によって遮断されるか否かは基準時以前に行使することが期待できたか否かで決すべし!

@伊藤481頁は「矛盾・抵触する法律効果を基礎づける要件事実の少なくとも一部、すなわち取消原因の存在は基準時以前の事実であるから、その事実の主張は既判力によって遮断される」との記述は、読み方によっては新訴訟物理論を採用しているようにも読めるので注意すること。

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名
百選判例 87 既判力の自的限界(2)----建物買取請求権
Issue(事件の概要):X1は本件土地の賃借人で、X2は転借人でと地上に建物を所有し、Aらに賃貸していた。Yは本件土地の所有者でX1 に対しては賃貸借契約の期間満了を原因として明渡しを、X2に対しては所有権に基づいて建物収去、土地明渡しと地代相当額の損害金の支払を求めて訴えを提起し、勝訴判決が確定した。X1X2は、X2が口頭弁論終結後終結前に借地法4条2項(現行13条1項、3項)による建物買取請求権を行使し、かつ土地はすでにYに明渡したので強制執行は許されないと請求異議の訴えを提起した。
Rule(法):建物買取請求権の行使は既判力によって遮断されないか、という問題である。より敷衍していえば既判力によって形成権の行使は遮断されるか、という問題である。形成権の発生原因が基準時前に存在しているとき、基準事後にその権利を行使することで事実上判決の効力を反故にすることが許される場合はあるであろうか。行使が基準時以降の事実であるなら、許されると解することもできるが、しかし、基準時以前に行使できたにも関わらず、基準時後にこれを行使することは法的安定を著しく害するようにも解される。
 形成権行使が基準時以前に期待できたか、という基準を提唱する説が有力だが、それ以外にも形成権行使の可否を決定する要素を提唱する説がある。たとえば相殺はその担保的機能に着目したとき、遮断を認めることは、この機能(相殺への期待)を理由なく奪うことになって適当でない。取消しについては未成年者による取消しのように、その行使が期待できたか否かによって決すれば足りる。解除権についても、その行使が基準時以前には行使できなかった理由は見当たらない。これに対して建物買取請求権の場合は、相殺と同様、その行使を制限することは本来請求者側が持っている権利を不当に奪うことになるから適当でない。
Analysis(分析):遮断を認めることで不当に形成権を奪うことになるかどうかは、それぞれの形成権の性質によって決せられるべきである。建物買取請求権の行使を基準時以降に認めなければ、かかる権利行使を訴訟継続中にしなければならないことになる。しかし、本来の主張が賃借権の存続であるなら、それに反する主張を予備的ではあるにせよ、期待することは適当でないばかりか、法が建物所有者に与えた権利を理由なく奪うことになるので適当でない。
Conclusion(結論):判例に賛成



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 88 信義則による後訴の遮断  
Issue(事件の概要):X1らはAの相続人であり、Y1らはBの相続人である。AB間で自作農創設特別措置法による買収・売渡処分がなされたころについてX1は、この買収売渡処分は本来無効であるとして、Bより買戻す契約が成立したとして、Bの相続人Y1~Y3へ主位的に所有権移転登記手続きと農地法による許可申請手続きを求め、予備的に買戻し契約無効を理由に不当利得として買戻代金返還の訴えを起こし、主位請求棄却、予備請求認容の判決がおり、Y 1らは買戻代金を返還した。
 その後、今度はX1~X4全員がY1らを相手に買収処分の無効を理由に所有権登記抹消にかかわる移転登記手続きを求めて訴え、第一審はBの取得時効を理由にこれを認めず、Xらは控訴審では、土地返還約束による返還、土地工作物収去,明渡しを求めたが、控訴審は前訴と本訴はほとんど同一の紛争であるとして、1審判決を取り消して訴えを棄却した。Xらが上告。
Rule(法):訴訟上の信義則のひとつとして訴訟上の権能の失効がある。ある法律上の地位を基礎付ける事実について一方当事者がすでに主張・立証を尽くしたか、またはそれを尽くしたと同士されるべき事情があるとき、もはやその地位を主張しないという相手方の信頼が形成され、結果として、かかる信頼を裏切るような行為は信義則違反となるとするものである。
Analysis(分析):本件では、前訴では売渡処分の無効を原因としているので、所有権に基づく登記移転が求められたのに比し、後訴における控訴審では、これに加えて土地返還約束を加えている。また当事者も後訴ではX1以外にX2~X4も加わっている。それゆえ、正確には訴訟物は同一ではない。しかし、①後訴が実質的には前訴の蒸し返しであること、②後訴請求は前訴で容易に主張できたこと、③買収処分後20年という長い年月が経過しているとき、後訴を前訴判決の効力によって遮断することはできないか、という点につき訴訟上の信義則の適用の可否が問題となる。
 相手方の信頼が形成されていると考えてよい事例である。
Conclusion(結論):判決に賛成
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by civillawschool | 2005-12-05 00:50

IRAC方式による判例百選 その3

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 51 弁論の再開   
Issue(事件の概要):AはYに対してなされた不動産の所有権移転登記、抵当権設定登記などが実体上の権利関係に合致していないとして抹消登記を求めて訴えを起こした。これに対してYは、①本件登記はAないしAの養子Xから代理権を受権されたBとの間で締結されたものであり、②仮に①が認められないとしても、AないしXがBにAの実印および権利証を渡していたなどの事実による表見代理を主張、③仮に①、②が認められないとしても、XはBに対して本件不動産の一部をCへ売却する契約の締結および登記手続を委任しており、Bの越権行為があったとしてもYにはBの権限を信ずる正当な事由があった。
 第1審はXの請求に認容。Y控訴
原告A(被控訴人)は口頭弁論終結前に死亡したが、訴訟代理人がいたために手続は中断されず、訴訟承継手続もとられないまま進められ、弁論が終結され、判決言渡し期日が指定された。口頭弁論終結後、被告は原告Aの死亡の事実を知ったことを理由に弁論の再開を求めたが、弁論は再開されなかった。被告上告。
Rule(法):弁論の再開とは、いったん終結した口頭弁論を再開することをいう。裁判所の専権事項とされる。その要件として本件最高裁判決は「弁論を再開して当事者にさらに攻撃防御の機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところであると認められるような特段の事情がある場合」であるとしている。
Analysis(分析):さらに攻撃防御の機会を与える必要が認められるようナ特段の事情とはどんなものであろうか?原告Aの死亡によりXがこれを相続すると、②の主張において、XがBにAの実印および権利証を渡していた事実があるとすれば、それはそのままAの行為と認められる、また③においても、Xの本件不動産の一部の売買契約の事実もまたあるとすれば、それはA自身の行為とみなされることになる。こうした事実が認定される可能性がある場合、いわば判決が覆る可能性があるのだから、弁論を再開することが手続的正義にかなうということである。
Conclusion(結論):判決に賛成


民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 52 攻撃防御方法の提出と信義則 
Issue(事件の概要):XはYに対して、売買契約の無効を主張するとともに、仮定的に訴訟上同売買契約を取り消すとの意思表示をし、交付した手付金、内金などの返還を求める訴えを提起した。さらにこの訴訟の口頭弁論期日に売買契約を解除する意思表示をした。Yは売買代金の残額等の支払いを請求する反訴を提起した。ところがXは審理が継続中に、Xが主張していた売買契約の無効、取消し、解除の主張を撤回し、反訴請求原因事実を認め、Yが請求する代金残額などを供託し、目的物の引渡しと所有権移転登記手続きを求める再反訴提起した。これに対してYは反訴請求を放棄し、Xの売買契約の取消し、解除を抗弁事実として主張した。
Rule(法):攻撃防御方法の提出時期については法定序列主義、随時提出主義から適時提出主義へとその根本思想が変遷している。現在は、訴訟の進行状況に応じて適宜提出しなければならない、とする考えが採用されるようになった(156条)。この適宜提出の担保のために、①争点整理手続、集中証拠調べなどの特別な制度を選択することができ、ここでは攻撃防御方法の提出期間が設定されうるとし、②控訴審でも攻撃防御方法の提出の期間を設定することができ、③時機に遅れた攻撃防御方法は、却下も可能とした(157条1項)。④釈明に応じない攻撃防御方法は却下されうるし(157条2項)、準備手続を経た場合は、準備手続に提出せずして口頭弁論に提出するときは、相手方の求めによりにその理由を書面で説明しなければならない、などの担保を設けている。
Analysis(分析):攻撃防御方法の提出時期の極端な序列づけは、当事者の攻撃防御の機会を奪うことになって手続的正義にも反するが、かといってまったく制限しなければいたずらに訴訟を遅延させる目的、駆け引き、不意打ちなどによって、攻撃防御の方法を濫用するなどの弊害が生じる。この濫用を差し止める法理として訴訟上の信義則の適用が認められるかである。攻撃防御方法の提出は本来当事者の権利であるが、それを、訴訟を遅延させる目的で提出したり、当初の訴訟(反訴)の目的と矛盾する行動をとることを禁ずるものである。
訴訟中に下落していた土地の価格が高騰し、土地の押し付け合いが取り合いに転じたケースなどで見られるこのような事態では、どちらに軍配をあげてもよさそうであるが、処分権主義の下、請求の放棄や認諾を禁ずることはできない。攻撃防御は自己の主張を正当化するためのものであり、その提出は任意であっても、これを自在に創造できるものではない。相手方が訴訟上のした解除や取消しを、相手方が請求を変えたにもかかわらず、抗弁事実として提出することは、時宜を逸すれば却下されるべきであろう。
Conclusion(結論):判決に賛成。



民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 57 当事者からの主張の要否(3)
Issue(事件の概要):XはY1の先代Aから当該不動産(山林)を購入したが、Xが代金を支払ったにもかかわらず、AもY1も登記移転に応じようとしない。Y2はXに以前より恨みをもち、Xを困らせる意思で上記事実をしりながらY1へその山林を売却するように懇請、Y1も結局この要請に応じた。Xは処分禁止の仮処分を申立て、Y2はY1より預かっていた委任状、印鑑などを悪用してY1の名でこの仮処分の取消しを申立て、認められる。さらにY2はY3のために抵当権を設定(Y2はY3に対して金銭消費貸借上の債務があった)。Xの申立てにより処分禁止の仮処分の取消しの取消しが判決される。Y2Y3は山林の横領容疑で刑事訴追を受けている。
 XはY1に対する請求に加えて、Y2に対しては所有権移転登記抹消、Y3に対しては抵当権設定登記の抹消を求めた。
 X勝訴。原審はY1Y2間の売買は公序良俗違反で無効と判示した。
 Y1Y2上告。原審は当事者の主張しない公序良俗を認定したのは弁論主義に反していると主張した。
Rule(法):弁論主義とは裁判の資料を当事者の提出した事実・証拠に限るとする建前のことをいい、ここでは公序良俗違反は事実に属するもので、それゆえ当事者の提出なくして訴訟上審理の対象とできないのか、というのが争点である。公序良俗違反も、無効をきたすものであり、それに該当する主要事実があるはずであり、その主張・提出は当事者の権能ではないのか、という問題である。
Analysis(分析):事実の提出は当事者の権能だが、その評価は裁判所によってなされるものであるから、公序良俗の要件に該当する事実が提出されているなら、裁判所は当事者の主張を待たずに公序良俗違反を認定することができると解すべきであろう。弁論主義は主張責任(裁判で採用されるのは当事者が主張している法的構成でなければならない、との思想)までも包摂するものではない。ただ、法的構成については当事者の主張なしに裁判所は認定なしうるとすると、当事者が予想もしない法的構成で不意打ちに近い訴訟審理がなされてしまう。攻撃防御方法にも弁論主義の制約に準じた扱いが必要であろう。
Conclusion(結論):原審は釈明権を行使して公序良俗違反の主張をまって判決すべきであったのであり、これをなさなかったことに法令違法があるから、破棄差戻しすべきであった。
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by civillawschool | 2005-12-05 00:47

IRAC方式による判例百選 その2

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 27 給付の訴え      
Issue(事件の概要):本来Xが建築した本件建物の所有権登記がY1、Y2、Y3と移転している場合において、Xがこれらの者を共同被告として、これらの登記の抹消を求めて訴えを提起した場合において、裁判所がY3については善意であったとして、94条2項の類推適用により、請求を棄却した。そこでY1およびY2はXによるY1Y2への登記抹消請求は無意味になったのだから実施上、訴えの利益を欠くとして上告した。
Rule(法):訴えの利益については、まず主体に関する利益に関するものと客体についての利益に別れ、さらに後者は、客観的一般的要件と個別の類型における要件に議論が分かれている。まず、客観的一般要件から見ていこう。
 ①請求が具体的な権利関係その他の法律関係の存否の主張であること、たんなる事実の存否の確認は対象にならないし、住職である地位の確認は法律関係以外の社会関係ゆえ、対象とならない(もっとも、住職の地位が権利義務に密接に関わるときは別)などなど、②起訴が禁止されていないこと、③当事者間に訴訟を利用しないという特約がないこと、④その他、起訴の障害となる事由(訴えが権利の濫用となる場合など)。
 個別類型における要件:現在の給付の訴え:訴えの利益が現存しなければならない。
Analysis(分析):問題は、給付判決を得ても、その給付の実現が法律上または事実上不可能あるいは著しく困難なとき、これを訴えの利益なしとして扱うのかそれとも、訴えの利益を肯認するのか、である。現実の利益を直ちに得ることはできなくとも、かかる不履行の責を判決は確認する意味(確認判決的意味合い)からこれを肯定的に捉えることには、それ以上の意味があるであろうか。まず、これを否定すると理由はともあれ、原告の権利が確認されない。次に、訴提起当時には原告の請求はどこまで認められるか分からないから、Y1,Y2に対する請求を最初に認定することも訴訟上は起こりうるし、和解や請求の認諾も当事者の処分権であることに鑑みると、周囲の状況の変化によって訴えの利益を左右することは適当ではない(法的安定に資するものではない)という判断は正しい。
Conclusion(結論):判決に賛成






民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 36 株主総会決議取消しの訴え   
Issue(事件の概要):株主総会決議による取消しの訴えが、起こされたが、控訴審において控訴審裁判所は、当該株主総会の当時選任された役員がすでに全員任期満了退任しているので、訴えの利益を認めず、訴えを却下したため、原告によって上告がなされた。
Rule(法):まず株主総会決議取消しの訴えが形成の訴えであることを確認しておく。形成の訴えは、その主体や要件が法律で個別的に定められているのが原則である。その場合、訴えの要件を満たしていれば問題ないのだが、訴訟前、または訴訟継続中に事情が変化して形成の必要がなくなるとき、これを訴えの利益なしとして扱うか否かが問題となる。①原告の実現しようとしていた実質的目的が、形成判決によってはもはや実現しないとき、特段の事情がないかぎり、訴えの利益は失われたとする。たとえばメーデーのためのデモの不許可に対する取消訴訟はメーデー(5月1日)経過とともに失われる、②原告の実質的目的が事実関係の変動によって実現してしまっても、訴えの利益は失われる。たとえば重婚を原因とする後婚の取消訴訟中に、後婚が離婚によって解消されてしまえば訴えの利益は失われる。
瑕疵有る決議により選任された役員がその在任中の行為について責任を追及することは出来ないという場合には、訴えの利益を否定すべきものとなる、との考え方がある一方、個々の不正に対する追求は可能だから遡及効があるからといって訴えの利益を否定すべきではない、との見解もある。さらに決議取消しの訴えは、会社運営の適法性を確保するものであり、実質的利益を判断の基準とすべきではない、との見解もある。
Analysis(分析):決議取消の形成訴訟の存在意義をどこに見出すか、の問題である。私見では、対世効を持つこうした訴訟では、裁判所の判断の社会的意義を重視すべきである。すなわち、実質的利益ではなく、決議の取消を認めるか否かで、会社運営の適法性が確定することに意義があるのだから、退任によってこれを否定すべきではない。
Conclusion(結論):裁判所の判断に反対






民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 38 仲裁契約の成立   
Issue(事件の概要):建物更正共済契約中の仲裁に関する条項(仲裁の合意)がある場合の仲裁契約の成立の可否をめぐる争いである。条項は次のように記載されていた「建物更正共済契約につき紛争が生じた場合に当事者間の協議がととのわないときは双方から書面をもって選定した各1名づつの者らの決定するところに任せ、それらの者の間で意見が一致しないときは県共済農業組合連合会が設置する裁定委員会の裁定に任せる」。
被告はこの条項の存在を理由に訴えの却下を求めたのに対し、原告は、この条項の存在を①分からなかった(知らなかった?)、②被告は仲裁契約上の権利を放棄している(控訴審における主張)などとして争った。
Rule(法):裁判外紛争処理機構のことをADRと呼び、近年、商工業先進国で問題となっている訴訟の飛躍的増加に対する解決策として、多くの国が制度を研究し、立法し、ADR機構を創設したり、民間団体がこれを創設することを推奨したりする動きが盛んになっている。ADRは従来の範疇からすれば調停型と仲裁型に分けられる。前者は、原則として当事者の合意がなければ確定判決と同一の効力をもつことはないが、後者では、その手続きに付すことに合意すれば、そこで下される裁定案には従わなければならない(確定判決と同一の効力)というきわめて強力な権限が仲裁人に与えられている。(仲裁法も平成15年8月に公布され注目を集めているテーマである)
不起訴の合意や仲裁契約の合意は、訴えの利益を欠くものとして訴え却下の対象となると解するのが通説である。
 仲裁契約も契約であるから、錯誤無効、強迫などの対象となり、また、その仲裁制度そのものが一方に不当に不利であるならば公序良俗違反の対象となる。
Analysis(分析):建物建築や修復に関わる仲裁制度は古くから存在しているが、その存在について消費者が知っていることはあまりないようである。紛争の解決・判断に高度の専門知識が要求される領域では必ずしも専門分野に精通しているとはいえない裁判官よりも専門家による仲裁裁定の方が訴訟経済に資するといわれ推奨されてきた面がある。ところが専門分野に精通していない消費者にとっては、公平な判断をしてくれる仲裁人を選任することは至難の業であり、さらに専門家といっても同業者による裁定では、同業者をかばう方向でバイアスがかかるのではないかとの危惧も重なってこれに否定的な見解も多い。
 個別の契約ごとに、その契約の合意が真摯にんされたものか、当事者の一方に不利になっていないか厳しい目で判断していくしかないであろう。
Conclusion(結論):最高裁の判決にしぶしぶ賛成

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               
百選判例 46 一部請求における残部債権による相殺   
Issue(事件の概要):YはXに対してXの違法な仮処分申請によって、本件建物の持分を通常の価格より低い価格で売却することを余儀なくされたとの理由で、通常価格との差額2億5000万円余が損害であると主張し、その一部である4000万円を請求した。他方XはYに対してYが支払うべき相続税などを立て替えて支払ったとして、Yに対して不当利得を理由として、1296万円の返還を求める訴え(以下本件訴訟という)を提起した。本件訴訟において、不当利得返還義務の存否を争うとともに、予備的に別件でYがXに対して起こしている訴訟における損害額(2億5600万円)のうち4000万円の請求を越えた部分(2億2000万余)および上記違法仮処分に対する異議申立手続の弁護士費用、遅延損害金の合計を自動債権とする相殺を主張した。
 第一審は相殺の抗弁を認めて請求棄却、原審は相殺の抗弁を認めなかったためXが上告した。
Rule(法):すでに継続中の別訴において訴訟物となっている債権を自動債権として他の訴訟において相殺の抗弁をすることは許されない(最判判例:重複起訴の禁止:民訴142条)。その理由として①争点が同じでるから重複心理を余儀なくされ、②異なる判断が下される恐れがあるからである。逆に継続中の訴訟において相殺の抗弁をしている自動債権を別訴において訴求することができるかについては争いがある。
 次に一部請求が許されるか、という問題であるが、債権の一部であることを明示して請求することは、処分権主義の立場からは認められてよさそうである。しかし、訴訟物をこの一部として扱うと、残部請求については別訴で争いうるから、事実上の矛盾判決が生ずるおそれがあり、また訴訟経済上も重複審理という点で好ましくないとの批判がある。そこで債権全体を訴訟物とみるという見解も主張されている。判例は明示的に分断されていれば、それぞれが訴訟物であるとの立場をとっている。
Analysis(分析):本件ではすでに継続している訴訟では、債権の一部請求をしており、その残部を自動債権として相殺の抗弁をなした、というものであるから、従来の判例理論からは矛盾しないこととなる。しかし、実質上、重複審理をすることを認めることになるので、裁判所は、この問題を相殺の抗弁を主張する当事者に負担をかけるべきでない、との視点から救済している。いわく、「相殺の抗弁に関しては、訴えの提起とは異なり、相手方の提起を契機として防御の手段として提出されるものであり、・・・一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなどの特段の事情の存在する場合を除いて、正当な防衛権の行使として許容されるものと解すべきである。」としている。
 相殺の抗弁を「防衛権の行使」として捉えるのは、相殺に担保的機能を認めているからであり、かかる機能を剥奪すべきでないとの配慮を、一部請求外の部分での債権について認めた判断は妥当なものといえよう。

Conclusion(結論):判決に賛成









民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 48 郵便に付する送達     
Issue(事件の概要):被告Y1は信販会社であり、被告Y2は国である。Y1はXの妻がX名義のY1 発行のクレジットカードを利用したことによる貸金および立替金の残金などの支払いを求め、簡易裁判所に訴えを提起した(前訴)。受訴裁判所の書記官は、Xの住所地へ訴状を送達したが、X不在であった。そこで書記官はY1に対し、Xの就業場所等について紹介を行った。Y1はXが釧路市内のA社から長期出張中で(A社とXの間で郵便物の転送などの体制は整っていた)あること、訴え提起前にXとの交渉でXあての郵便物はA社に送付して欲しいとする要望を受けていたにもかかわらず、就業場所を不明と回答した。Y1の主張によれば就業場所とはXが現実に労働している場所のことをいうから、これは不明と回答したとしている。Y1は、Xは長期出張から帰ってくる日を特定、家族も住所地に居住している旨回答している。このためY2はXの住所宛に付郵便送達を実施、訴状などは受領されず返還された。X欠席のままY1請求認容判決がくだされ、判決正本はXの住所に送達、Xの妻が受領したがXに手渡さず、控訴がなされず確定した。
 XはY1およびY2に対して、Y1は受訴裁判所の照会に誤った回答をしたこと、Y2に対しては書記官が付郵便送達の要件および実施に過失があったとし、担当裁判官にもこれを看過した過失があったとして損害賠償を請求して訴えを提起した。
Rule(法):送達とは、当事者その他の利害関係人に対し、訴訟上の書類を法定の方式により送り届けることをいう。わが国では訴訟上の書類の送達は裁判所が職権でする方式が原則としてとられている。相手方がうけとらないこともあるので、送達は受け取らない場合でも送達の効力を生じさせることができる。送達に関する事務を取り扱うのは書記官であり、実施する機関は執行官または郵便集配人である。
Analysis(分析):被告が訴状やその他の重要な書類を受け取らないまま、訴訟が結審してしまうことは由々しい事態であり、そのために公正を期すために職権ですることが規定されているのである。しかし、だからといって極端に厳密な手続を課せば、送達は不可能になり裁判そのものが成り立たなくなることも考えられる。送達を受ける者の手続保証と、裁判そのものを保障するという要請の間で均衡がとられなければならない。原告が故意に被告の住所を不明とすれば、追完が認められ(97)また判決そのものが再審事由になるとの説もあることに鑑みれば、裁判所書記官の過失を認めてもよい、と考える。
Conclusion(結論):裁判所は書記官は一般的手続にのっとってしたから過失はないとし、また前訴判決の既判力ある判断と実質的に矛盾する損害賠償は、「当事者一方の行為が著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別な事情」にあたらないとした判断は誤りある。
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by civillawschool | 2005-12-05 00:39

IRAC方式による判例百選 その1 判例22まで

IRAC方式による判例学習方法

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 1 訴訟と非訟
Issue(事件の概要):別居申請中の妻Xが夫Yを相手に夫婦同居の審判を申し立てたところ、福岡家裁はこれを認めた。
 Yはこれに対して高裁に即時抗告したが、棄却されたので、最高裁へ特別抗告を申し立てた。理由は、非公開の決定手続である家裁の審判によって民事上の義務を負担させるのは、公開の法廷において対審の原則に従い裁判を受ける権利を侵害し、憲法32条82条に違反する、というものであった。
Rule(法):権利義務関係の存否そのものを確定するためには、訴訟手続によらなければならないが、権利義務が存在することを前提として、その具体的内容を形成することは、非訟手続によることが許される。ただし、争訟的非訟事件にあっては、係争利益にかかわる利害関係人が対立するので、裁判所は判断を下すにあたり、利害関係人の実質的な手続保障(主張・立証の保障)に配慮しなければならない。
Analysis(分析):訴訟手続は権利義務関係の存否を確定、非訟手続は、権利義務の存在を前提にその具体的内容を形成するものという一般的図式が果たして妥当なものか疑問がないとはいえない。特に争訟的非訟事件にあっては、大いに疑問であり、それゆえ、本件では、実質的に利害関係人(訴訟にいうところの当事者)に実質的な手続保障が与えられていたか否かで判断すべきではなかったか。
Conclusion(結論):最高裁決定に疑問!



                
百選 判例5 訴額の算定

Issue(事件の概要):ホテルの営業委託契約があるにも関わらず、被告が委託契約が終了したと主張し、訴外C(ホテルの総支配人)を解雇したので、原告ら(受託者)が営業受託者であることの確認とCが総支配人であることの確認、受託業務の妨害禁止などを求めた訴えで、委託料が営業収益を基礎としているとき、訴額は算定不能だから貼用印紙を500円(原行1000円)としたことの是非が争われた。

Rule(法):事物管轄(訴額により裁判所が簡裁か地裁が決まる:90万円以上なら地裁)の決定は訴額によって決まる。訴額は原告が決定する(処分権主義)?訴額は訴えで主張する利益を算定したもの。非財産上の請求はその価格を算定できないから90万円を超えるものとみなしつつ、95万円として計算する。
 訴えで主張する利益はどうやって計算するか?経済的利益説と規範的解釈(裁判所の裁量)に従うとする規範的訴額説が対立している。

Analysis(分析):訴額の決定による印紙額の出捐には二つの機能がある。まず、①裁判所にとっては訴訟に関わる経費の少なくとも一部を当事者に負担させる。訴訟に要する費用は必ずしも印紙の額と呼応するわけではないが、(1円の訴額の訴訟でも大変にコストのかかる訴訟もあれば、数億のものでも簡単に済んでしまうものもある)、少なくとも明瞭なコスト設定である。②このコストを当事者に負担させる(原告が最初出捐し、最終的には敗訴者が負担)ことで乱訴を防止し、また自身の咎を知っている被告がむやみに訴訟を提起させ、争わせることに対する一定の抑止力にもなる。

Conclusion(結論):本件では、訴額を低額に抑えてしまうことは、②の視点から好ましいものではない。しかし、係争利益がいくらになるか分からないまま、訴訟の準備をさせることは①の明瞭性の視点からは、好ましくない。結局、本件の判決では①よりも②の視点を優先させ、訴額を原告が予定したものよりもはるかに高額とすることを認めたものであるが、それが不当に高額なものでない限り、認容すべきものと考える。

百選判例6 移送

Issue(事件の概要):約款中にある合意管轄(専属管轄の合意)が被告にとって不都合であるとして被告がした移送の申立ての是非


Rule(法):土地管轄は、①被告の住所地②債務の履行地が原則だが、合意によって管轄を指定できる。このとき、その土地管轄以外のものを認めないとするものを専属管轄という。当事者主義の原則から導かれる。


Analysis(分析):土地管轄に関する規定は、①当事者の便宜(原告の住所地としなかったのは、訴えられる方の不利益を考慮したもの)、②人証調べの負担が少ない、などを考慮しているものであり経験則を法文化したものである。土地管轄は経済的、時間的負担を考慮した手続的規定であるが、当事者が専属管轄でこの負担を一方当事者にのみ有利とするような合意をした場合の、その合意の有効性の問題である。
 また、これが普通取引約款により締結されているが、こうした定型的契約では当事者一方の意思が充分に反映されていないことがある。

Conclusion(結論):個別の事例に照らして、人証調べの必要性の有無、移送した場合の相手方の負担などを総合的に考慮して、当事者の申立てをまって移送を決すべきか否かを判断すべきである。




民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               


百選判例 10 氏名冒用訴訟  
Issue(事件の概要):YがXに対して起こした膳訴で勝訴し、これに基づいて強制執行しようとしたところ、Xが自分は氏名を冒用されたとして、また前訴における代理人に訴訟代理権を付与したこともないから、法律の規定に従って代理されていないとして(338条1項3号か?)、再審の訴えを提起したのが本件である。
 原審は、Xの主張を認めつつ、Xはこれによって訴訟当事者の地位を取得するものではないから、前訴判決の効力はXに及ばないから、従ってなんらの救済を講じる必要はないので再審事由にあたらない、と判示した。
 
Rule(法):確定した判決や訴訟継続中において、当事者は誰か?という問題である。実質的当事者説はその訴訟における当事者らしく振舞った者や、本来当事者にふさわしい適格性を備えていながら(当事者適格)、訴状には自身の名が記載されていない者が本来の当事者であるとする(原審の見解)。これに対して形式的当事者説は、訴状に記載された者(訴訟継続中)、判決の名宛人(判決文に記載された者)を当事者とするのであって、これを認めないと、判決の効力が誰に及ぶのか明瞭でなく、混乱すると主張する。

Analysis(分析):実体法上の意思主義の下では、契約にまったく関与しなかった、そうしてかかる意思がなかった者にその契約の効力が及ぶことは原則としてはない(この例外が表権代理の法理)が、このことを訴訟にまで拡張すると、自分が知らない間に判決が出てしまった場合には、その判決は無効なもので、その効力が自身に及ぶことはない、ということになる。しかし、それでは判決の社会的通用力、信頼は失われ、強制執行にも支障をきたす。当事者の人定(これは刑事訴訟法上の概念であるが)は、裁判所の職責であるなら、かかる確定した判決は被冒用者によって再審の訴えによってその効力を否定されなければならないであろう。

Conclusion(結論):大審院の判決(形式的当事者説)に賛成である。





民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例11 死者を当事者とする訴訟   
Issue(事件の概要):XはYを被告として訴えを提起した。この訴状はYの妻Aが受領していた。裁判では被告不在のまま、Xが勝訴。この判決送達において、Yが訴え提起前にすでに死亡していたことが判明した(判決文の送達が出来なくなると判決は確定しないことになる)。そこでXは、Yをすでに家督相続していたZに対して訴訟手続きの受継を求め、さらに原判決を取り消し、原審裁判所に差し戻す旨の判決を求めて控訴した。
 控訴審裁判所は死者を相手とする訴えは訴訟関係が成立していないから、成立していない訴訟関係を受継することは出来ないとして、原判決を取消し、訴え却下の判決をなした。
 Xが訴状補正のために事件を第一審に差し戻すべきであるとして、上告。

Rule(法):形式的当事者概念(とこれをとる表示説)においても、実在しない(すでに存在しない者も含む)者を相手として訴訟の効力は無効(訴訟そのものが成立しない)と考えるべきもののように思われる。しかし、時効の中断や、訴訟費用(主として貼用印紙代)のためには、原告のために訴訟の継続を認めてもよいのではないか、という議論が当然におきてくる。これが本件における原告(上告人)の主張である。

Analysis(分析):訴訟の相手方に関する情報について、訴えを起こそうとする者が常に正確な情報を有しているとは限らない。契約時に通称を使用していたり、本件のように、契約後に死亡していることを知らずに、訴えを起こしてしまうことはままあることである。かかる場合に、それまでにしてきた訴訟行為をそもそも成立していないとして無効にしてしまうのか、それとも訴訟の受継を認めるべきかという問題である。訴訟の受継を100%認めてしまうことには問題もある。新たに当事者となった者が、それまでの訴訟の過程に参加していなかったために不利な扱いを受けることがあってはならないからである(手続保障の問題)。具体的には攻撃防御の機会の保障と進級の利益がここでは問題となる。

Conclusion(結論):大審院判決のように訴状補正を認め第一審に差し戻すべきである。







民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 13 法人でない社団の当事者能力  
Issue(事件の概要):被告Yは預託金会員制ゴルフ場の運営会社であり、原告Xはゴルフ場の会員が組織する相互の親睦等を目的とするゴルフクラブである。X とY との間にはY が作成する書類などの閲覧ができる旨の協約がある。これに基づいてXが書類等の閲覧を求めて起こしたのが本件である。
 第一審裁判所はXには当事者となる能力がない(民事訴訟法代29条には、法人でない社団などでも、代表者ないし管理人の定めがあるものは、その名において訴えまたは訴えられることができる、としている)とした。
Rule(法):







Analysis(分析):







Conclusion(結論):






民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 15 入会団体の当事者適格  
Issue(事件の概要):入会団体に当事者適格があるかが、争われたケース:江戸時代以降、部落の入会地としてきたが、昭和40年以降転出転入者の増加にともない、入会地の管理関係の混乱をさけるため48年12月16日時点での入会権者をして共同所有者として資格のある部落民全員の合意の下、従来の慣習をもとに規約を制定し、組合を設立した。ところが問題の土地は大正4年当時のO部落の戸主24名を共有名義の登記がなされている。この戸主の相続人Y1Y2に対してX組合が土地の所有権が組合の構成員の総有であることの確認を求めた。第一審は民訴法46条を根拠にXに当事者適格を認めた。控訴審はこれを否定した。
Rule(法):当事者適格とは、訴訟の主体となる資格(特定の請求について当事者差として訴訟を追行し、本案判決をもとめる資格)をいう。
 形式的当事者概念:訴状(答弁書)に記載され、あるいは判決に当事者と記載されたものが当事者である。
 実質的当事者概念:訴訟において当事者らしく振舞った者とする説や、訴訟物との関わりで当事者としての利益を有する者を当事者とする説がある。
 当事者適格は実質的当事者概念からだれが紛争の当事者となるのかが、適当かという点に関する議論である。当事者として判決をすることが無意味な者の訴訟を排除する機能がある。
 正当な当事者は誰か、ということについての一般的基準については学説が分かれている。訴訟物を基準に考える説、判決の結果によって法的利益が左右されることを考慮したりする説がある。法的利益の主体という概念を持ち出す学説もある。
 訴えの類型ごと(給付、形成、確認)に考察していこうとする動きもある。
Analysis(分析):法人格のない者は不動産登記をすることができないから、入会団体が所有権移転を求めていたならば(給付の訴え)、当事者適格は認められないであろう。しかし、本件は所有権の確認を求めたケースである。民事訴訟法46条は法人格のない団体であっても当事者能力を認めていること、その趣旨として紛争の解決には社会的な実体に考慮した解決が希求されていること(紛争を複雑化、長期化させることなく解決することに資するか)に鑑みると、当事者適格を認めた最高裁の判断は正しかった。
Conclusion(結論):判決に賛成




民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 16 選定当事者   
Issue(事件の概要):X1~X17らは訴外Aに対して繊維製品を販売し、売り掛け債権者を有する者であり、いずれも繊維製品の販売を業とする者である。Aは営業不振、不渡り手形を出し、休業している。Y1,Y2はXらにこの債務の連帯保証人となる旨の誓約書をXらの代理人に差し入れた。XらはX1を選定当事者として選定したが、Yらがこれを争った。Yらの主張によれば、Xらそれぞれの有する売掛債権はその発生原因を異にする別個の債権であるから、「同一の事実上または法律上の原因に基づくもの」ということはできない、というものであった。(現行の規定では「共同の利益を有する多数の者」)
Rule(法):選定当事者の制度は改正当初、和製クラスアクションといわれたが、予想したほどの効果はあげなかった。共同訴訟人となるべき者として前提としていたのは、クラスアクションのように「法律上、事実上の同一の原因」をして消費者訴訟のような大量被害に対処するものを予定していたのである。しかし、訴訟代理人を絞込み共同訴訟の制度を利用すれば選定当事者の制度を利用しなくとも、事実上問題は解決できたのである。そこで民事訴訟法が改正され、訴訟継続後に、第三者が当事者になっている者を選定することができる、との規定ができ(30条2項)、これによって、その活用範囲は飛躍的に広がった。
 しかし、「共同の利益」(同一の事実上または法律上の原因)の概念はあいまいなままである。①多数者相互に共同訴訟人となりうる関係があり、かつ②各人のこれに対する請求が主要な争点=攻撃防御方法を共通にするというのが古くからの判例であった(昭和15年4月9日)。 
Analysis(分析):問題は連帯保証契約であっても、各債権者の被保証債権の発生原因はそれぞれ異にする別個の債権であるならば、同一の事実上または法律上の原因といえるか、という点である。選定当事者の制度が、大量に発生する消費型契約事件の処理を念頭に考えれば、本件のように消費社会型訴訟とは必ずしも言い得なくとも、各人の主要な争点=攻撃防御方法が共通か、という点から選定当事者を認めるべきであろう。
Conclusion(結論):最高裁判決に賛成









民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 17   法定訴訟担当
Issue(事件の概要):訴外亡Aは本件土地をBに遺贈する、遺言執行者をYおよびCとする旨お公正証書遺言をなし、その後死亡した。Y,C,B間でBを登記権利者とする登記(遺贈を原因とする所有権移転仮登記をしたが仮登記のままとどまっていたもよう)がなされた。遺言について知らなかったAの養子XおよびAの妻Dは、本件土地の占有を開始した。その後、XはDの相続分を譲り受け、相続を原因とする所有権移転登記(これは本登記であろう、仮登記があってもこれと異なる本登記は可能だから)をなした。XはYに対して公正証書の偽造を主張し、第一の請求として主位的に遺言無効確認、予備的に取得時効を主張し、第二の請求としてBの仮登記の抹消を求めた。Y反訴、Xの所有権移転抹消を請求。
 第一審、Xの請求認容。反訴棄却。原審は、本訴請求、反訴請求とも棄却。公正証書は適正、しかしXの時効完成がその理由。登記抹消請求も認めなかったのは、登記権利者はBであるからBに対して請求すべし、というのがその理由。Xは、遺言執行者は訴訟追行権を有するとして上告。
Rule(法):法定訴訟担当とは、第三者が他人の権利関係について訴訟追行権を行使する場合のことをいい、法の規定による。第三者の権利保護を目的とする場合と職務上の当事者に区分される。遺言執行者は職務上の当事者と解される。
Analysis(分析):問題は、遺言執行後において誰を当事者として仮登記抹消を請求すべきか、この場合にも遺言執行者は当事者適格を有するのか、それとも抹消登記請求においては、抹消義務を負うのは登記名義人か、という問題である。
Conclusion(結論):遺言執行後、遺言執行に関係のないことにまで遺言執行者に法定訴訟担当を認めるべきではないからである。それゆえ、訴え却下(当事者適格なし)とした最高裁の判断に賛成






民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 18 紛争管理権   
Issue(事件の概要):Xら住民によるY電力会社の火力発電所の操業停止と埋立区域の現状回復を求めた訴訟である。Xらは環境被害を根拠に訴えたがその中で、自らが私的権利を侵害され、私的利益を追求しているものではなく、地域の環境保全を目的として、地域の代表として本訴を提起した、と主張。
Rule(法):法定訴訟担当に紛争管理権なる概念を導入すべき、との見解が成立するかという問題である。訴訟提起前の紛争の過程で相手方と交渉を行い、紛争原因の除去につき持続的に重要な役割を果たしている第三者は、訴訟物たる権利関係についての法的利益や管理処分権を有しない場合にも、紛争管理権を取得し、当事者適格を有するに至るという見解の成否の問題である。
Analysis(分析):環境権のように広く地域住民が享受する利益、あるいはさらに後の世代まで含めて受益者と解する利益の保護に、法定訴訟担当を定めて紛争の一回的、恒久的解決がはかれないか、という問題である。その必要性はある。しかし、紛争管理権のような形で解決を図ろうとすると、かかる訴訟の進行を知らなかった住民や、馴れ合い訴訟もおきかねない。米国のクラスアクションのように広告され、代理人(日本なら法定訴訟担当者)の資質を裁判所が判断するなどの手続きが確定していないところでは、当事者の手続保障の面からは問題があると言わざるをえない。
Conclusion(結論):紛争管理権を認めなかった最高裁の判断にしかたなく賛成







民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 21 意思能力    
Issue(事件の概要):Y(被告・控訴人)が相手方訴訟代理人の説得にその意味もよくわからず、控訴取下書に署名した。Yの意思能力に問題があり、後に準禁治産宣告を受けている場合、この者のなした控訴取下げの訴訟行為は無効と扱うべきか。その場合、そもそもこの者のなした控訴行為は無効にならないのか?
Rule(法):訴訟能力とは、訴訟当事者として自ら訴訟行為をなし、相手方や裁判所の訴訟行為を受ける能力をいう。法(民訴28)は「民法その他の法令に従う」と規定している。それでは行為能力のない者(制限能力者)はどのように扱われるのであろうか。未成年者や成年被後見人は訴訟能力がないものとして扱われる。婚姻擬制や営業の許可による成年擬制は行為能力があるから訴訟能力も肯定される。行為無能力者は民法では親権者、後見人、によってそのなした行為を補完されるが、訴訟においてはこのような考え方はとるべきでないといわれている。それは、もし訴訟行為においても、かような事後的な補完を認めてしまうと訴訟そのものが、手続的に不安定となるからである(講義101頁)。
Analysis(分析):事実上意思形成能力に問題のある者のなした行為でも、控訴そのものは有効で、控訴の取下は無効と解することはできるであろうか。原審は実質的な考慮から、控訴そのものは本人に不利益とならず、控訴の取下げは不利益になる点を考慮したようである。しかし、それでは手続の安定に欠けることにならないか?しかし、訴訟無能力者による、またはこれに対する訴訟行為も、単独で訴えを提起しあるいは訴状の送達を受けた訴訟無能力者のなした控訴(上訴)の提起は有効と解すべきといわれている。手続の安定よりも無能力者保護を優先すべきとの発想からであろうか。
Conclusion(結論):最高裁の判決に賛成








民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 22 訴訟能力   
Issue(事件の概要):XがYを相手に離婚および親権者の指定を求めて訴えを提起するとき、Yが昏睡状況にあるならば、Xの求めによって特別代理人の選任によって、訴訟を継続することができるか、それとも禁治産者の申立てを先にし、後見監督人を代理人として訴訟をすべきか。
Rule(法):訴訟能力とは、訴訟当事者として自ら訴訟行為をなし、相手方や裁判所の訴訟行為を受ける能力をいう。訴訟能力を欠く場合、裁判所は補正命令を出す(341前段)。
訴訟能力は職権調査事項と解されるから、すでに訴訟が進行していれば追認の可能性をさぐり、将来にむかっては補正による欠缺のない追行を確保するねらいがある。
訴訟能力の制度は当事者の手続き保証(正当な裁判を受ける権利)を保障するとともに、裁判が適正に遂行されることで、後にその手続きが無効となることで手続きの安定が損なわれることのないようにするものである。
Analysis(分析):当事者の手続保障の視点からは、特別代理人の選任では不適切であろうか?それとも後見人選任,後見監督人選任という手続きを経るべきであろうか?
 かかる場合の離婚は本来代理になじまないと言われてきたし、そのとおりであろう。しかし、それでは相手方の離婚請求が不可能となってしまう。そこでまず後見人を選任(民法7条)、ついで後見監督人が選任されることになると、この者を代理人に訴訟するのであれば、継続的な事務を扱う者が代理するので、一時的な代理人よりも、本人の保護になるであろうことは容易に推測される。
Conclusion(結論):最高裁の判決に賛成
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by civillawschool | 2005-12-05 00:37



解答例
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