大学院民訴レジュメ

残りのレジュメ 3

事実認定の起訴 unit.11
Q1
1)Xは甲地の引渡しと、所有権移転登記手続きを求めているので、物権的引渡しも物権的登記請求権も構成しうるが、かかる権利の発生原因を考えると、これを抱含する売買に基づく債権的登記請求権および債権的引渡し請求と構成することが適当と考える。それゆえ、売買契約を締結したとの事実が請求原因事実となる。
2)@「文書の真正」とは、書面がその作成者と主張される者、あるいは書面に作成者の記載があればその者により作成されたものであり、作成名義を偽って作成された偽造あるいは変造されたものでないことをいう。ちなみに「作成された」とは、本人の直筆によるものであることを要せず、代筆であっても、作成者の意思によるものであるかぎり、真正な文書である(伊藤説)。もっとも通説はこれに加えて①文書作成者の特定、②挙証者による作成者の主張が必要であるとする。また、作成者確定説は、通説のあげる三つの要件(①文書作成者の特定、②挙証者による作成者の主張、③作成者の意思に基づくこと)のうち②の挙証者の主張する者がその文書の作成者であることは必要でないとする。
@売買契約書の真正を基礎づける事実とは:文書成立の真正については、228条が、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定す」と規定しているところから、署名または捺印が、本人又は代理人の意思に基づいてされたことが必要である。この本人または代理人の意思に基づいてなされたか否かについて、これを覆すのに、反証で足りるか、それとも本証まで要求するかで学説は対立しているが(証明責任をどこまで要求するかという問題である)、私見は反証で足りる(ようするに本人又は代理人の意思ではないかもしれないという心証を裁判官に与えればよい)と考える。そうすると、甲第一号証には、XおよびYの証明・印影があり、両者とも本人のものであることが認められたのであれば、YはそこにYの意思の不在を推認させるような事実(Yの意思の不在の証明ではなく、反証程度のもの)を提出しないかぎり、文書の真正は基礎づけられていることとなる。
3)文書成立の真正の認定は、本人又はその代理人の署名または押印があり、その印影および署名が本人または代理人の印章の印影と確認され、署名も証言などにより本人又は代理人の署名と確認できれば、①文書作成者が特定され、②挙証者による作成者の主張は、反証のない限り排斥され、③文書の名義人の意思に基づいて作成されたことが(反証のない限り)推定される。もっとも文書成立の真正とは「書面の作成がその作成者と主張せられるものにより作成されたもの」であることを認定するものであって、文章の内容が真正であることを認定するものではない(最判昭和27.11.208資料))
また捺印に関しては、文書中の印影が本人又は代理人の印章と同一の印影であることから、本人又は代理人が捺印したことが推定され、文書成立の真正が推定されるという段階を踏むため、二段の推定と言われる(最判昭和39.5.12資料4)。
もっとも本件のように反証として、捺印は本人がしていない、との主張があるときは、次のように考えることとなる。
 印章を預けていたり、盗用したとの主張があるとき、印影が本人の意思に基づいて検出された旨の推定は、事実上の推定*にとどまる(資料6)から、不自然なケース、同居人がいて、この者が印章を自由に使用できる状況があった(判例(9)教科書218頁)とか、本人が1年を通じて出稼ぎに出ており、留守を預かる妻に捺印を指示したと推定させるような事情もないとき(判例10)、推定は働かない(反証により覆る)ものと解される。
 
*捺印に関する推定は事実上の推定である(自由心証にもつづいて事実認定を行う裁判所が主体となって行う)。事実上の推定が成立するかどうかは、証拠および間接事実の証明力ならびに経験則の蓋然性との間の相対的関係によって決定される(伊藤336頁)。

4)売買契約書の真正は、売買契約そのものの成立を証明するものではないが、売買契約における要件事実であるところの意思の合致を強く推認させる。契約書そのものの真正は、事実としての契約の成立そのものではないが、通常、事実上の推定として、契約の成立を推認させるのである。Bが押印したとしても、Bに代理権がある場合もあるので、一概に真正が否定されるわけではない。しかしBに代理権がなければ、文書は偽造であり、真正は否定される。
5)@Cの証言によればBが契約書に押印した可能性が疑われる。また、Bが経理担当として会社の印鑑を保管していた、ないし印鑑を盗用することが可能であったことが推認される。Cは本件について、利害関係がなく、しかし不動産取引の経験が豊富なことから、その証言には高い信憑性を与えてよい。
BはXとも面識があったというのであるから(この点についても調査することで私的な付き合いがあったか否か:Bは否定しているが:などが明らかになるであろう)、Xとは長い付き合いであったというのであるから、Xに懇請されて契約書を偽造した可能性もある。しかし、Bの証言によれば、BはYの実印や社長印に触ったこともないというのであるから、印鑑の管理の状況を確認することで、印鑑盗用の可能性が変わってくる。
@そこで、X,YそれぞれはB、Cに次のような事実を聞くべきことになる。Cに対しては、Cが本件につき利害関係がないかを確認する。Bに対しては①印鑑の保管場所を認知していたか、無断で使用できる状態であったか否かなど、②BはXと仕事外では付き合いはない、と言っているが、仕事上ではどうか。Xに何か懇請されたこと、融通したこと、されたことなどがないか。

6)契約書が真正に成立したとしても、ただちに売買契約の成立を認定できるわけではないが、契約書の真正は契約の成立を事実上推認させるから、これに反する事実の主張がなく、他の状況とも矛盾しないかぎり、売買契約の成立を認定できる。

Q2
1)売買契約書は作成されなかったという前提で考えてみると、①の融資の打診は購入の意思を推認させる事実であり、②の手付金の振込みは、契約そのものの成立を推認させる間接事実であり、③の融資の申し込みもまた、売買契約そのものの成立を前提としたものであるから、契約の成立を推認させる、④Xが抗議した、「話が違う」という発言からXは少なくとも売買契約が成立していた、あるいは成立寸前であったと推定される。
 問題は売買契約の対象、成立の時期および価格である。対象については、銀行融資に際して甲地を指定しているなら、甲地であることを推認させる資料となる。時期については、2月28日の手付金の振込みは、手付けが成約手付けであるか否かに関わらず、振り込んだ日に契約が成立したことを推認させる。価格に関しては、融資に関して1億までなら可能とのDとのやり取り、Xがその後、1億の融資を申し込んだ事実から、価格が1億円と推定することはできるであろうか?否定的に考えるべきである。銀行融資は通常、購入価格の8割とか、あるいはそれ以下というように、割り引いて融資されるのが通常であるからである。
2)間接推認型という。売買契約書の真正から売買契約を推認するのは、売買契約が契約書の真正によって経験則上推認(事実上の推認)できるのに対して、間接推認型では、間接事実を積み重ね、総合し経験則から判断するものである。間接推認型では、いかなる間接事実をどれくらい総合し、判断したら要証事実を推認できるかということについて、一般則はない。ケースバイケースで判断するしかないため、評価が分かれることが多い。
3)間接推認型の場合、数個の間接事実を総合すると、その限りでは要証事実を推認できる場合であっても、他方において、推認を動揺させるような間接事実(これは間接反証ではなく、いわば(相手方にとっての)別個の主張に関する間接事実)があるとき、これらをあわせて考えると要証事実を推認できない場合があり、まさしく本件がそれにあたる。
@不動産の売買契約が時価によることが経験則であれば、そもそも甲地の売買契約は間接事実を総合しても経験則上推認できないことになる。
4)これを間接反証と呼ぶべきかについては、見解が対立している。けだし、2aからdは、相手方の主張する(本証)事実を推認させる間接事実だからである。
5)2aおよび2dのような事実は、それが証拠の優越の程度の心証にしか達しないとき、これを要証事実の認定をぐらつかせる事実(従来の説でいうなら間接反証事実として)構成すべきか、という問題である。「非常に興味を示した」とか「そのまま電話を切ってしまった」といった事実は、果たしてXの主張する甲地の売買があったとする主張を推認することを妨げるものであろうか?2dについては、抗議のとき「電話を切った」という事実(しかも証拠の優越にとどまる)というとき、かような事実があったとしても、X主張の事実があったことと大きく矛盾しない。また、「非常に興味を示した」「電話を切った」という事実を証拠の優越の程度で認定してしまうことは、Yが本来、証明しなければならない事実(本証)の証明責任を緩和する結果になるので認められないと考えるべきであろう。
6)一般的に資金繰りに困っていたという事実が、土地の売却を推認させる間接事実か、というと、必ずしもそうとは言えない。土地は売却しなくても、抵当権などを設定すれば足りる場合もあり(銀行などの金融機関から融資を断られたとあるが、土地を担保に提供することを拒んでいたのかもしれない)、債権者たちから法的手段も辞さないと、言われていたとしても、マンション等を処分すれば足りることである。甲地を手放す意思はなかったことも考えられるからである。また、甲地を売却するにしても、出来るだけ高価で売却しようとすれば、Xに売却しようとしたことにはならない。
 もちろん間接事実は総合的に判断するものであるから、⑤の事実に加え、上記のようなこれを否定する可能性が極めて小さいと解されるような事実を捕捉していけば、その他の事実と総合して、肯定的に解釈することも可能であろう。

Q3
1)売買契約成立の事実は、直接事実であり、売買契約書は直接証拠である。売買契約書の真正の争いは補助事実であり、この真正に関わるCおよびBの証言は補助事実に対する間接証拠を構成する。Ⅱの1の①から⑤は、売買契約の事実を推認させるための間接事実に関わる間接証拠である。Ⅱの2のaからdは、Yの主張する乙地の売買についての本証における間接事実(間接証拠)であるとともに、X主張の事実を疑わせる間接証拠(旧来の表現では間接反証のための証拠)である。
2)@Xのストーリーでは、Yは丙地に建設したマンションの建設資金の支払に困り、Xに甲地を1億円で売却した。Xはこの契約の内容はXはYに2月28日に手付金1000万を支払うというもので(Xは実際にYの銀行口座に振り込んだ)残金は所有権移転手続と同時に支払うこと、所有権移転登記手続きの日は3月25日とする、というもので28日XYともに署名捺印した。Xは甲地を購入する資金を融資してもらう目的で銀行に問い合わせ、銀行もこれに1億の融資を大丈夫だろうということで、早々に融資を申しこんだ。ところが、うわさでYが甲地をZに売ることにしたと聞いたので、Aに電話したところ「甲地はzに売ることに決まった」といわれ、「話が違う」と抗議しても取り合わなかった。
 Yのストーリーはかかる売買契約は存在せず、Yの経理担当者BがYの印鑑を盗用して契約書を作成したもので、この作成は、Cによって目撃されている。その前後、YはXにZ地を見せたところ非常に関心を示した。YがXに乙地を1億円で買い受ける旨の売買契約が2月28日に成立し、同日XはYの口座に手付金の1000万円を振り込んできた。3月14日甲地はZに1億3000万で売却することが決まった。3月20日Xより抗議の電話を受ける(話が違う)などなど・・・。
 @Xの主張するストーリーが事件の真相だということに認定されると、C,の証言の証拠力は否定されたことになり、Bの証言の証拠力は肯定される。売買契約書は真正が確認されるであろう(契約書をの真正を確認しないで売買契約の成立を認定することもある:契約自由の原則)。
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by civillawschool | 2006-07-06 12:10
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