大学院民訴レジュメ

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口頭弁論との接続
争点整理手続を経た事件については、その終結後における最初の口頭弁論の期日において、直ちに証拠調べをすることができるようにしなければならないので(規101条)、裁判所は、証拠決定(証拠の申出に関する裁判)を弁論準備手続の終結する期日までに(170条2項)、またはその後の最初の口頭弁論期日の前に行う必要がある。
弁論準備手続は、口頭弁論手続ではないので、その結果を口頭弁論において陳述することが必要であり(173条)、陳述されたことのみが裁判の基礎資料となる。結果陳述であるので、各当事者の最終的な主張内容を報告すれば足り、その報告は一方の当事者がなせば足りる。報告をなす当事者は、両当事者の最終的な主張の全体を報告すべきであり、自分に都合のよい部分のみの報告は許されない。弁論準備手続において各当事者に要約書面を提出させ(170条5項・165条2項)、その要約書面に基づいて結果陳述するのが通常となろう。その後の証拠調べによって証明すべき事実、すなわち、当事者間に争いのある事実が何かは、必ず明らかにしなければならない(規則89条)。これらの陳述は、口頭主義・公開主義の充足の意味を有する。受命裁判官が手続を実施した場合については、直接主義の形式的補充の意義もある[1]。
2.3 書面による準備手続(175条-178条、規則91条-94条)
これは、当事者が裁判所から離れた地に住んでいるとき、病気等により裁判所に出頭することが困難であるとき、その他裁判所が相当と認めるときに、当事者の出頭なしに、準備書面の提出等によって争点および証拠の整理をする手続である(遠隔地に居住する当事者にとっては、時間と費用の節約になる)。この手続を実施する場合には、裁判所は、当事者の意見を聴かなければならない。
この手続は、期日を開かずに争点整理を行うので、経験豊富な裁判官が実施する必要がある。そこで、手続主宰者は、裁判長(または、構成員全員が経験豊富であると期待される高等裁判所においては、受命裁判官)とされている(176条1項)。争点整理の具体的な方法としては、次の2つが認められている。
•準備書面の提出  これが基本的方法である。裁判長等は、準備書面提出期間や証拠申出期間を定め(176条2項・162条)、期日外釈明を行う(176条4項・149条、規則92条・63条)。
•裁判所と当事者双方が音声の送受信により通話する方法による協議(176条3項・規則91条)  協議の日時は、手続を主宰する裁判長等が指定する(規91条1項)。協議日は期日ではない(裁判所と当事者が一定の日時に一つの場所で会合するわけではないからである)。したがって、書記官が立ち会う必要はない。しかし必要があれば、書記官を立ち会わせて協議結果を記録させることができ(176条3項後段)、記録方法として調書(期日外調書)を作成することもできる(規91条2項)。その後の口頭弁論において当事者が主張することが確実な重要な陳述等は、調書に記載するのが現実的あろう([最高裁*1997b]170頁)。協議にあたっては、通話者の確認が重要である(規91条3項・4項・88条2項)。
裁判長等は、準備手続における争点および証拠の結果を要約した書面の提出を当事者に提出させることができる(176条4項・165条2項)。
当事者が準備書面の提出等を懈怠した場合には、この手続は、120条により取り消される。手続を終了させて当事者に説明義務を課すことは、この手続の例外的性格を考慮すると適当でないので、166条の準用を認める規定は置かれていない([伊藤*1998a]237頁)。
口頭弁論との接続
当事者の出頭なしに行われる整理手続であるので、要証事実の確認は、この手続終結後の口頭弁論期日においてなされる(177条)。整理手続終了後の新たな攻撃防御方法についての説明義務は、次のいずれかの時点で生ずる(178条)。
•争点および証拠の整理結果の要約書面が口頭弁論において陳述された時点(176条4項・165条2項)  条文上は「要約書面の陳述前」に提出できなかった理由を説明すべきことになっているが、「要約書面の作成前」に提出できなかった理由を説明すれば通常は十分であろう。
•口頭弁論において要証事実の確認がなされた時点(177条)
2.4 まとめ
準備的口頭弁論弁論準備手続書面による準備手続
手続の実施が予想される事例 社会に与える影響の大きい事件など、公開の必要性の高い事件当事者の双方または一方が裁判所から離れた地に住んでいる場合など
整理の場・方法 口頭弁論(公開法廷)弁論準備手続(法廷のほか、裁判官室・和解室等でもできる)準備書面の交換
整理手続開始についての当事者の意見聴取 必要(168条)
必要(175条)

手続主催者 裁判所(165条)
裁判所(170条)または受命裁判官(171条)裁判長。高等裁判所においては、受命裁判官も可能(176条)。

公開 一般公開限定公開(169条)

出頭 現実出頭(通信出頭は不可)当事者の一方が現実出頭の場合に、他方の通信出頭の余地あり(170条3項)
現実出頭はない。通信による協議(176条)

訴えの取下げ、請求の認諾・放棄、和解 できるできる。
当事者の手続懈怠 終了原因となる(166条)
同左(170条5項)

要約書面の提出 手続終了時に提出(165条2項)
同左(170条5項)同左(176条4項)

要証事実の確認 準備的口頭弁論終了時に確認(165条1項)
同左-弁論準備手続終結時に確認(170条5項)口頭弁論の期日に確認(177条)

口頭弁論期日における結果陳述 必要なし必要(173条)
弁論を新しく始める
整理後の攻撃防御方法の提出に対する制裁 説明義務(167条)
同左(174条)
説明義務(178条)


「同左」とあるのは、左のマスに挙げられた規定の準用を意味する。
1)@争点整理手続の目的と機能:(東京海上火災保険株式会社 企業損害部提供)争点整理手続とその後の集中証拠調べを軸とする集中審理
目的: 裁判においては、訴訟の早い段階で事件の争点(証明すべき事実)を明確化し、その争点に的を絞って集中的に証拠調べを行うことが、適正かつ迅速な紛争の解決につながる。旧民訴法では、このような争点や証拠の整理手続に関する規定が十分でないため訴訟に時間がかかりすぎると批判されていた。
機能:新民訴法では、従来の口頭弁論中心主義から争点整理手続中心主義へと転換することにより、早期に争点および証拠の整理を行って立証の対象となる事実(証明すべき事実)を明確化し、これに的を絞った集中的な証拠調べを行うなどして充実した内容の訴訟審理を迅速に行うことができるようにした。
@準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続のそれぞれの役割の差異は:
①準備的口頭弁論を実施するか否かは、裁判所の裁量に委ねられている。他の争点整理手続と異なり、公開法廷における口頭弁論の一部として実施されるので、実施に当たって当事者の意見を聞くことは必要ない。社会に与える影響の大きい事件など公開の必要性の高い事件の争点整理は、この手続によりなされる必要性が高い。
②弁論準備手続(168条以下)これは、当事者が事実と証拠を提出して、争点と証拠の整理を行う対席・限定公開の手続である(168条・169条)。この手続は、口頭弁論そのものではないが、口頭弁論に関する規定の多くが準用されており、口頭弁論に準ずる手続である。弁論準備手続は、裁判所が行うほか、受命裁判官に行わせることもできる(171条)。弁論準備手続は、口頭弁論手続ではないので、その結果を口頭弁論において陳述することが必要であり(173条)、陳述されたことのみが裁判の基礎資料となる。結果陳述であるので、各当事者の最終的な主張内容を報告すれば足り、その報告は一方の当事者がなせば足りる。報告をなす当事者は、両当事者の最終的な主張の全体を報告すべきであり、自分に都合のよい部分のみの報告は許されない。弁論準備手続において各当事者に要約書面を提出させ(170条5項・165条2項)、その要約書面に基づいて結果陳述するのが通常となろう。その後の証拠調べによって証明すべき事実、すなわち、当事者間に争いのある事実が何かは、必ず明らかにしなければならない(規則89条)。これらの陳述は、口頭主義・公開主義の充足の意味を有する。受命裁判官が手続を実施した場合については、直接主義の形式的補充の意義もある
③書面による準備手続は、これは、当事者が裁判所から離れた地に住んでいるとき、病気等により裁判所に出頭することが困難であるとき、その他裁判所が相当と認めるときに、当事者の出頭なしに、準備書面の提出等によって争点および証拠の整理をする手続である(遠隔地に居住する当事者にとっては、時間と費用の節約になる)。この手続を実施する場合には、裁判所は、当事者の意見を聴かなければならない。 この手続は、期日を開かずに争点整理を行うので、経験豊富な裁判官が実施する必要がある。そこで、手続主宰者は、裁判長(または、構成員全員が経験豊富であると期待される高等裁判所においては、受命裁判官)とされている(176条1項)。
2)@Cの傍聴について:限定公開とした趣旨をどう捉えるかで、169条2項の裁判所が相当と認めたときの解釈がことなってくる。物理的障害がないかぎり(裁判は公開の原則があるから)傍聴を許可すべきであるという見解がある一方、当事者の萎縮など心理的障害も考慮してよいという見解がある。弁論準備手続は準備手続であって、口頭弁論ではないから、一定程度の限定は差し支えないというのが根拠である。本問の場合はいずれの見解に立っても障害はなく妥当であったと考える。
@準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認する。続いて、証拠調べ(特に当事者尋問・証人尋問)がなされる。証人および当事者の尋問は、できる限り、争点整理後に集中して行うべきである(182条)。交互面接は169条1項の規定からは禁止されていないが(双方が立ち会うことができる期日にて行うとあり、立会権を放棄することを妨げるものではない)、しかし、交互面接をしなければならない合理的理由がある場合が果たして存在するであろうか?
3)@準備手続が終了すると、要約書面の提出、要証事実の確認がなされ、整理後の攻撃防御方法の提出には制裁(新たな攻撃防御方法を提出するには、そのことについて説明しなければならなくなる(174条)がある。この説明に合理的理由がないとき、新たな攻撃防御方法の提出を時機に遅れた攻撃防御方法として却下することが出来る(157条)と解され、これが事実上の抑制措置となる。
4)弁論準備手続は、口頭弁論手続ではないので、その結果を口頭弁論において陳述することが必要であり(173条)、陳述されたことのみが裁判の基礎資料となる。弁論準備手続終了時に、要約書面を提出しなければならない(170条5項)のはこのためである。要証事実もこのときに確認される(170条5項)。しかし、こうした文書・行為は、両当事者の最終的な主張の全体を報告すべきであり、自分に都合のよい部分のみの報告は許されない。弁論準備手続において各当事者に要約書面を提出させ(170条5項・165条2項)、その要約書面に基づいて結果陳述するのが通常となろうし、要証事実の確認も、その後の証拠調べによって証明すべき事実、すなわち、当事者間に争いのある事実が何かを、明らかにするためのものである。それゆえ、Xが提出した「弁論準備手続報告書」は、この類の文書であるか否かで評価は分かれる。
問題は、弁論準備手続期日において、参加者の発言が記録され、その発言を証拠としようとする行為である。要約書の提出の制度趣旨にそうものではないし、弁論準備手続の制度趣旨にも沿わない。けだし、弁論準備手続きは法廷という公開の場の外で、弁論の準備のために、争点を整理するためのものであって、それゆえ、そこにおける当事者や裁判所の発言は、争点の整理に向けて自由な立場で、様々な可能性を探るものであって、こうした場において発せられた中途段階における発言が、後に証拠として提出することが認められることになれば、準備手続の趣旨を反故にしかねないからである。
 それゆえ、これを証拠として採用した裁判所の措置は妥当とは言えない。
Q3
1)攻撃防御方法の提出時期については法定序列主義、随時提出主義から適時提出主義へとその根本思想が変遷している。現在は、訴訟の進行状況に応じて適宜提出しなければならない、とする考えが採用されるようになった(156条)。この適宜提出の担保のために、①争点整理手続、集中証拠調べなどの特別な制度を選択することができ、ここでは攻撃防御方法の提出期間が設定されうるとし、②控訴審でも攻撃防御方法の提出の期間を設定することができ、③時機に遅れた攻撃防御方法は、却下も可能とした(157条1項)。④釈明に応じない攻撃防御方法は却下されうるし(157条2項)、準備手続を経た場合は、準備手続に提出せずして口頭弁論に提出するときは、相手方の求めによりにその理由を書面で説明しなければならない、などの担保を設けている。
攻撃防御方法の提出時期の極端な序列づけは、当事者の攻撃防御の機会を奪うことになって手続的正義にも反するが、かといってまったく制限しなければいたずらに訴訟を遅延させる目的、駆け引き、不意打ちなどによって、攻撃防御の方法を濫用するなどの弊害が生じる。
2)157条の規定の趣旨は、①訴訟遅延の防止にあり、②この遅延が攻撃防御方法の提出をつかってなされることをできるだけ、防止しようとするものであり、③それゆえ、攻撃防御方法が時機に遅れて提出された場合に、それが故意もしくは重過失による場合は、④申立てまたはあ職権で、これを却下することができるとしたものである。
3)弁論準備手続は弁論ではないから、攻撃防御方法の提出について、157条の規制を受けない。すなわち、弁論準備手続において攻撃防御方法を提出しなければならない、という根拠は157条からは演繹できない。しかし、そもそも弁論準備手続は、争点整理手続であり、口頭弁論の期日外ですることができる裁判を弁論準備手続でなすことが認められた理由は、それをなす必要性の高い裁判(弁論の準備と密接に関連する裁判など)が多いからである。そこで174条において、準備手続において提出されなかった攻撃防御については、提出ができなかった理由を説明しなければならない、としたものである。
4)問題は故意または重過失により、攻撃防御方法の提出が遅れてなされたか否かである。①の大蔵省銀行局長通達は、法律の解釈に関するものであり、この提出によって訴訟がいたずらに遅延するものとも思われない(もっとも相手方の反論を準備するためさらに口頭弁論を開くとなると遅延するともいえなくはない)。純粋な法律上の陳述であっても、攻撃防御方法である(攻撃防御方法とは、本案の申立てを基礎づけるために提出する一切の裁判資料をいい、法律上の主張も含まれる:大学双書3-2-12)。
また、かかる攻撃防御は、通達の存在を知りながらあえて主張しなかったという故意は認められないであろうし、またかかる通達の不知が重過失を構成するものとまでは言えないであろう。よって私見では、却下する理由はないものと考える。
5)次に②の暴力団風の男の問題であるが、この男の存在は当事者照会の中にすでに現れており(もっとも相手方はこれに答えていない)、当事者がかかる男の存在を口頭弁論において主張・立証することを失念したことが、故意または重過失を構成する可能性がある。もっとも、この男の存在については、設問のように証人尋問前には明らかになっていなかったというのであれば、故意、もしくは重過失を構成することはない。もっとも、かかる主張・立証が新たな訴訟物を構成すると考えられるので、一概に却下するのは適当でない、ということはできない。
6)当事者の審判の請求は、そもそも①取引経過の開示義務を被告が拒み、②原告は適時に債務整理の手続を行うことができず、③よって精神的苦痛を被ったというものであるから、強引な取立てにより精神的苦痛を被ったという新たな攻撃防御の主張とは、相容れないものである。そうすると、新たな攻撃防御の申立ては、その実、新たな訴訟物の追加を意味するが、それは本来、訴えの追加的変更によってなされるべきものである。訴えの追加的変更は:
訴えの変更
     定義:訴訟係属中に、請求の趣旨もしくは原因またはその双方を変更することによって、申立事項の同一性や範囲を変更することをいう。
     制度趣旨:当初の訴えが紛争の解決に不適切であることが判明したとき、申立事項を変更することを認めるもの
     訴え変更の態様:ⅰ)請求の範囲のみ変更する場合(請求金額のもの増減など)①請求の拡張については反対が少ない(例外伊藤)②請求の減額は一部取下げか一部放棄とみるかで学説が対立。ともあれ訴えの変更ではない。
       ⅱ)請求の同一性の変更:訴訟物理論により見解が対立
        ①追加的変更は、旧請求を維持しつつ、新請求を追加する(土地所有権の確認に明渡しを追加)単純併合、予備的併合、選択的併合に分かれる。
         ②交換的併合は、旧請求に代えて新請求の審判を求める場合で(たとえば特定物の引渡請求を、填補賠償請求に変更する)判例は、訴えの追加的変更と取下げの組み合わせとみる。この判例に対しては、学説(多数)は、旧請求の審理結果を新請求の審判に利用できず、時効中断の効力も引継がれることの説明ができないと批判する。
      訴え変更の要件:ⅰ)請求の基礎に変更がないこと。社会生活上同一または一連の紛争に関するもので、両請求(変更前と後の請求)が主要な争点を共通にし、従前の訴訟資料が流用できるのであれば、「請求の基礎に変更がない」と言える。たとえば売買代金の支払い請求が無効と判断される場合に備えて、目的物の返還請求を予備的に追加請求する場合である。また所有権確認請求に、そのものの引渡を請求する場合もこれにあたる。被告に対する不意打ちを防止するための要件であるから、被告の同意または異議なき応訴があれば、この要件は控訴であっても(審級の利益を放棄していると解されるので)不要である。被告の陳述した事実をもとに請求を変更する場合も被告の同意は不要である(請求の基礎が同一でなくとも被告に不意打ちによる不利益はないから防御目標の不当な変更を強いることにはならない。
ⅱ)事実審の口頭弁論終結前であること。
ⅲ)著しく訴訟を遅延させないこと(143条1項但)。
ⅳ)交換的変更の場合は被告の同意が必要。        。
           旧請求の訴訟資料は新請求の資料となる。
143条1項但書によって著しく訴訟を遅延させないこと、という要件があり、本件はこれにあたるものと解される。そこで、157条1項による却下は可能であるものと解する。こう解しても、原告は別訴において損害賠償を請求しえるので、なんら不都合はない。
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by civillawschool | 2006-07-06 12:09
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