大学院民訴レジュメ

第23講 第24講    12日目 


12日目
第23講 同一当事者間における複数請求の扱い
講義の主題・ポイント: 訴えの客観的併合(請求の併合)、訴えの変更、反訴、中間確認の訴えを理解整理する。
キーワード:客観的併合、訴えの変更、中間確認、請求の併合

12-1-1 訴えの客観的併合
     訴えの客観的併合の発生原因
        原始的発生原因・・・固有の訴えの客観的併合(136条)
                   (同種の訴訟手続による場合)

                 ・訴えの変更(143条) 請求の基礎に変更がない
                 ・反訴
        後発的原因・・・・・中間確認の訴え(145条)訴訟が法律関係の成立
                   または不成立に係わるとき                       
                 ・口頭弁論の併合(152条)裁判所の命令による


     客観的併合の要件ⅰ)数個の請求が同種の訴訟手続によって審判されるもの
               例外:離婚と離婚原因の損害賠償(人訴8条1項)            
             ⅱ)法律上併合が禁止されていないこと
             ⅲ)各請求につき受訴裁判所に管轄権があること(管轄については併合請求で管轄が生ずるので問題なし)

12-1-2 併合の態様   ⅰ)単純併合
            ⅱ)選択的併合 ひとつの請求が認容されることが他の請求の審判申立ての解除条件とする 例:債務不履行による損害賠償と不法行為による損害賠償
            ⅲ)予備的併合 論理上両立しえない請求に順位をつけてする 例:売買代金請求だめなら目的物の返還請求
12-1-3 控訴審と選択的併合・予備的併合
      上訴不可分の原則:併合の態様を問わず、ひとつの請求について上訴するとすべての請求について上訴が成立するが、不利益変更禁止との関係で選択的併合と予備的併合では問題あり。   
    予備的併合の場合:ⅰ)第一審が主位請求認容(予備的請求については審判なし)。全部勝訴判決である。被告が控訴。控訴審裁判所が主位請求理由なしと判断。予備的請求について審判することはできるか。Yes最判・通説 予備的請求も移審しているし、訴備的請求を追加できるではないか
    ⅱ)第一審が主位請求棄却、予備的請求認容の場合:一部認容、一部棄却の場合である。原告・被告とも控訴できる。 
原告のみが控訴した場合。控訴審が主位請求認容の場合、予備的請求について審判の必要はなくなる(第一審の判決は失効するのでこれを取消す必要ないが、原判決を全部取消して判決という説も有力)
        被告のみが控訴した場合。実質的には予備的請求の部分のみである。(上訴不可分の原則があるので移審するのは全部だが)審判の対象は予備的請求部分のみということになる。予備的請求は棄却すべきとの判断
       にいたっととき、原審判決の予備的請求認容のみ取消して予備的請求を棄却する判決を出す(多数説・判例百選115)しかし、それでは原告は両方の請求で敗訴することになるので、原告に附帯控訴の意思を確認する釈明をする。反対説は、こんなことをしなくても主位請求について審判できると解する(新堂)
   選択的併合の場合:債務不履行と不法行為の選択的併合の事案で判例(最高昭58.4.14判時1131号81頁昭和59年度重判143頁)は、全審級を通じてひとつの請求が棄却されるなら他の請求について審判を求めるという原告の意思は維持されるとして、甲請求を認容、乙請求は棄却という第一審判決に対して被告のみが控訴した事案で、甲請求のみが審判対象となるとして審理の結果甲請求を棄却した原審判決を破棄し、差戻した。この判決と百選115(予備的請求に関する判決)とは矛盾すると言われている。判例変更と解釈すべきか?
12-1-4 訴えの変更
     定義:訴訟係属中に、請求の趣旨もしくは原因またはその双方を変更することによって、申立事項の同一性や範囲を変更することをいう。
     制度趣旨:当初の訴えが紛争の解決に不適切であることが判明したとき、申立事項を変更することを認めるもの
     訴え変更の態様:ⅰ)請求の範囲のみ変更する場合(請求金額のもの増減など)①請求の拡張については反対が少ない(例外伊藤)②請求の減額は一部取下げか一部放棄とみるかで学説が対立。ともあれ訴えの変更ではない。
       ⅱ)請求の同一性の変更:訴訟物理論により見解が対立
        ①追加的変更は、旧請求を維持しつつ、新請求を追加する(土地所有権の確認に明渡しを追加)単純併合、予備的併合、選択的併合に分かれる。
         ②交換的併合は、旧請求に代えて新請求の審判を求める場合で(たとえば特定物の引渡請求を、填補賠償請求に変更する)判例は、訴えの追加的変更と取下げの組み合わせとみる。この判例に対しては、学説(多数)は、旧請求の審理結果を新請求の審判に利用できず、時効中断の効力も引継がれることの説明ができないと批判する。
      訴え変更の要件:ⅰ)請求の基礎に変更がないこと。社会生活上同一または一連の紛争に関するもので、両請求(変更前と後の請求)が主要な争点を共通にし、従前の訴訟資料が流用できるのであれば、「請求の基礎に変更がない」と言える。たとえば売買代金の支払い請求が無効と判断される場合に備えて、目的物の返還請求を予備的に追加請求する場合である。また所有権確認請求に、そのものの引渡を請求する場合もこれにあたる。被告に対する不意打ちを防止するための要件であるから、被告の同意または異議なき応訴があれば、この要件は控訴であっても(審級の利益を放棄していると解されるので)不要である。被告の陳述した事実をもとに請求を変更する場合も被告の同意は不要である(請求の基礎が同一でなくとも被告に不意打ちによる不利益はないから防御目標の不当な変更を強いることにはならない。
ⅱ)事実審の口頭弁論終結前であること。
ⅲ)著しく訴訟を遅延させないこと(143条1項但)。
ⅳ)交換的変更の場合は被告の同意が必要。        。
           旧請求の訴訟資料は新請求の資料となる。
12-2-1 反訴
     定義:訴訟継続中に、被告が同一手続で原告に対して提起する訴えのことである。
     要件:ⅰ)事実審口頭弁論終結前であること。
        ⅱ)反訴請求が本訴請求またはこれに対する防御方法と関連すること(相手方の同意、応訴があればこの要件は不要)。  
        ⅲ)同種の手続、他の裁判所の専属管轄に属さないこと。
12-3-1 中間確認の訴え
     定義:訴訟継続中にその請求の先決問題たる法律関係の存否について確認判決を求める申立である。
     審理は主たる請求と併合し、判決は一個の全部判決でする。
     主請求が取下げまたは却下されたときでも確認の利益があるので、独立の訴えとして扱う。

百選判例 115 不服の限度――控訴しない当事者の請求 
Issue(事件の概要):XとAは婚約しておりY(Aの母)の所有・経営するスナックの改装に関し、Aが工事の交渉をした。またXはAに預金通帳と現金を預けていたが、その中から改装工事代金として211万円を請負業者に支払った。
XはYに211万円の支払いを請求。Xの主張は、ⅰ)AはXの無権代理人としてYに211万円を貸し付けたか、立替払いしたが、Xは後でAの無権代理を追認しているので、YにはXに対して消費貸借上の債務または立替契約上の債務がある、ⅱ)仮に前記の契約の一方の当事者がXでなくAであるとしても、XはAに債権を有しているので、債権者代位による支払いを求める、ⅲ)仮に前記の二つの請求が成り立たないのであるならば、(予備的に)不当利得による返還を求める。
 第一審は、ⅰ、ⅱを棄却し、ⅲを認容した。Yのみが控訴。控訴審は、ⅰ、ⅱについては、「Xが控訴ないし附帯控訴の申立をしていないので、右部分に関する当事者の主張の当否は、当審における審判の対象となっていない」として、ⅲの請求については、XはAが改装工事の費用を上記金員から支出することを目次的に承諾していたと認定し、第一審判決を取消し、これを棄却した。
 X上告。主位的請求ⅰ、ⅱについて判断せず、予備的請求ⅲについてのみ判断した原審には違法がある。仮にⅲ以外の請求につき審判するために、控訴または附帯控訴が必要であると解するならば、原審は、Xに附帯控訴するか否かの釈明を命じるべきであり、これをしなかったことは釈明義務違反である。
 上告棄却 
Rule(法):第一審が主位請求棄却、予備的請求認容の場合:一部認容、一部棄却の場合である。原告・被告とも控訴できる。 
原告のみが控訴した場合。控訴審が主位請求認容の場合、予備的請求について審判の必要はなくなる(第一審の判決は失効するのでこれを取消す必要ないが、原判決を全部取消して判決という説も有力)
 被告のみが控訴した場合。実質的には予備的請求の部分のみである。(上訴不可分の原則があるので移審するのは全部だが)審判の対象は予備的請求部分のみということになる。予備的請求は棄却すべきとの判断にいたっととき、原審判決の予備的請求認容のみ取消して予備的請求を棄却する判決を出す(多数説・判例百選115)。
しかし、それでは原告は両方の請求で敗訴することになるので、原告に附帯控訴の意思を確認する釈明をする。反対説は、こんなことをしなくても主位請求について審判できると解する(新堂)。
Analysis(分析):不服申立の範囲はどこまでで、それが上訴不可分の原則との関係、当事者の処分権との関係でどう解すべきか、という問題である。
 本件のような場合、被告が第一審判決に不服なのは、予備的請求の部分のみである。これに対して原告は主位的請求二つについて不服であっても控訴しなかった、という事情をどのように考えるばきであろうか。
 通説判例なら、予備的請求であっても、それが認容されているので原告には不服はなかったと解することに問題はなかったようにも思える。もし、上訴審で覆るようなことがあるならば、と主位請求を予備的にでも上訴すればよかったのであろうか?判例・通説は不服申立の範囲について硬直的すぎるのではないか。
Conclusion(結論):判例に反対

第24講 当事者の交代の諸形態
講義の主題・ポイント:訴訟承継と承継後の実体関係について理解を深める。
キーワード:訴訟の承継
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配布資料あり
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24-1-1訴訟承継
  定義:訴訟係属中、実体関係の変動の結果、訴訟物について当事者の有する適格が第三者に移転したことによって、その第三者(承継人)が従前の当事者に代わって、あるいは従前の当事者とともに、訴訟を引き受けること。
  新旧の当事者間に訴訟上の地位の連続性があることが、必要であり、これがないとき任意的当事者変更となる。
 訴訟の承継は訴訟経済の面から、また紛争の実効的解決のために必要と考えられている。一定の事由がある場合にする「当然承継」と申立によって発生する「参加承継・引受承継」がある。

24-1-2当然承継
 当然承継の原因は、訴訟手続の中断・受継の規定から導出される(124条1項各号)*当事者の死亡、法人の合併、当事者の訴訟能力の喪失、法定代理人の死亡、代理権の消滅、受託者の信託の任務終了、など
 手続の中断をともなうときは、受継申立を受け審査をする。
 中断を伴わない場合(訴訟代理人がいる場合:124条2項)、判決に承継人が当事者として表示される。
24-1-3 参加承継・引受承継
  定義:係争物の譲渡など、紛争の基礎をなす実体関係に特定承継があったために当事者適格が第三者に移転した場合に、その第三者の訴訟参加の申立によって生ずる(参加承継:49条51条)、あるいは、相手方当事者の訴訟引受申立によって生ずる(引受承継:50条、51条後半)
@参加承継は権利承継人の場合、引受承継は義務承継人の場合を前提としているが、義務承継のあった場合に義務承継人が自ら進んで参加する(参加承継する)ことも、権利承継人の相手方が承継を引き受けてする引受承継もありうるとするのが通説・判例。 
 承継原因:実体関係において特定承継があったこと。権利の譲渡などの場合だけでなく、代位や執行処分(執行売却・転付命令)でもよい。紛争の主体たる地位の移転があることが要件である:土地賃貸借契約終了を理由とする建物収去土地明渡訴訟の係属中に、被告がその所有する建物を第三者に賃貸占有させた事案において、訴訟引受を認めた判例がある(最昭41.3.22)
 承継後は、新当事者は、前当事者の訴訟状態の地位を引き継ぐ。

24-2-1 任意的当事者変更
  定義:適格者が当事者となっていない場合に、①原告が被告適格者にその訴えを向け変え、または②原告適格者が原告に代わって訴えを提起することをいう。
 法文上の規定がないため、議論がある。通説・判例は新訴の提起と旧訴の取下げとみるので、新当事者は、従前の訴訟状態に拘束されない。もっとも従前の訴訟行為を援用または追認すれば、従来の訴訟追行の結果が流用でき、相手方はこれを拒めないと解すべきであると解されている。
 これに加えて、新旧当事者間に密接な関係があり(例:会社とその代表者)、新被告が旧被告に対する訴え提起を了知しうるとき、時効の中断効や、出訴期間の遵守の効果も引き継がせてよいのではないか、という議論がある。
 場合によっては、表示の訂正のみで足りる場合も少なくない。
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配布資料の質問に答える形で、授業をしていく
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by civillawschool | 2006-01-24 16:03
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