大学院民訴レジュメ

IRAC方式による判例百選その5

民事訴訟法Ⅰ     
  学籍番号          氏名               

百選判例 96 判決の反射的効力
Issue(事件の概要):前訴においてYは亡Aに対して有していた債権150万円(貸与)の返還をAの相続人Bら求めるとともに、Aの連帯保証人X他1名にも支払いを求める訴えを提起した。BらはYの請求原因事実を争ったが、Xはこれを認めたため弁論が分離されXに対しては請求を認容する判決が下され確定した。その後、Bらに対してYの請求を棄却する判決がなされ、控訴審を経て確定した。
 YはXに対する判決にもとづきXの山林の強制競売の申し立てがなされた。これに対してXは請求異議の訴えを提起したのが本件(後訴)である。YB間の確定判決によって主債務の不存在が確定したのだから、連帯保証債務の附従性にもとづいて自己の確定判決の執行力の排除を求めうる、との理由である。第一審X勝訴、原審Xの請求棄却、X上告。上告棄却
Rule(法):反射効とは、当事者間の判決の効力を第三者が援用することを認めたり、当事者が第三者に対して判決の効力を主張できる効力のことをいう。第三者が当事者の一方の勝訴または敗訴を条件として法律行為をなし、債務を負担した場合には、当事者間の判決の結果は、債務の不存在に影響を与えるが、保証債務の附従性のように、主債務の存在を条件として保証人が債務を負担したとき、条件付法律行為がなされていなくても、これと同視して、保証人は主債務についての請求棄却判決を自己に有利に援用できることを認めるべきである、というのが反射効の出発点である。保証債務のほか、民法436条の相殺の絶対効、民訴114条2項による相殺の抗弁について既判力を根拠に連帯債務履行請求判決と他の連帯債務者との間に、反射効を認めるべきであると主張され、賃貸人と賃借人の賃借権確認判決を転貸借の転借人の地位に認めるなど、その領域を拡張してきているが、最高裁は反射効を否定している。
Analysis(分析):反射効を認めることは、判決が第三者にも及ぶことを意味するが、①それが、その判決によって不利益を被る第三者の手続保障と、②判決の効果が拡張することに関する法的明確性(安定性)の要求の観点から考察すべきである。①の点については、本件では、債権者は主たる債務についてすでに敗訴しているのだから、格別不利益はないようにも写る。しかし、債務不存在の判断は保証債務の附従性からその存否に関わる以上、容易に当事者の関与なくしてその債務の不存在を確認すべきではないであろう。また、このような視点に立つとき、反射効を法律上の根拠なくして認めるべきではない。
Conclusion(結論):



百選判例 110 独立当事者参加における敗訴者の一人による上訴
Issue(事件の概要):訴外AはYに対して有する工事請負代金債権のうち150万円をXに譲渡したとして、XがYに対してその支払いを求める訴えを提起した。ところがZ(参加人・被控訴人・被上告人)もまた同一債権をAから譲受け、その通知はYになされているため、Yは請負代金82万4600円を供託した。ZがX・Y間の訴訟に独立当事者参加の申立をした。Xに対しては、XのYに対する150万円の債権の不存在確認と、ZがYのした供託金還付請求権を有することの確認を請求し、Yに対しては、Zの供託金還付請求権の確認とともに、譲受債権額150万円から供託額を差し引いた金額の支払いを請求した。
 第一審判決は、Aの請負代金債権の現存額は82万9800円であること、それがXとYに二重に譲渡され、対抗関係ではZがXに優先することを認定して、XのYに対する請求を棄却し、ZのXおよびYに対する供託金還付請求権のへ確認請求を認容、ZのYに対する金員の支払請求につき供託額を超える5200円の限度で認容する判決をした(ちなみに、ZのXに対する請求のうち、XのYに対する債権不存在確認は、ZのYに対する債権者であることの積極的確認を求めるべきであるとして棄却している)
 XがY およびZに対して控訴。Yに対しては150万円の支払いを求め、Zに対してはその請求の棄却を求めた。
 控訴審判決:AのYに対する債権は、XとZの間では、Zに優先して譲渡されていることを認定、またYの供託は債務の本旨に従った供託ではない(わずか2分の1を過ぎたものにすぎない)として、第一審判決中、XおよびY敗訴部分を取り消し、XのYに対する150万円の支払い請求を認容、ZのXおよびYに対する請求を棄却した。また控訴審は、第一審判決中のZのYに対する金銭請求を一部認容し、Yに対し5200円の支払を命じた部分も控訴審の審判対象となっている点については、本件のように「当事者の1が他の2者を相手に控訴した時も、他の2者は常に被控訴人に止まるのではなく、ある時点においては控訴人と利害を同じくして他の1に対して対立する関係にあるものは、これに対しては控訴人の地位に立つ。そして、実際に控訴した者、利害を同じくすることによって控訴人の地位に立った者の不服の範囲が控訴審における審判の対象となる」としている。
 Z上告。第一審でZに敗訴したYは控訴していないから、ZとYとの間の参加訴訟は、第一審判決のとおりに確定しており、Xの控訴に基づく控訴審における審判の対象にはならない等と主張した。
 上告棄却。3者において合一にのみ確定すべき場合に当たる・・・(ZのYに対する請求を認容した第一審判決部分は)Xの控訴のみによって遮断され、Yの控訴または附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のために必要な限度で・・Zに不利益に変更することができる」
Rule(法):独立当事者参加とは、当事者の一方に参加する共同訴訟参加と異なり、原告・被告の双方を相手方として、の間の請求と関連する自己の請求を、同時に、かつ矛盾のない審判を求めて参加することをいう(47条)。
Analysis(分析):そうすると、本件のように当事者の一人が控訴することで、控訴ないし附帯控訴していない当事者間の関係にまで、その判断(審判)が及ぶことになるとき、控訴審裁判所は、かかる2者の間の第一審裁判所の判決まで取り消したり、(第一審裁判当事のこられの者の請求を)認容したりすることができるのか、という問題である。
 判例は合一確定のために必要な限度でこれを認められるとしているが、この判断には次のような考慮が働いているものと考えられる。かかる判決をしたところで、独立当事者参加訴訟において、三者は、控訴審において争っており、そのため形式的には争いが存在しない2者関係に影響を及ぼす判断をしたところで、それによって不利益を被る者の手続保障がないがしろにされたことにはならず、むしろ合一確定の目的という独立当事者参加訴訟の本来の目的にそったものとなるので肯認すべきである。
Conclusion(結論):以上の理由を踏まえて判決に賛成

百選判例 118 破棄判決の拘束力
Issue(事件の概要):Xによれば、XはAを代理人として本件土地を買い受けたが、Aは自己名義で契約を結び、登記名義を取得した。Xは、本件土地の所有権確認、Y1からXへの登記移転、Y1Y2Y3移転登記抹消を求めて訴えを提起した。
 Y1らはAが自己のために本件土地を買いうけ、AY1->Y2 ->Y3 と移転したと主張した。
  第二次控訴審。X勝訴。(AはXの代理人。)
  第二次上告審。破棄差戻し。Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者にあたるか否かを審理しなかったのは、審理不尽、理由不備。
  第三次控訴審においてX敗訴。所有権を取得したのはAであり(民法100条)Xに移転する義務を果たさずY1(Aから相続)がY2に移転登記したのは二重譲渡と同じであり、Xは登記なくしてY2,Y3に対抗しえない(177条)。
  X上告。差戻し後の原審は第二次上告審で破棄の理由となった「Y2,Y3が民法94条2項の善意の第三者か否か」を審理すべきところ、まったく別の民法100条を持ち出し、177条の対抗要件の問題として審理判決したのは、破棄判決の拘束力に違反する、と主張した。
 最高裁は上告棄却。上告審判決の判断が差戻しを受けた原裁判所を拘束するのは、破棄の理由となった範囲でのみである。すなわち、同一の確定事実を前提とするかぎり、Y2およびY3が善意であることが認められれば、民法94条2項の類推適用を否定することは許されない、という限度でのみである。
Rule(法):差戻し(移送)を受けた裁判所は、新たな口頭弁論にもとづいて裁判しなければならない。上告審が破棄の理由とした事実上および法律上の判断は、差戻しまたは移送を受けた裁判所を拘束する(325条3項)。判決理由中の判断について生ずる特殊な拘束力である。
 ところで同一の確定事実を前提としながらも、別個の法律的見解が成り立ちうる場合、この新たな法律上の見解に立脚してXの請求を棄却することは許されるかという問題である。
Analysis(分析):破棄判決の拘束力の範囲をどのように考えるかであるが、上告審を判決の統一をその主眼とするものと考えれば、最高裁の判決のような見解も成り立ちうるであろう(上告制度は、法令解釈の統一が重視される)。しかし、三審制の意義をより当事者のためのものとして(当事者は、誤判を防ぎ、より深化した判断の機会を担保されるべきである)と捉えるなら、いったん争点として事実審で確定したものを、破棄差戻し判決によっていたずらに変更すべきではないのではないだろうか。三審制は裁判所のためだけにあるのではあるまい。
Conclusion(結論):最高裁の判決に異議あり。


判例百選 111 共同訴訟参加と当事者適格 
Issue(事件の概要):株主XらはY会社を相手に取締役および監査役選任に関する決議をした株主総会の招集手続に瑕疵があったとして、その取消しを求めて提訴した。Y会社は請求棄却の申立をしたが、しかし、Xらの主張事実をすべて認めて争わない。当該総会で取締役(の1人)に選任されたZはY会社側に参加する旨の申立をした。Zはすでに取締役を辞任している。Zははじめ株主の側に参加すると主張したが、撤回し、共同訴訟参加(現行52条)による参加を主張した。第一審裁判所は参加の申立を却下した。判決はXの請求認容であった。
 Zのみ控訴。控訴理由は決議取消判決には対世効があるから、決議の対象となった当時の取締役や監査役も被告にしなければ、会社が馴れ合い訴訟するとき、これらの者の権利が不当に害される。会社と当該役員らを共同被告とすべき必要的共同訴訟であり、Zのした共同訴訟参加は認められるべきである。控訴棄却。
Rule(法):訴訟の目的が当事者の一方と第三者について合一に確定すべき場合には、第三者は、共同訴訟人として訴訟に参加できるとするのが、52条の共同訴訟参加の趣旨である。訴訟追行権は、当事者と参加人それぞれに独立に行使しうることが前提である。類似必要的共同訴訟である。参加人たる第三者は、判決の拡張を受け、かつ独立の当事者適格を有する者である。補助参加ではあるが、請求の主体となる者であるので、当事者の地位を持っている。
Analysis(分析):第三者が共同訴訟参加できるための要件は①合一確定の必要性があること、②当事者適格があること、の二つであり、本件では当事者適格が問題となる。Zは独立に被告たりうる資格があるか、という問題である。
 株主総会の決議取消に訴えは、法人が被告となることについては、多くの支持がある。法人の意思の決定を争う以上、その主体たる法人が被告たるべきだからである。第三者を当事者としてしまうと、判決の効力が法人に及ばないので、結局、第三者は当事者にも参加もできないということになる。取締役に選任されたものが、その利益を争えないのは矛盾するようであるが、選任によって取締役がうる利益は、あくまで選任の結果である以上、選任の有効・無効の争いにまで当事者となることはできないと解すべきであろう。
Conclusion(結論):判例に賛成
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by civillawschool | 2006-01-13 12:06
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