大学院民訴レジュメ

民亊総合4 民訴部分

山陰法科大学院3年の授業レジュメです。
6月16日から始まる民亊総合Ⅳの配布資料です。
民訴LS課題集の宿題部分を除く解答例です。教室で配布するものと同じものです。
宿題部分の解答例は、6月23日に宿題回収後に教室で配布し、かつここでも掲載します。

民訴LS課題集 解答例

重複起訴の禁止と相殺の抗弁 unit2
レポート課題としてはQ2の5ないし6が適当か?
重複起訴禁止
二重起訴の禁止
    定義:同一当事者間で訴訟が係属しているとき、同一訴訟物または、この訴訟物と密接に関連する訴訟物について当事者が重ねて本案の審理を求めることを禁じる原則のこと。
    制度趣旨:裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避ける
 二重起訴の要件①「重ねて」の意味は、裁判所の間に審理の矛盾、抵触を避けるためであるから、係属中の訴訟手続において反訴を提起したり、訴えを追加的に変更することは二重起訴の禁止の原則に触れない。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおけるこの債権の履行を求める給付の訴えを反訴することは認められる。
   ②訴訟物が同じ、または密接に関連していることの意味
         訴訟物が同一であることに問題はないであろう。訴訟物は請求の趣旨と請求の原因によって特定される。審判の対象は請求の趣旨が同じでなくとも、近似する場合がある。たとえば所有権の確認と所有権にもとづく引渡し請求や、登記請求である。

③当事者が同一であることとは。
被告・原告が入れ替わっても当事者は同一といわれる。たとえば、債権の不存在確認の訴えにおける被告が、この債権の履行を求める給付の訴えを、別訴で提起することは認められない。

手形小切手訴訟
 証拠方法の制限(352条):書面(手形の券面)に限る
 反訴の禁止(351条)
 1期日審理の原則(規則214条)
 控訴の制限(356条)控訴の禁止ただし、却下判決に対しては例外
14-1-2 手続
 請求適格 ①手形による金額支払請求と②これに附帯する法定利率による損害賠償に限られる
 手形訴訟を選択すると、そのことを訴状に記載(350条2項)訴状に手形の写しを添付(規則55条1項3号)
 管轄:普通裁判籍、特別裁判籍もある(支払地)事物管轄は地裁・簡裁
14-1-3 弁論・証拠調べ
 弁論:原則一回で終了、やむをえないとき15日以内
 証拠調べ:書証に限る(352条1項)手形、契約書の写し、自己が所持する文書に限られる、ただし文書の成立の真否と手形の呈示に関する事実については、当事者尋問ができる。職権調査事項に関してはこの限りでない(352条5項)
14-1-4 手形判決
  手形訴訟の要件を欠くとき、却下。
  請求認容または棄却の判決には控訴はできない。
  原則仮執行宣言
14-1-5 原告は訴え提起後、口頭弁論の終結前なら被告の同意なしに通常訴訟に移行を申立てることができる(353条)。
14-1-6 手形本案判決に対しては異議による移行がある。判決送達後2週間、書面で。
 異議によって口頭弁論終結前の状態に戻り、通常訴訟に移行。

Q1
1)まず、第二訴訟が手形訴訟でないとすると、判例は、肯定的である(ちなみに第二訴訟が先行している場合について、判例はないものの否定的であろうと推測される)。しかし、兼子教授の主張では、確認の訴えが先行している場合でも第二訴訟は重複訴訟となる。第二訴訟における請求は、第一訴訟において訴えを変更したり反訴を提起すれば十分であると考えている。訴訟物に関して、判例は給付の訴えが棄却されても必ずしも請求権の不存在は確認されないということを理由にしているが、兼子教授は実質的な救済方法の有無(反訴や訴えの変更)と、重複審理による不利益を衡量している。
しかし、東京地判(資料4)にあるように、第二訴訟が手形訴訟であるなら、かような訴えは認められる。それは手形訴訟の特質(迅速な裁判)からくるものである。
2)手形訴訟では反訴が禁じられている。そこで別訴で争うことも(二重起訴の禁止から)禁ぜられることはない(資料3)。
3)まず、第二訴訟が手形訴訟でない場合から考えてみよう。
債務不存在確認の訴えに対して給付の訴えを起こせるかという問題であるが、消極的確認訴訟に被告が勝訴しても給付判決が得られるわけではないので、訴えの利益はある。これを両訴が審級を異にしている場合も考えると否定的に考えるべきではないこともちろんである。資料6の判決もこのことを確認している。
そうして、第二訴訟が手形訴訟であっても、このことを変更する理由はないから、第二訴訟が手形訴訟でも、重複起訴には当たらない。
 4)反訴の申立てによって、本訴は実は反訴請求の棄却の申立てに転化する(資料7)と考えられるから、実際の審理は一本化すると考えてよい。

Q2
相殺と重複起訴
二重起訴の禁止と相殺の抗弁
   訴訟物たる債権を自動債権として予備的に抗弁する場合、自動債権の一部は一部請求としてすでに訴訟における審判の対象となっているが、それがもうひとつの訴訟において被告としてその債権の主張しなかった残額について予備的抗弁として提出した場合は、訴訟物は同一ではない(却下すべきでない)。しかしそれ以外の場合は二重起訴禁止として扱う。

1)手形訴訟においても券面上に現れない人的抗弁などの提出も許されるが、証拠制限が適用される関係上その立証が困難である(兼子502頁)。悪意の抗弁の成否を判断する材料がなければ、そのことについて証明責任の分配法則にしたがって、悪意はなかったものと裁判所は判断するのが正しいやりかたである。もっとも原告は口頭弁論終結前ならいつでも通常訴訟へ移行させることができるから(被告はできず、手形本案判決に異議申立てする)、通常訴訟に移行していれば、被告の証明活動はより自由になる。
相殺の抗弁については、文書による提出が可能なので、この点では、Yの抗弁が容れられる可能性が高い。
2)相殺の抗弁が却下され、あるいは無意義に帰した場合の相殺の効力はどのように解消されるのか、という問題である。民法上の意思表示として相殺の意思表示がなされた場合は、相手方に到達すれば直ちに対等額において自動債権と受動債権は対等額の範囲で消滅するが、訴訟において相殺の抗弁を提出した場合には、それを訴訟行為と捉え、その訴訟手続の行方によっては、不都合が生じないように取効的訴訟行為の特色である、判決で取り上げられないときは効力を失うとの立場をとるべきか(訴訟行為説)という問題である。しかし、わが国の手続法には相殺に関する特別な規定はない。
 そこで、裁判で取り上げられなかったときは、相殺の意思表示は撤回されるとの意思表示を付随的(条件として)に含んだ私法行為(新私法行為説)などの解釈をとる必要がある。
3)訴訟物たる債権を自動債権として抗弁する場合、自動債権はすでに訴訟における審判の対象となっているので、それがもうひとつの訴訟において相殺の抗弁として提出することは、基本的には、重複起訴の禁止に抵触する。審理の重複をさけ、矛盾する判決が生ずることによる法的安定性の侵害を防ぐためであると説明される。
4)相殺の抗弁として提出していた債権の給付を、後から請求する訴訟は重複起訴の禁止に触れるか、という問題である。
場合を分けて考える必要がある。第一は、相殺の抗弁についてすでに撤回したことが認められる場合であり、第二は、撤回の事実が確認されない場合である。第二の場合には、重複起訴の禁止に触れる。しかし、すでに撤回が代理人の陳述や弁論の全趣旨から認められる場合には、相殺の抗弁はもはや存在しないのだから、重複起訴の禁止に抵触すべきではない、と考えるべきであろう。
       
処分権主義 unit7
処分権主義による訴訟の終了など
講義の主題・ポイント:処分権主義に基づく具体的な制度の運営について理解する。
キーワード:訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解

17-1-1 私的自治原則の訴訟手続における表現として訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解などの処分権主義による訴訟の終了があげられる。処分権主義は、訴訟物に関して現れる(246条:判決事項)に限られない。当事者の処分行為によって当事者の対立そのものが解消してしまう(実質的に紛争がなくなる)ので、訴訟は終了するし、裁判所はこれに対抗することができない。

百選判例 46 一部請求における残部債権による相殺   
Issue(事件の概要):YはXに対してXの違法な仮処分申請によって、本件建物の持分を通常の価格より低い価格で売却することを余儀なくされたとの理由で、通常価格との差額2億5000万円余が損害であると主張し、その一部である4000万円を請求した。他方XはYに対してYが支払うべき相続税などを立て替えて支払ったとして、Yに対して不当利得を理由として、1296万円の返還を求める訴え(以下本件訴訟という)を提起した。本件訴訟において、不当利得返還義務の存否を争うとともに、予備的に別件でYがXに対して起こしている訴訟における損害額(2億5600万円)のうち4000万円の請求を越えた部分(2億2000万余)および上記違法仮処分に対する異議申立手続の弁護士費用、遅延損害金の合計を自動債権とする相殺を主張した。
 第一審は相殺の抗弁を認めて請求棄却、原審は相殺の抗弁を認めなかったためXが上告した。
Rule(法):すでに係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自動債権として他の訴訟において相殺の抗弁をすることは許されない(最判判例:重複起訴の禁止:民訴142条)。その理由として①争点が同じでるから重複審理を余儀なくされ、②異なる判断が下される恐れがあるからである。逆に係属中の訴訟において相殺の抗弁をしている自動債権を別訴において訴求することができるかについては争いがある。
 次に一部請求が許されるか、という問題であるが、債権の一部であることを明示して請求することは、処分権主義の立場からは認められてよさそうである。しかし、訴訟物をこの一部として扱うと、残部請求については別訴で争いうるから、事実上の矛盾判決が生ずるおそれがあり、また訴訟経済上も重複審理という点で好ましくないとの批判がある。そこで債権全体を訴訟物とみるという見解も主張されている。判例は明示的に分断されていれば、それぞれが訴訟物であるとの立場をとっている。
Analysis(分析):本件ではすでに係属している訴訟では、債権の一部請求をしており、その残部を自動債権として相殺の抗弁をなした、というものであるから、従来の判例理論からは矛盾しないこととなる。しかし、実質上、重複審理をすることを認めることになるので、裁判所は、この問題を相殺の抗弁を主張する当事者に負担をかけるべきでない、との視点から救済している。いわく、「相殺の抗弁に関しては、訴えの提起とは異なり、相手方の提起を契機として防御の手段として提出されるものであり、・・・一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなどの特段の事情の存在する場合を除いて、正当な防衛権の行使として許容されるものと解すべきである。」としている。
 相殺の抗弁を「防衛権の行使」として捉えるのは、相殺に担保的機能を認めているからであり、かかる機能を剥奪すべきでないとの配慮を、一部請求外の部分での債権について認めた判断は妥当なものといえよう。

Conclusion(結論):判決に賛成


Q1 
1)訴訟物は50万円を越ええる債務の不存在であるから、50万を越え無限大までの債務の部分ということになる。それゆえ、50万1円の債務を裁判所が認めてときも、5000万の債務を認めたときも請求の一部認容一部棄却(棄却部分は50万1円なら50万2円から先の部分が不存在であることが認容され、5000万のときは、5000万1円から先の債務の不存在が認容されたことになる。)である。
2)審判の対象は債務の不存在確認といっても問題となっている債務が発生していないことが、審判の対象であり、債務が発生しなかった、ないし消滅したということが審判の対象である。確認の訴えにおいては、紛争がすでに存在し、その権利・法律関係(およびその範囲)が審判の対象である(大学双書p42:1998)。相手方の主張する権利・法律関係が存在しないことを主張・立証するためには、相手方の主張に根拠のないことを示す必要があるが、相手方がそれを明確にしていない場合でも、かかる主張・立証は不可能ではないであろう。まったく、知らない、あったこともない、などの主張は不可能ではない。
 本件に即して考えてみると、ZはYに対して事故を起こしており、何らかの債務が発生していることは明らかなので、その債務の範囲を明確にすることが訴訟活動の主要な部分となろう。Yがこの訴えに対してこれを認容するつもりがないのであれば(抗弁を提出するということは争うつもりのようであるが)、問題はない。しかし、争うなら、Yもまた自己の被った損害(Zに責任があるとの部分も含めて)の立証(結局それゆえ50万円を越えて債務が存在するとの抗弁)をすることになる。
3)50万円以下の債権については審判の対象となっていない、と解される。けだし、判決で確定したのは50万円を超えて債務は存在しない、ということであって、50万円以下の部分については、債務があるともないとも確定されたわけではないからである。
Q2
1)引換給付判決は、当事者(被告の同時履行の抗弁など)の処分行為なくしてはなしえないか、という問題である。引換給付判決は、同時履行の抗弁権が提出されたときには、これをなさなければならないし(資料2)原告がこれを求めていなくとも、抗弁権が提出されていれば、引換給付ということになる(資料3他に最判昭和33.3.13他双書1998年版355頁)。しかし、被告が同時履行の抗弁権を主張・立証していないときは、かかる給付判決は処分権主義に反する。もっとも引換給付判決はいわば申立事項に対し一部認容判決ではないか、との主張も考えられるが(資料6において立退料についてはそれが正当事由の補完的なものであるならば、このように解している)、引換給付においてはその対象が当事者の主張をまってみないと確定しないものであることにかんがみると、また同時履行が権利抗弁であることから、かような主張は受け入れがたい。
2)既判力とは確定判決に対して与えられる通有性ないし拘束力をいう(高橋宏志『重点講義 民事訴訟法』2002有斐閣499頁)から、判決の主文において引換給付が命ぜられているのであれば、商品引換訴訟について既判力が及ぶと解してよいであろう。
3)立退料については、まず①正当事由の補完的意味合いを持つものと、他に正当事由がなく、立退料のみが正当事由に該当する場合が考えられる。前者であれば、それは立ち退きの請求に対する一部認容判決の意味をなすから、問題はない。立退料の支払がはじめて借家法1条の2の正当事由を充足する場合、それは主要事実を構成するから口頭弁論で主張されるころを要する。次に②予備的に、立退料と立退きを引換給付することを求めたとき(こういった場合が多いようである)、これは一部請求の一種と捉えることができる。この金額を減額することは原告の求めた以上のものを原告に与えることになるので、186条(現行246条)違反となる。逆に立退料を増額することは、請求の一部認容になるので差し支えないが(これを裁判所の当事者の意思解釈という形で補完するという論法もある:資料6の136頁)、しかし、その増額の度合いが極端であれば、もはや当事者が求めた裁判ということはできず、処分権主義に反することになる。原告が立退料の支払の意思は示しながらその金額を明示しないときは、立退料との引換給付判決は一部認容判決として解釈すれば足りる。
5)引換給付判決の執行に関して、民事執行法はその31条1項で「債務者の給付が反対給付と引換にすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付またはその提供のあったことを証明したときに限り、開始することができる。」と規定している。しかし、執行文の付与そのものは27条1項の「債権者が証明すべき事実の到来に係る場合」にはあたらないと解される。執行文の付与を受けて、次に反対給付の提供を執行開始の段階で証明すればたりるからである。引換給付判決は条件付判決とは違う、と解される。条件付判決であるなら、その条件の成就を債権者が証明しなければ、執行文の付与は受けられないこととなる。このためには、その金額を供託し、これをもって27条1項の執行文付与のための証明とすることが必要となる。
Q3
 控訴の利益(控訴権)
 定義:第一審よりも有利な判決を受ける可能性。
  全面勝訴しても控訴することができるという説(実体的不服説)と第一審の判決主文と控訴の趣旨を比較して、決定するという説(形式的不服説)が対立している。既判力が判決主文に包含するものに生ずる(114条)のだから、形式的不服説がよい。
 ただし、別訴禁止規定(人訴25条)などが存在する場合、その訴訟内でしか関連請求の機会がないので、全部勝訴者にも、関連請求(たとえば離婚請求棄却判決を得た被告の離婚の反訴)を持ち出すために控訴の利益を認めるべきであると言われている。予備的相殺の抗弁勝訴した被告は、自己の反対債権の不存在が既判力で確定されてしまうので(114条2項)別の理由での勝訴を求めて控訴する利益を認める必要がある。
 附帯控訴:相手方の控訴による控訴審手続において、被控訴人が原判決に対する自己の不服を主張して控訴審の審判請求を自己に有利に拡張する申立てをいう(293条)。

1)控訴がXによってなされたのであれば、控訴審においては、不利益変更禁止の要請が働くから、控訴審裁判所が債権額は140万であるとの心証を得たとしても、当事者の申立てていない判決の変更は許されない。かような事態に対してYは附帯控訴をしておけばよい。
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by civillawschool | 2006-06-14 15:36
<< 感想雑感 司法試験 >>



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