大学院民訴レジュメ

第17講 第18講(9日目)

9日め
第17 講 処分権主義による訴訟の終了など
講義の主題・ポイント:処分権主義に基づく具体的な制度の運営について理解する。
キーワード:訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解

17-1-1 私的自治原則の訴訟手続における表現として訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解などの処分権主義による訴訟の終了があげられる。処分権主義は、訴訟物に関して現れる(246条:判決事項)に限られない。当事者の処分行為によって当事者の対立そのものが解消してしまう(実質的に紛争がなくなる)ので、訴訟は終了するし、裁判所はこれに対抗することができない。
17-1-2 訴えの取下げとその合意
  訴えの取下げとは裁判所に対する審判要求の撤回のことである。請求の放棄とは、遡及的効果において相違する。取下げでは、訴えは最初からなかったものとして扱われるのである。訴えは原告の審判要求という訴訟行為によって始まるが、それに相手方に応じると、取下げは相手方にとって債務不存在の確認という機会(答弁書による請求棄却の答弁だけでは、これを認めず、準備書面の提出、弁論準備手続における申術、口頭弁論における弁論がないとこの不利益を認めない)を奪うことになるので、相手方の同意が必要となる(261)。
  取下げ契約(訴え取り下げの合意)に関する論議:訴訟行為として裁判所に申術せず、当事者間で合意が成立したとき、これをどう扱うかについて見解の対立がある。
訴えを取り下げると、訴訟係属は遡及的に消滅するが、終局判決後に訴えを取り下げると再訴は禁止される。ただし、控訴審中に取り下げた場合は、終局判決は存在しないから、再訴は禁止されない。
  再訴が同一の訴えかどうかについて、訴訟物が同一であれば、禁止に触れるが、前訴の訴訟物を前提として訴えが起こされたとき、たとえば取り下げられた前訴が元本債権を訴訟物とし、後訴が利息債権を訴訟物とするときは、通説は再訴の禁止が働くとするが、下級審判例には、働かないとするものもある。(伊藤p416注20)
17 -2-1 請求の放棄・認諾
請求の放棄とは、請求を放棄することで敗訴判決と同一の効力(267)を受け入れる内容の訴訟行為であり、裁判所に対して口頭弁論期日、準備手続期日、和解期日において陳述することによってなされる。
   請求の認諾とは、被告が請求を受け入れ、原告勝訴判決と同一の効力(267)を受忍する訴訟行為である。
  一部の請求について放棄や認諾は成り立ちうるが、ひとつの請求の一部のみを認諾ないし放棄できるかという点についてはこれを否定的に解する説が有力である。(通説はこれを認めている)
17-3-1 訴訟上の和解
  訴訟上の和解に互譲性が必要とすることについては少数説が疑問を呈している。互譲性は、請求の放棄でも認諾でもないのだから、当然その中間ということで互譲性が認められると考えられてきたようであるが、わが国に訴訟上の和解を導入するにあたって、これがconciliation(調停)であったこと、和解契約(transaction)とは明らかにニュアンスが異なることから立法史上は、互譲性は要件となっていなかった(法文上は民法のように互譲性は表現されていない)と解される。
 訴訟上の和解は、訴訟物に関して両当事者の合意のみでは足りず(私法上の和解契約と異なり)調書に記載されることで成立する。注意すべきは、請求内容から離れて、謝罪や金銭の第三者への拠出(財団などに)も和解の内容たり得る点である。紛争の解決方法として、民事上の請求概念では包摂できない内容もまた、和解の対象となる。また、当事者でない第三者もまた加入しうる(判例学説)。第三者との関係で単なる私法上の契約ではなく、起訴前の和解としての性質を認めるというのが有力学説(反対伊藤)。調書に記載されることで第三者にも和解の当事者に加わることを認める(伊藤)。
 訴訟上の和解は確定判決と同一の効力があるが既判力があると解するかについては争いがある。けだし、訴訟上の和解とはいえ、調書上、権利関係が必ずしも明確になされているとは、限らないから。
 和解調書についての無効の主張は、訴訟終了の合意が失われているから、期日指定の申立をなし、裁判所は口頭弁論を開いて無効原因について審理を行い、原因を認めれば審理が続行され、認められなければ訴訟終了宣言判決を行う。

第18講 終局判決による終了:既判力の意義とさまざまな限界
講義の主題・ポイント:既判力の範囲を問うことで、請求と判決の関係を理解する。訴訟の終了 判決の効力 
キーワード:既判力の限界、争点効、訴訟担当、反射効
判例百選 

18-1-1 裁判所の訴訟行為として判決はあるが、これによって直ちに訴訟は終了するわけではない。上訴の可能性がなくなったときに、終局判決となる。
18-1-2 終局判決と中間判決
     終局判決:事件の全部または一部をその審級につき完結させる判決である。その確定が事件全体の終了をもたらさない場合でも終局判決である。上級審(控訴審)の破棄差戻判決や破棄移送判決も終局判決であり、独立の上訴が許される。
     中間判決:訴訟資料の一部についてのみ裁判する判決である。当事者間で争いとなった事項や訴訟上の先決事項について、審級を終了させず、あらかじめ裁判所の判断を与えて訴訟関係を明瞭にし、終局判決を容易にするためのものである。
   中間判決の対象は次の三つ
     ⅰ独立の攻撃防御方法:その存在・不存在によって、独立の法律効果の発生、変更、消滅がもたらされるもの。所有権をめぐる争いで、買主であることを主張している者がしている売買と時効取得の主張では、それぞれが中間判決の対象となる。
     ⅱ中間の争い:たとえば、訴訟上の和解の効力などがこれにあたる。
     ⅲ原因判決:請求の原因と数額で争っているときなど。
   中間判決に対する不服は終局判決をまって、これに対する控訴、上告とともに主張する。
18-1-3 全部判決と一部判決
      全部判決:終局判決のうちで同一訴訟手続によって審判される事件の全部を同時に完結させる判決のこと
      一部判決:全部判決でないもの、一部を切り離して判決する。複数の請求がなされていたり、反訴がなされているとき可能となる。通常共同訴訟のときの一部の当事者にも判決することがある。請求が密接な関係にあるときは、これができない。たとえば保障債務者と主債務者に対する請求の場合、通常これができない。もっとも債務の免除などがなされていると一部判決も可能となる場合がある。
18-2-1 判決の効力
      自己拘束力(自縛性)、既判力、執行力、形成力、争点効など。
18-2-1 自己拘束力    
      判決を言渡した裁判所までも拘束する(変更することはできない)。書き損じ、計算違いといった表現上の過誤を訂正する判決の更正は可能(257)
18-3-1 既判力
    定義:訴訟物に関する確定判決中の「当事者がもはや争うことを許さないとする
判断」の通用力または拘束力のことをいう。民訴114条は主文に包含するものに限って既判力を認めている。(例外、相殺の抗弁における判断:114Ⅱ)
18-3-2 既判力概念に関する議論:他の裁判所をも拘束する根拠に関わる議論
  実体法説:判決によって実体法状態が変わるから、他の裁判所もこれに従うのが当然。
      訴訟法説:国家裁判所間の判断の統一の要請からくる。
      新訴訟法説:一事不再理の理念から導出
18-3-3 既判力の作用 後訴に対して消極的作用と積極的作用をする。
      消極的作用:既判力の生じた判断に反する主張・証拠申出を当事者がすることはできないし、後訴裁判所もこれを排斥する。
      積極的作用:後訴裁判所は既判力の生じている判断にそって判決しなければならない。
18-4-1 既判力の客観的範囲
  
  訴訟物が等しいものは既判力に抵触する
    前訴XがYを、所有権確認で訴え勝訴、後訴で同じ訴え
  訴訟物と先決関係にあるものは既判力に抵触する。
    前訴でXがYを所有権に基づく登記請求、敗訴。後訴でXが所有権確認は既判力に抵触する。
  訴訟物と矛盾するものは既判力に抵触する。
    前訴でXがYに対して所有権確認で勝訴。後訴でYの所有権確認の訴えは矛盾関            
     係ゆえに抵触する。
18-4-2 既判力の限界
  時的限界
  主観的限界
債権者代位訴訟(民法423条)における手続保障と判決効拡張
     債権者代位訴訟では、債権者が第三債務者に対して訴訟を提起する(一種の訴訟担当)から、債務者の権利が害されることがないように訴訟告知すべきである、それによって債務者の手続に関与する機会を保障するという考えである。商法268条3項の類推適用がこの義務の根拠として提唱され、また第三債務者の応訴拒絶権を認め(75条4項)があるとしている。それでも告知しない場合は、裁判所は職権で訴えを不適法として却下する。訴訟告知がなされれば敗訴判決の効力は債務者に拡張される(竹下・上田説、他に類似のものとして池田辰夫、新堂、高橋など、立法論としてのみ支持しているのは伊藤)と解されている。
  客観的限界

18-4-3 取消、解除、建物買取請求権などの形成権行使と遮断効
  取消: ケースバイケース:遮断効を認めないものについて判例は意思表示してはじめて法律関係は変動するからと説明。しかし詐欺などの取消は遮断効を認める。  
  相殺:判決確定後の行使を認めない(通説・判例:相殺は契約上の瑕疵の場合<取消・解除>と違い当事者の自由に行使できるものであり、担保的機能を重視)
  建物買取請求権:遮断効を認めない(判例)

ミニテスト② 試験30分 解説30分
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by civillawschool | 2006-01-12 13:24
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